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「なんてウソだよ~。信じた?」
ののこは英二の正面に、ストンと腰を下ろしたのである。満面の笑みとともに。
「心臓止まるかと思った」
英二も、空気の抜けたバルーンアートみたいにヘタヘタと座った。
「私、パパ活なんてしないよぅ! ちゃんと自分で稼いだんだから。これ見て!」
スマホを取り出して、ののこは表示された画面を英二に示す。
オークションサイトだ。英二も何度か利用してきたし、最近でもちょくちょく閲覧している。といっても落札者としてばかりで、出品したことはないのだが。
「ほら前、英二くんが部屋の片付け手伝ってくれたことあったじゃん?」
「うん」
鮮明に
記憶
が蘇る。あれは掃除というよりは、ほとんど解体工事だった。ののこの部屋を埋め尽くし、床すら見えなくしていた瓦礫もといガラクタの数々を、どんどん片付ける作業は半日もつづいたのだ。デブリのほとんどは、ののこが拾ってきたものや、リサイクルショップで安く買い集めたものだった。「なんか捨てられなくて」とののこは苦笑いしていたが、その「なんか」で窒息死しかねない勢いだったのである。
「あんとき、まだ使えるものは売る、っていうことにしたんだけどね。リサイクルショップに持ってくのなんか延ばし延ばしになってて……もう面倒だからネットオークションのほうがいいかなと思ったんだよね。で、先週まとめて売りに出してみた」
「売れたの?」
「ほとんど全部片付いたよ。まあ、大半は二束三文だったんだけどさー」
でもこれ見てよ、とののこは自分の売上画面を示した。
少なく見積もっても三十年以上昔のノートパソコンがあった。いまとなっては骨董品同然のシロモノだが、ギョッとするほどの値が付いていた。これだけあれば、タブレットPCの安いものならじゅうぶん買える。
鉄道模型があった。リサイクルショップの片隅で埃をかぶっていたものだ。箱なんか当然ついておらず、塗装も剥げ落ちてボロボロだったのだが、きれいにして出品したところ、これまた仰天価格で落札されていた。
極めつけは古びた携帯ゲーム機だった。いちおう箱入りだが色あせており、プラスチックの筐体には、誰かが貼ったシールの跡まで残っている。英二も片付けのとき見覚えがあった。たしか、部屋の隅の段ボール箱に雑多なケーブル類と一緒に突っ込まれていたものだ。
「こんなの売れるんだ……」
「ねー」
ののこは得意げに笑った。
「でもねこれ、ただのゲーム機じゃなかったみたい」
そう言って表示された説明欄には、
『開発機材版/非売品ソフト入り』
の文字があった。
「え?」
「なんかマニア界隈では有名なやつらしくてさあ。入札が最後めっちゃ伸びた」
落札価格を見て目を見張る。一財産である。
「なんでそんなものが野々さんの部屋に!?」
「おぼえてなーい。粗大ゴミだったかなー」
捨てる神あれば拾う神ありという話か。いや、転売する神? 転売というと聞こえが悪いか。必要としている人に届ける神と言うべきか。
その他些細なものであろうと、わずかずつとはいえ利益になっている。いずれの落札履歴にも、
『探してた品です!』
『子どものころほしかったグッズなんです!』
『本当にありがとうございます!』
と感謝のメッセージが添えられていた。
「私、掘り出し者発見の才能あるのかなー」
「本当に、そうかも」
英二はうなってしまう。自分ならきっと、ろくに検討もせず捨てるかリサイクルショップにまとめて持っていったことだろう。
「だからいま、野々さんは小金持ちっていうわけだね」
「いんや。今日のカフェ代くらいしか残ってない」
「それはまたどうして」
またあの、ののこにしかわからない何かの購入費用にでもあてたのかと思いきや、彼女はあっけらかんと言ったのである。
「寄付したから」
「寄付って?」
「紛争地域や人道危機がある国の支援団体に。国連とかー、ウニセフとかー、赤(あか)十字とかー……」
ののこは、つらつらと名前を並べていく。すべて国際的な組織だ。国内では、性犯罪被害者の支援団体や交通遺児のための財団などに寄付したという。
「だって元は、ニートで暇してる私が拾ったものとか、タダ同然で買ったものばかりだからね。嬉しさを世の中に返しただけだよ。で、カフェ代を残したのは、協力してくれた英二くんへのお礼!」
「僕は掃除を手伝っただけだよ」
「ちがうよ、英二くんが片付けを手伝ってくれなかったら寄付はできなかったもん」
ありがとう、と言ってののこは頭を下げた。
「英二くんのおかげで、世界はちょっとだけ、よくなったと思うんだ」
「野々さん……」
英二は、とっさに言葉が出てこなかった。すごいとか、立派だとか、そういう言葉はいくらでも浮かぶのに、どれもこの場には軽すぎる気がしたから。
──僕、野々さんのこと、またひとつ好きになってしまった気がする。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
学校生活
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年05月06日
参加申し込みの期限
2026年05月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年05月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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