シーサイドオープン・ザ・クラブ｜リアクション

シーサイドオープン・ザ・クラブ

●●●集合！　寝子島高校の集団！●●●

　かげろうが揺らめく砂浜にここぞとばかりに声を張り上げるセミ。
　時折通る車の音に建築中の海の家に在る風鈴が返歌をする。

「すみません、お手を煩わせてしまい…」

　強い日差しを受け、じとりかいた額の汗をハンカチで拭う直也。
　ボランティアの集団は解散したが、代わりに出来た寝子島高校の集団は海に到着した。

「海にさえ近づかなけりゃ襲ってこないんだよね？　なら策を練る時間は十分ありそうだね」

　海の異変を伝え、解決の為に快諾をしてくれた一人、日暮ねむるは黒い寝ぐせを揺らしつつ荷物を置く。
　彼自身にも考えがある様子で、移動中に八神修に何かを頼んでいた。

『かにたいじ？』

　スケッチブックに文字を走らせ、質問してきたのは童顔な筆談委員長こと小山内海である。
　見えているのかいないのか、隣に居た黒髪の少年、御剣刀が海の頭に手を置きながら答える。

「みたいだな。このまま放っておくわけにもいかないし、何とかしないと」

　権三郎は戸惑ってはいるようだが、直也が上手く情報を引き出した様子だ。
　集まった者達が荷物を預け、着替えが済んだ所で茶色いアホ毛を遊ばせつつ後木真央が戻ってきた。

「要するに小さい蟹なのだワタリガニ系なのだ、ケジャンとみそ汁の具を試すのだ～」

　カニ鍋を画策する真央は猫鳴館で鍋や深めの網杓子、調味料に味噌や醤油などを調達してきた。
　その姿を見て料亭旅館の若女将、常葉治も優しく微笑み、解決後の楽しみに彩りを加える。

「私もお鍋にして美味しくいただきたいなと思います。ですので、旅館に連絡しておきました」

　真央は驚きと感嘆の声を上げ、治の手を取り喜びを表現する。
　一方、紅双葉は使おうとしていたろっこんがカニ相手には使用が出来ない事に気が付き、項垂れている。

「「人体」の解析、と言う落とし穴にはまってしまいました…」

　しかし、眼鏡のブリッジをクイッと中指で押す。今回はサポートを中心にする事を決めた様だ。
　何事かを頼まれた修も亜魚隈猯利と一緒に追加の道具を携えてタイミングよく戻ってくる。

「蟹津波を災害ではなく海の恵みにしてしまえば良いのさ。その為に漁業協同組合から色々と借りてきた」

　釣りが趣味らしく猯利が同行し、スコップやブルーシート、軍手や網などを持って来ていた。
　しかし、おそらく使わないであろうヘッドライトや電気ウキまでが入っているのは趣味が高じたのだろうか。

「なんだかわからねぇが…すまねぇな、巻き込んじまって。だがまぁ、よろしく頼む」

　頭を下げる権三郎に彼らは各々の笑顔で応えていた。

●●●集結！　カニに立ち向かう者！●●●

　建築中の海の家に寄らず、まっすぐと海岸に向かった者達も居た。
　がっしりとした男らしい体格にこんな時でもメイクを欠かさない尾鎌蛇那伊の姿もある。

「あらあら、本当に変な波が起こってるのね。アタシも一肌脱ぎましょ」

　不自然に残る水の跡や数匹残ったカニを見ながら蛇那伊は本当に服を脱ぎ捨て、気合を溜め始める。
　砂を蹴る音と共に風雲児轟と同じ背丈、声をしているザ・ストレイトもそこに居た。

「色違いがいるらしいって話は聞かせて貰った！　どう考えてもその色違いが何かあるな！」

　休憩をしていた琴代は二人の登場に言葉にならない声を上げ、（色々な意味で）驚いていた。
　砂浜に残った数匹のカニ達が道を開けるように移動する。今はまだ穏やかに波が流れていた。

「さあ、行くぞカニ共！」

　ザ・ストレイトの掛け声と共に砂埃を上げ、波に挑む蛇那伊。
　蒼い海水が盛り上がり、ハサミを両者に向けて突進を開始する。

「来たわね。さぁ、かかってらっしゃい！」

　直也から聞いていた通りのカニの動きに不敵な笑みを零す蛇那伊。
　全体を見据え、カニの攻撃を物ともせずに応戦する姿は戦いに対してパワフルな印象を与える。

「速拳乱舞！　ガトリング・スマッシャー！」

　ザ・ストレイトも負けじとカニに攻撃される前に両腕を素早く動かし、カニを殴り抜く。
　それでも迎撃はされ、致命的ではないものの手足にダメージが蓄積する。

「海パンにご当地ヒーロー！　そのまま海水に浸かってたらまた来るよ！」

　琴代に声を掛けられ、二人は後退する。
　確かに攻撃が収まったと思った時には次の波が後ろに控えていた。

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