Round3【PM1:20】

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【Ａ２テナント内：PM1:20】

　頭に走る鋭い痛みと共に、ぼんやりとした視界のまま、翼が目を覚ます。
「う、うぅ……酷いです……」
　油断していたとはいえ、直撃を受けた事で頭痛がまだ残るが、それでも翼は自分のケースを見つけ――その中身が無い事に気がつく。
「……でも、まだチャンスはあります」
　ケースと共に、おそらく中身を確認した上で投げ捨てられていたであろう携帯を拾い、操作に問題が無い事を確認する。
　その上で、現在の状況である三人が合流した事を確認し、同時に自分に起こった事と現状をメールで伝えていた。
　――この中でも一番重要な情報は、おそらく由貴奈が金を保持しているであろう事であった。
「これは……うん、まだ使えますね」
　転がったケースを調べ、まだ投擲程度であれば十分使用出来る事を確認する。
　これほど軽いもので殴られたとしても、義一や透ならともかく、女性である由貴奈の力で気絶させる事は難しいだろう。
　――なら、可能性として高いのは、元々ケースに中身が入っており、その重さを利用した事以外には無い。
　それが、由貴奈が金を持っているであろうと考えた理由であった。
「今度はこっちの番です。絶対仕返ししてみせますから……！」
　連絡と三人との相談を終えた後、翼はケースを手に取り、まだ一階に辿りついていないマフィア達の様子を探るべく、扉を静かに開き外の様子を伺っていく。

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【移動判定】
　夕鈴 翼：Ａ２→Ａ３

【情報更新－PM1:28】
　檜山 立樹ニヨリ、夕鈴 翼ガ各種情報及ビホール内ノ現在状況（本ラウンド内準備ヲ含メタ）ノ情報ヲ受信

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【Ｃ１：２Ｆ中央ホール内１：PM1:20】

　陽太と海美が居なくなったホール内に、それぞれのテナントから出てきたマフィア達が集まる。
　その中で、各自の情報交換が行われ、ここで初めて完全に裏切り者の判明が確認出来ていた。

「うっし、これで終わりだ」
　男子トイレ内の水洗トイレに、適当に叩きつけて壊した小型拳銃の部品と弾丸を投げ捨て、ジニーは流す為のレバーを下げる。
　海から受け取った小型拳銃と弾丸、それと合わせて透が持ってきた四発の弾丸全ては、これで再利用が不可能になっていた。
「詰まりそうですね」
「別に誰が使うわけでもねぇし、問題ないだろ」
　ボコボコと音がするトイレに対し、共に来ていた透がそれを口にするが、ジニーはそ知らぬ顔でトイレに背を向ける。
「で、てめぇらの方は誰が金持ってんだ？」
　ポツリと、ジニーがそれを口にする。
　先ほど、確かに数名は互いにケースを見せあったが、透と義一、そして由貴奈はあえて中を見せようとはしなかった。
「……けっ、食えねぇ野郎だな」　　　　　　　　　　「さぁ、それを貴方に教える必要はありますか？」

　信用こそすれど、信頼はしない。
　おそらく、透も自分と同じように金を持つマフィアを逃がす側だろうと予想は立てているが、その気配を透は微塵も感じさせずに、作り笑いを浮かべているのだから。
「まぁいいさ。誰が持ってようが構わねぇが、守るんならきっちりやれよ」
「えぇ、分かっています。では、私達も行きましょうか」
　やるべき事は全て終わらせた。
　後は逃げ切る為の手を打つ為に、二人はホールで待つ皆に合流する為にトイレを後にする。

【Ｃ１：２Ｆ中央ホール内２：PM1:25】

　ジニーと透が戻ってきた後、マフィア達の中で一つの方針がまとまりつつあった。
「じゃあ、僕達は由貴奈さん達の護衛って事で。それでいい？」
　ねむるが口にしたのは、先ほどからここで行われていた相談での結論である。
　まっすぐ出口に向かうか、それとも一階のどちらかのテナントの窓を破り外へと逃げ出すか。
　どちらの逃走経路を選ぶかによって、打つ手は当然変わって来る。
「そうだねぇ。まとまって向かうよりかは、分かれたほうが得策だと思うよぉ」
「俺も同感だ。どっちかがヘマしても片方が逃げ切れりゃ、最低限それでも問題ねぇしな」
　窓側の提案を出したのは由貴奈であり、義一と透もそれに賛成している。
　そのバックアップとしてねむると修が動く事は了承を得ていた。
「これを。先に立つのであれば、盾くらいにはなります」
「助かります。急いでいたので、余り準備が出来ませんでしたから」
　修がここまで運んできた長机を透へと手渡し、これで前衛となる五名の方針は決まっていた。

