神出鬼没のわらびもち屋さん！？｜リアクション

神出鬼没のわらびもち屋さん！？

　霧桐舞衣は愛車に乗り込みハンドルを操っている。
「やれやれ、結局スピードでは追いつけなかったッスね～っと」
　しかし、その表情は満足気だった。
「たくさん買えて良かったッス。これならきっと喜んでくれるッスね」
　と彼女は住み込み先のことを考える。
　窓の外、流れていく景色の向こうに目を移す。青い空が広がっている。

「また会えますか？　って聞いたけど、それは無理だって言われちゃったな」
「そうね、でもあのお孫さんならきっといい屋台引きになれるわよ」
「やけに自信満々で言い切るな」
「彼、ちょっといい男だったからね」
　その言葉に刀は少し視線をそらす。能美子はその様子を興味深そうに観察している。が、観察するだけで特に何も言及しない。刀は居心地が悪そうになる。
「それにしても、美味いわらびもちだった。買えるだけ買ってしまったよ」
　と話題を変える。
「そうねぇ、ずいぶんと」
　能美子の視線の先には、両手で抱えきれるかどうかという量のわらびもち。
「みんなへのおみやげさ、みんなへの」
「配りきれるといいけどね」
　と微笑む。

　八神修は自宅で七匹の猫達にわらびもちを振舞っている。
「すこーしだけな」
　猫達はしきりに鳴きながら、彼の手からそれぞれに食している。
「お前たちにも味がわかるのか？」
　答えはにゃーという鳴き声だけ。

　博美は大切そうに抱えた包みを、自室でそっと開いていた。
「うん、美味しそう」
　包みの中には、当然わらびもち。
　博美はそれを一口ほおばり、
「……うん！」
　と頷く。しっかりと味わう。
「あのおじいさんが幽霊になってまで持ってきてくれたわらびもち、大切に覚えておこう」
　と呟く。
　彼女は先程の屋台との邂逅を思い出す。
　また食べたいと伝えたら、おじさんは、それはうちの孫に言ってくれと答えた。とても嬉しそうに。
　いつかまた、同じ味をあのお孫さんが、と博美は期待する。
　そういえばお母さんとお父さんはあのわらびもちを食べたことがあるんだろうか？　気になった。
　博美は立ち上がる。もし食べたことがないのなら、自慢してやろうといういたずら心を胸に隠して。

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あとがき

担当マスター：豪遊亭平朝
ファンレターはマスターページから！

はじめましての方はじめまして。そうでない方はまた参加いただきありがとうございます。豪遊亭平朝です。
今回のシナリオは夏の風物詩わらびもちをフィーチャーしたものでした。
皆様のおいしいものに対する熱い思いのこもったアクション、楽しく読ませていただき、その熱を多少なりともリアクションに反映できたかと思います。
らっかみ世界では真夏ですが、現実世界ではまだまだ寒い冬でございます。プレイヤーの皆様方におかれましては、今回のシナリオで遠い夏に想いを馳せることができたようでしたら、幸いです。

またいつか、次のシナリオで皆様にお会いできることを期待しております。それでは。

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