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Day after day
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時間はかけたものの、ミツバチの足どりはつかめずに終わった。
「……逃がしちまったか」
豪は頭をかいた。まさかいきなり蜂が移動をはじめるとは。隙をつかれた気分だ。ミツバチが動きはじめたらどうやって追跡するかを検討する間もなかった。
「もしかして最初[ハナ]っから別の方向に行っとったんちゃうか」
これは煌牙の意見だ。
碧南はスマホの画面を確認していた。センサーのログだ。
「データ上、移動したのは北の方角っぽいんだけど、それって」
「図書館の方角じゃないかなあ」
洋二の言葉に全員が顔を上げる。
図書館はもう施錠されている。裏手に回っても入れないし、そもそもミツバチが図書館の中に入るはずがない。
全員が黙った。虫の声だけがつづいている。街灯の光が石畳に丸く落ちて、その周りだけがぼんやりと明るかった。
「オルガ部長、どう思います?」
碧南が問いかけたが、オルガはしばらく黙っていた。プラチナブロンドの髪が風にゆれている。さっきまでの勢いのよさは消え、何かを確かめるように夜空を見つめていた。
「……Kanske」
やっと、ぽつりとつぶやいた。
「それ、『きっと見つかる』、って意味でしたよね?」
「ごめんなさい、ホントはちがうノ。『もしかしたら』くらいの意味ヨ」
オルガは碧南に首を振り、もう一度夜空を見上げた。
「ミツバチは……もしかしたら、私たちが追えない場所に行ったのかもしれないネ」
「つまり──」
と言ったきり、豪はその先をつづけなかった。
言うだけ野暮だと思ったからだ。
……異世界、ってことか。
俺、ちょっと見くびってたのかもな。異世界探検なんて冗談半分、ノリで言ってるだけのごっこ遊びだろうと思ってた。でもオルガはもちろん、こいつら全員──けっこう本気だ。
星幽塔のことを思う。あの場所で見たもの、感じたもの。俺だって、この世界の外側に何かあることは知ってる。知ってるのに、どこかで線を引いていた。ひょっとしたら自分は探検部を、『正統派』と『そうじゃないほう』とに分けて、高いところから眺めていたような気がする。
たまには、こっち側に降りてきてもいいんじゃないか。
ミツバチが本当に動いたあの瞬間、あのきらめくような感覚は、まちがいなく本物だった。
「屋上に戻りません?」
提案したのは碧南だった。
全員の視線を受けて、碧南はつづける。
「蜜を集めに行ったミツバチが戻ってくるかもしれませんし、分蜂の第二波が出るかもしれない。それに」
少し間を置いた。
「まだ、朝まで時間はありますから」
誰も反対しなかった。
豪が先頭に立って歩きはじめると、自然と皆がついてきた。
来た道を戻りながら、豪は少し先を歩くオルガの後ろ姿を見る。小さな背中だが、足取りに迷いがない。センサーのデータを見ながら何かつぶやいている。スウェーデン語か、英語か、あるいは日本語か、このくらいの距離ではもう判別がつかない。
碧南に泰子が並んだ。
「私も、いい?」
「もちろんです」碧南は答えた。「えっと、五葉さんでしたっけ」
「うん」
前から彼女には勧誘を受けててね、と泰子は言う。「なんか、私にはピンと来るものがあるんだって」
よくわからないけど、と笑う。
「あと」
「はい」
「一応私社会人経験あるけどあなたと同じ一年生だから、もっとくだけた口調で、オルガみたいに『泰葉』呼びでいいよ」
「ヤスハさん?」
「そう。これ、ハンドルネームみたいなものなんだけどね」
いつかわかるよ、と泰子──泰葉は謎めいた言い方をした。
「碧南さん」洋二が追いついた。「明日は朝からバスケ部の練習じゃないの?」
「そうだよ、夏はインカレとかいろいろあるしね」
「だったら、きみはもう引き上げたほうが……」
「大丈夫」碧南は手を振った。「体力あるから。それに」
少し考えてからつづけた。
「見届けたいじゃない? もし本当にミツバチが異世界の花の蜜を集めているとしたら、どんな花が咲いているのか、実際にどんな味をしているのか。想像したら、結構楽しいから」
想像が楽しいから。
口に出してみて、碧南はそれが自分の本音だとわかった。バスケと違って勝敗もなければ正解もない。ただ、わからないものをわからないまま追いかけている。真相も正解もないかもしれない。それだけのことが、こんなに楽しいとは思わなかった。
だからきっと、やめられないんだと思う。
見上げれば、満月はまだそこにあった。
『Day after day』──了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
最後までお読みいただきありがとうございました! 桂木京介です。
今回もなかなかの難産になりましたが、参加キャラクターの皆様の個性あふれるアクションに大いに元気づけられ、なんとか完成までもっていくことができました。厚く御礼申し上げます!
雨の季節を脱した七月の寝子島そして木天蓼大学は、これからガンガン暑くなってまいります。ほぼ同時期の物語をもう一本公開予定ですので、ここでできなかったアクションやお話があったかたは、そちらに参加しアクション展開をいただければ幸いです。
大学の屋上で養蜂というのは、ぶっとんだ設定のように見えますが、実は国内外の大学や企業のビルでもちらほら行われているそうです。私も最近になって知ったばかりなのですが、調べてみると結構な数の事例があって驚きました。
ご感想やご意見、お待ち申し上げております! どういう書き方や展開が喜んでいただけるのか、『らっかみ!』ゲームマスター十余年を超えてなお、桂木京介は模索中ですので。
それではまた、次回シナリオでお目にかかれる日を楽しみにしています!
桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
学校生活
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年05月06日
参加申し込みの期限
2026年05月13日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年05月13日 11時00分
参加キャラクター一覧
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