神出鬼没のわらびもち屋さん！？｜リアクション

神出鬼没のわらびもち屋さん！？

　おじさんも白沢先生に笑いかける。
「久しぶりですな。何十年ぶりかな？」　
「さあ、忘れてしまったわ。私、あなたのわらびもち本当に好きだったんですよ」
　白沢先生はにこにこと笑っている。何十年ぶりの再開だというのに、おじさんの見た目がほとんど変わっていないことなんて気にしていない。
　御剣刀は呟く。
「先生がそこまで言うわらびもち、食ってみたいなぁ」
　するとおじさんはにっこり笑う。
「もちろん、皆さんに食べていただきますよ」
　真央が飛び上がって喜ぶ。
「やったー！　おじさん、ありがとうなのだ！みんなでいっしょに食べるのだ！」
「はい、五百円」
　と、おじさん。若菜は驚いて、
「えっお金とるの」
　おじさん事も無げに、
「こちとら商売でさ」
　白沢先生は笑顔を崩さず、
「昔は二百円じゃなかった？」
「物価の高騰ってやつでね」
　おじさんはにやりと笑う。過去から来た幽霊の癖に、何が物価の高騰だ？　と誰もが思ったが、口には出さない。白沢先生は嬉しそうに、
「昔からそうだったわね、がめつくて商売上手」
「だが味は天下一品さ」
「昔の人ならこれが必要だろう」
　修は懐から五百円を取り出す。紙幣で。
「おお、それならもちろん売ってやろう」
　みんながざわつく。後木真央が叫ぶ。
「そんな古いお金用意してないのだ！　これしかないのだ！」
　彼女が差し出したのは現在の五百円玉。
「おお、おお、もちろん売ってやろう」
　刀は呆れたように、
「いいのか……」
　修は、
「なん……だと……！」
　とうろたえる。
　やがてみんなのもとにわらびもちが行き渡る。
「これはすごい……気がする！」
　と、柳司。　
「なんだかわからないけど、メチャクチャおいしいッスよ！」
　と、舞衣。　
「ほんとだ！」
　そう叫んだのは弘明寺能美子。
「これなら原宿にお店を出してもやっていけるわよ！」
　能美子の少しピントのずれた発言に、おじさんは腕を組みながら、
「へへっ、俺はこの島が好きなんだ。他所で商売やろうとは思わんよ。こうして幽霊になってでも、来たくなるくらいにな。まあ、あとはこいつに任せるが」
　おじさんは孫の肩を叩く。叩かれた孫は照れくさそうに笑う。
「頑張ります……」
　笑い声が響く。
　そこへ二つの人影が近づいてくる。桐野正也と七音侑だ。二人は並んでこちらへ歩いてきている。談笑しながら。
「あれ？　あの二人……」
　マリベル・ロイスがつぶやく。
　それを冴来が押しとどめる。
「野暮なことはよしましょう」
「それじゃあ、みんなで職員室でお茶でも飲みながらいただきましょうか」
　白沢先生がそう提案する。みんなが笑って同意する。
　わらびもちの涼やかさと甘さでほころびた彼らの笑顔は、過去、現在、そして未来、いつまでも続くような気にすらさせる。

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