●楽しい時間のはじまり

「縁日に屋台。ふっふー。本当に夏！　って感じなのですっ。何だか特別な気分になっちゃうのですよっ」
　浴衣を着て、カランコロンと下駄を慣らして祭りに向かう千代島 白雨。
「戸締り確認完了！　いざ行かん、縁日へ！」
　両親とも仕事で本土に行っていて家にいないので、夜はそのまま天の川を見るつもりでいる。
　夜までは縁日を楽しむ気マンマンの白雨は、足取り軽やかに参道商店街へ。
「わぁ！　なんだか違う場所みたいなのですっ！　いつも見慣れた町も明かりでキラキラですっ」
　賑やかな声。あたりに行きかう浴衣姿の人々。
　見慣れた旧市街の風景も、今日はいつもと違って見える。

「今日お祭りなんだ……。折角、この間、浴衣買ったし、早速着て出かけてみようかな。何かいい髪飾り、あったかな」
　友達に選んでもらったピンクの帯、白地に撫子の浴衣に着替え、髪型をちょっとアップにアレンジし準備をする詠坂 紫蓮だったが、ひとつ心配事が。
（誰か一緒に遊んでくれる人、いるかなぁ……）

　紫蓮が参道商店街に足を運んだ頃には、周囲はお祭りで楽しむ人々で賑わっていた。
「わーい！　いろんなお店が出てるなぁ！　いろいろ食べたり遊んだりしてみたいな！」
　屋台がたくさんあるので、どこから行こうか目移りしている雨寺 凛は、寝子島に来てから初めてのお祭りが楽しみだった。

「夏祭りやー！　食べるでー！　はあ、ええなあ、この季節」
　白地にピンクの音符模様が入っている今時の浴衣に着替え、マリベル・ロイスは「いざ出陣や！」と意気揚々と参道商店街へ。
　着物を何回か着たことあるので、着付けはすべて自分で。
「さっそく屋台チェック！　アーンド食事タイム！　甘いもんは後回しにして、まずは定番のたこ焼きやな！」
　たこ焼き屋台に行こうとしたが、友達やカップル、家族連れを見てちょっと虚しくなってきたようだ。

「これが縁日ってものか！　凄いな！　キラキラしているよ！」
　寝子島に来たばかりのフランス人のヘリオドール・アージュは、初めて見る日本のお祭りに目を輝かせている。
「女性の着物姿は美しいし、男性の着物姿も素敵だね。カタナは差していないけれどサムライみたいで格好良いね！」
　日本人の乳母から話を聞いたことはあるが、実物を見るのはこれが初めてだ。
　初めて見る屋台をキョロキョロ眺めながらはしゃぐヘリオドールだったが、どのようにすれば良いのかわからず、戸惑ってしまう。

「ゆかた祭り、面白そう。いろいろ面白そうな出店がいっぱいね、どこから行こうかしら……」
　どの屋台から行こうと迷う神薙 焔は、どうしようかと困っているヘリオドールに気づいた。
（あそこの金髪の子、日本のお祭りに不慣れっぽいわね。誘ってみようかしら……？）
　誰かと一緒にお祭りを楽しみたいと思っていたので、ヘリオドールに声をかけた。
「そこのあなた、どうしたの？」
「初めて見るものばかりだから、どういうふうにすれば良いのか分からなくて……」
「そうなの。だったら一緒に回らない？　誰かと一緒に行きたいと思っていたから。あたしは寝子高１年の神薙 焔、よろしくね」
「キミも寝子高生なんだ。私は１年７組のヘリオドール・アージュです。こちらこそよろしく。安心したら、お腹が空いたなぁ。うーん、良い匂い！」
　２人が屋台を回ろうとした時、ばったり会った白雨、紫蓮、凜の３人が自分達も一緒に、と話しかけてきた。
「いいわよ。人数が多いほうが楽しいし」
「私もそう思う」
「ありがとう！　私は雨寺 凛、寝子高１年なんだぁ」
「あなたも１年なのね。私は３組の詠坂 紫蓮よ」
「私は神薙ちゃんと同じ４組の千代島 白雨ですっ」
　偶然集まった寝子高１年達の会話を聞いたマリベルは、その中にクラスメートの凛がいたので、一緒に行ってもええ？　と訊ねた。
「雨寺ちゃんも来てたんやね。ご一緒してええ？　ウチは寝子高１年６組のマリベル・ロイス。よろしゅうに」
「人数が多いと楽しいよねぇ。一緒に行こう、マリベルちゃん。皆、いいよねぇ？」
　ゆかた祭りを楽しむ同士が多いのは良いことだ、と、全員一致でマリベルも仲間に加えることに。

　寝子高１年の６人組は、どこに行こうかと相談。
「どこに行くー？」
「そうね……まずはお腹が満ちるまで食べ歩いて……。近くに寝子島漁港もあるし、きっとシーフードが美味しいわよ」
　海鮮といえば、たこ焼き、イカ焼き、海鮮焼きそば、おでんダネにもタコ、すり身。
「うみねことかいう大衆食堂の名物、海鮮かき揚げもあるわよ。まずは、そこに行ってみない？」
「ほな、さっそくそこに行こか。その次はたこ焼きやで？」

「賑やかでいいですね。参道商店街の方へ行ってみましょう」
　紺の浴衣に下駄を履いている御巫 時子は、ろっこんを発動し、鳥に話しかけながら一緒に回る。
「下駄履きは疲れないか、ですか？　大丈夫です、慣れているので歩きやすいです」
　鳥の気遣いに感謝する時子。
「美味しそうなもの、楽しそうなものがいろいろあって迷いますね……」
　のんびり回って、いろいろ見て回りましょうとマイペースに楽しむことに。

「いろいろ食べたいけれど、それは、お財布との相談だな。無駄遣いできないし」
　ＴＰＯは大事にしたいという奈良橋 博美は、浴衣を着て、お祭りをおもいっきり楽しむことに。
　屋台を見て回り、何を食べ、何をして遊ぼうかを頭の中でじっくり考える。
「わたあめとかは定番だな。輪投げや射撃でも遊ぼう。やるからには本気を出す！　本気でやるからには、まずは腹ごしらえだな！」
　腹が減っては戦ができぬ！　ということで、まずは食べ物系屋台で何か買って食べることに。

「わぁ、屋台はいっぱい……！　いろいろあって迷っちゃう……まずは、どれから行こうかな？」
　浴衣姿でのんびり歩いている恵御納 夏朝は、周囲にいる人々で賑わってる屋台を見ながら縁日を楽しむ。
「とりあえず、いろいろ遊んでみるかな……」