Geheime Maske｜リアクション

Geheime Maske

　パチパチと音を立てて燃える炎を前に、ねむるはお手伝いの女性からライターを借りると、持っていた絵に火をつけた。火が羊を飲み込み、黒く灰になって行くのを暫らく見つめ、手を離す。
　思えば、あんなに誰かを好きになるとは思わなかった。儚げで寂しげで、暗い何かを抱え込んでいる様子の彼女から目が離せなかった。背負っているものを、少しでも分かち合いたかった。……でも、あの人には好きな人がいる。その思いがどれだけ強いのかも知っている。一途に思う心は脇目もふらず、ただひたすら真っ直ぐに一人の人を追いかけている。そこに、ねむるの入る余地がない事は、分かっていた。
　きっとこれからも、好きでい続けるだろう。でもその好きは、恋としてではダメだ。相手も、自分も、傷つけるだけの思いは燃やしてしまおう。これからは、友達としてあの人を守っていこう。
　……それで、いいんだよね……。
　自問自答のようでいて、自分に言い聞かせるように心の中で呟く。それでいいのだと、そうする他ないのだと、黒く灰となった絵を見ながら思う。マスク越しに見る光景はどこか滲んで見えて、溢れる感情をグっと押し殺す。
　ねむるは深く息を吸い込むと、燃え上がる炎をジっと見つめていた。