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「お昼、なんか食べに行こうよ」
と野々ののこから電話がかかってきたので、
佐藤 英二
は面食らった。たいていは自分がののこを誘う側だったから。
木天蓼大学、カフェテリアのテーブルである。
この日、午後は休講となった(なんでも担当教官がエジプトに行くことになったからだという……エジプト?)ので、英二は軽く図書館に寄って混雑を避けた。昼休みも終了時間近というころあいを狙って入ると、広いカフェテリアはほどよく空いていた。ほんの三十分前なら証券取引所のような騒ぎのこの場所が、いまは潮が引いたあとの浜辺のようだ。ざっと八割が空席で、音にしたって運ばれていくトレーの音や遠くのテーブルの笑い声がぽつぽつ聞こえる程度。並ぶことなく日替わりB定食の白身魚フライを受け取り、サクサクの衣を一口したところで携帯が鳴ったのである。
なんか食べに行こう──魅惑の誘いだ。
もちろん! とふたつ返事したいところだったが、さすがにタイミングが悪い。
でも、せっかくの機会だし……。
一日二昼食も覚悟した英二だ。なあに、夕食を軽くすればいいだけのこと。しかしこの瞬断(アズ・ノウン・アズ『ためらい』)が伝わったのか、回答を待つまでもなくののこは言った。
「あっ、ごめーん。もうこんな時間だったか。英二くん、もうとっくにランチ済ませちゃったよね?」
いやそんなことないよこれからだよ、という方便は、英二にはちょっと難易度が高い。
「実はいま、ちょうど食べてるところなんだ。大学の学食で」
午後の休講で遅めの食事になったことをコンパクトに説明して「だから、お茶を付き合うとかだったら問題ないよ」と付け足す。
「お茶? いいねえ~。じゃあ、いまからそっち行くから」
そっち……あ、呼びつけることになっちゃったかな?
慌てて『いやシーサイドタウンとかでも』とNYAINを送ってみたのだが『いいっていいって。マタ大、楽しいし♪』とののこは意に介さなかった。
図書館で借りた小説が第二章に入るより前に、野々ののこは姿を見せた。
「おはよー」
くすんだピンクのオーバーサイズTシャツに短パン、足元はスニーカー、すっかり真夏の装いだ。
「おは……って、あ、もう昼かな」
ししし、とののこは歯を見せる。「私の時間軸がズレてるだけだね。さっきの電話、起き抜けだったからさあ」
じゃあ、と立ち上がって英二は言った。
「どこに行こうか?」
ちゃんと下調べをしておいた。ののこを待つあいだ、文明の利器スマートフォンで大学周辺の飲食店を片っ端から検索したのだ。クチコミ評価の高いケーキ屋、隠れ家風のカフェ、インスタ映えするとかいうパンケーキの店、レトロな装いの喫茶店……さすが学生街、選択肢には困らない。和菓子派でも洋菓子派でも、あるいは「やっぱりご飯が食べたい」と言いだしても、即座に対応できる態勢は整っていた。我ながら、準備がいい。
「どこ? ここでいいよ」
「ここ?」
「コッココケコッコ」ニワトリみたいな声でののこは足元を指さす。「Here、ここ。カフェテリア」
「学食でいいの?」
ああそうか、英二は察した。
僕が「今日はおごるよ」と言うのを予期して、野々さん、安いカフェテリアを指定してくれたのかな。
そんな遠慮しなくたっていいのに。
されどあにはからんや、ののこの回答はまったくちがっていた。
「でも今日は私がおごるから!」
「え、いや、そんな」
英二は口ごもる。
大学まで来てもらったのに、悪いよ──という気持ちもあるが、それよりも、
野々さん、お金ないのに──という事実はいかんともしがたいのだった。
しかしそれをストレートに告げるのは避けたかった。ののこが傷つくようなことは口にしたくない。
「大丈夫、お金のことなら心配しないで」ののこはVサインする。「臨時収入が入ったから」
「臨時収入?」
父親からボーナス仕送りでもあったのだろうか。いや、ののこは極力父親の世話になりたくない様子だし、アルバイトを「探す」とは聞いたが「はじめた」という話はまだ聞かない。
「その、臨時収入って?」
おそるおそる聞いてみた。
「パパ活!」
うわー!
英二の魂は、天に吸い込まれていった。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
学校生活
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年05月06日
参加申し込みの期限
2026年05月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年05月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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