Geheime Maske｜リアクション

Geheime Maske

　資料の中に紛れ込んでいた、家族写真の入った薄いアルバムを見ながら、松生は違和感を抱いていた。
「どうして、御陵さんだけ写ってないの？」
　白猫の写真を恍惚の表情で見ていた真央が、松生の隣に座るとペラペラとアルバムを捲る。
「本当なのだ。王輝ちゃんセンパイだけ写ってないのだ……」
　たまたま写真を撮る時にいなかっただけ？　もしそうだとしても、一枚も写っていないのはおかしい。松生と真央は顔を見合わせると、小さく首を傾げた。

　思いもよらなかった言葉に押し黙ったロベルトを見て、王輝は冷たく笑うと立ち上がった。
「力になるなんて、その気もないくせによく言うよ」
「違う。僕は本当に、御陵の……」
　伸ばした手が、強く払われる。殺意にも似た鋭いアンバーの瞳に、ロベルトは息を呑んだ。
「お前には分からないだろ！？　才能豊かな妹と比べられる気持ちも、どんなに頑張ったところで絶対に認めてもらえない苦しみも！　いなくなれば良いと思うほど、実の妹を憎む気持ちも！」
　荒げた声は、廊下によく響いた。客間で談笑していた深雪と武道が凍りつき、小淋と琴音が顔を見合わせる。冴来が堪らずに走り出し、一歩遅れる形で他の面々も後に続く。
「王輝、今の……嘘でしょ？」
「冴来ちゃんはそう思いたいのかもしれないけど、残念ながら本心だよ。僕は妹が嫌いなんだ」
「……優妃が、お前の事を信頼していてもか？」
　怒りの滲んだ深雪の声に、王輝は冷たく嘲笑った。
「そんなに優妃が気になるの？　なら、オフィーリアにあげるよ」
「てめぇ……っ！」
　拳を握り、走り出そうとした深雪の前に、誰かが立ち塞がる。勢い良くぶつかった深雪がその場に尻餅をつき、長身の相手を見上げる。両手に焼き芋を抱え込んでモサモサ食べていた大荒郎がニヤニヤしながら深雪を見下ろす。
「うぇへへ！　マジメな空気をぶち壊されたってその表情いいよっ！　ハフハフ」
「～～～ッピエロ、お前……！」
「さぁ皆、お芋が沢山残ってるから、食べましょう。はい、冴来ちゃんは私と半分こ」
　岬がいつもと変わらない笑顔で焼き芋を二つに割り、一つを冴来に差し出す。大荒郎とは違い、岬の空気の読めなさは天然だろうと感じた寿美礼がそっと袖を引っ張り、焼き芋を手渡される。
「そうじゃなく……」
「あら？　だって、今は特別な時間でしょう？　この時間は火に入れて燃やしてしまって、これが終われば、またいつもの自分に戻るの。……そうよね、王輝ちゃん？」
「……そうだよ」
　頷いた王輝の顔は、いつもと同じ御陵王輝の笑顔だった。

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