「じゃあ、いおりは梢ねーちゃん達といっしょに行くぜ！」
　元気よく手を挙げ、庵はここまで共に来た海と梢へと共に行く事を選ぶ。
「そうですねー。でも、危なくなったらちゃんと逃げるんですよ？」
「だいじょぶだいじょぶ！ いおりが守ってやるってば！」
　怪我をした事も忘れているかのように、庵は梢に対してやる気を全面に出す。
　そんな庵の姿に、梢も笑みを浮かべていた。
「で、俺達はこいつ等を守ればいいんだな？」
　その二人に対し指を差し、ジニーは刀と海に問う。
「そうです。俺と劉さんが囮になれば、少しは時間も稼げるはずですから」
　海も刀の言葉に頷き、自身も囮として動く事を伝える。
　前衛側とは別に、まっすぐロビーからの出入り口を目指す刀達も、それらの方針は決めていた。
「でも……骨削くんはどうするの？」
　海の視線が、残った一人、ここまで一切相談に参加せずにへらへらとした笑みを浮かべていた瓢に向けられる。
「あっしかい？ そうさねぇ……じゃあおたくら側の囮にでも志願してみようか」
　ジニーと透がトイレに入った時点で、入れ替わりで出てきた瓢が何をしていたのか、ここにいる全員が知らない。
　水が入った洗剤のボトルは既にケース内に隠しており、当然それを口にしていないのだから。
「余計な事はすんな。分かってるな？」
　伊達眼鏡の下から、ジニーは瓢に対し警戒に近い色を写しながら瞳を向ける。
「はっは、分かってるさ。ちゃんと逃げ切れるように手伝うよぃ」
　その視線を流しつつ、瓢はただ嗤う。
　――何をするつもりかは分からない。
　暴走される可能性も含めて、刀とジニーは同時に瓢への警戒も行う意志を固めていた。

　全員の方針が確定した後、マフィア達はそれぞれが決意を持って一階へと向かうべく階段へと足を進めていく。

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【移動判定】
　日向 透・追分 義一・壬生 由貴奈：Ｃ１→Ｃ２
　日暮 ねむる・八神 修：Ａ３→Ｃ１
　ジニー・劉・御剣 刀・小山内 海・野坂 庵・屋敷野 梢：Ｂ３→Ｃ１

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【Ｃ２一階～二階階段：PM1:28】

　透が先頭に立ち、その後ろに由貴奈、義一と続く形で三人が踊り場に到着する。
　階段に散乱したボトルやトイレットペーパーは、出来る限り避けるかどかすかしながら後に続くマフィア達の道を作りながら。
「急いでたら危なかったねぇ。二人共気をつけてよぉ」
　先を歩く義一と透に対し、由貴奈が静かに声を掛ける。
　ケースと一緒に、狭い階段内を透は長机を盾にしながら両手で持ち、前面へと構えながら歩いている為、視界自体は悪い。
　だが、代わりに正面からの奇襲は出来る限り防げる可能性は十分高くなっていた。
「分かっています。後ろもちゃんとついて来てください」
　由貴奈の後ろ、踊り場へと到着していた修とねむるの姿を確認した後、透はそれを口にする。
　ここまでは裏切り者である立樹達は姿を現してはいない。
　注意を払いつつ、先を歩く三人はそのまま一階へと足を着く――はずであった。
「前、何か飛んでくるぜ！」
　長机の横から見える視線の先から飛んできた瓦礫の一部に気づき、義一が声をあげる。
　――戦闘開始となる引き金は、勢いよく長机に当たり、足場の悪い階段で透は体勢を一時崩す事となっていた。

Round3 End

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▼次ラウンド開始地点▼【Ａ３】夕鈴 翼（ヒットマン）
【Ｃ１】八神 修　日暮 ねむる　骨削 瓢　御剣 刀　ジニー・劉　小山内 海　屋敷野 梢　野坂 庵
【Ｃ２】檜山 立樹（ヒットマン）　小島 海美（ヒットマン）呉井 陽太（ヒットマン）
　　　　日向 透　壬生 由貴奈　追分 義一

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Next Round【PM1:30】