Geheime Maske｜リアクション

Geheime Maske

　壁に貼られた絵を見て、後木真央は緑色の猫目を思い切り見開いて「ふおおおお～！」と声を上げた。小さなカードに書かれている『Carnevale』の文字。これはもしかして、あの有名な寝子高の秘密結社？　の事ではないのだろうか。確か噂によると、正式名称は寝子高放課後秘密倶楽部？　とかいう秘密結社？　で、闇？　に包まれた謎組織？　だったはずだ。うん、確かそう。友達の先輩の友達のお姉さんの友達が言ってたから確かな情報だって、友達が言ってた。
　廊下に貼られた絵からカードを剥がし、裏を見る。ついでに絵も一枚剥がして裏を見て、書かれていた言葉に真央は俄然燃え上がった。なんと、謎の秘密倶楽部は二年限定だそうだ。こうなると、一年生の真央が突撃して行っても門前払いされてしまう。ここは二年生を探して話を聞きながら謎の組織に迫って行くのが良いだろう。
　特ダネが舞い降りた予感に、真央はうずうずする気持ちを抑えながら剥がした絵を元通りに貼り直し、常備しているデジカメで全て撮影すると、カードの裏も撮って、新聞部部長である八神修に電話をかけた。
「修ちゃん、カルネヴァーレなのだ！　寝子高放課後秘密倶楽部が動き出したのだ！　探し出して、特ダネにするのだ！　真央ちゃんは突撃取材に行って来るのだ～！」
　真央は早口でそう言うと、電話を切った。電話の向こうで修が「え？　ちょっ……後木！？」と言っていた気がするが、新聞部エース後木真央記者の耳には聞こえていなかった。

　修は切られた電話を片手に暫し真央の言っていた事を脳内で反芻すると、腰を上げた。何故急に真央がCarnevaleの事を取材しようと思ったのか、その理由が知りたくて爪先を向けた北校舎の１階で、修は壁に貼られた極彩色の絵を見つけた。絵には赤い文字でメッセージが書かれており、修の中で何かがざわめいた。
　表せない気持ちを、燃やす……？
　どす黒い感情が緩やかに競りあがってこようとした時、ポンと背中を叩かれて振り返った。浅山小淋の顔を見た瞬間、黒い感情がすーっと引いて行くのを感じ、修はほっと息を吐いた。冷たい汗が背中を滑り落ちるのを感じながら、修は小淋の見つめる絵を見た。
「浅山も、気になるのか？」
　小淋が小さく頷く。何かを深く考え込んでいる様子に、修は『美術室まで』と書かれた箇所を無言で指し示すと、そっとその場から離れた。