Geheime Maske｜リアクション

Geheime Maske

　たまには気分転換にいつもと違う場所でヴァイオリンを弾いてみよう。そんな気まぐれから廊下を歩いていた神嶋征一郎は、貼られたカラフルな張り紙に眉を顰めた。まるで悪趣味なパッチワークのようだと思いつつ顔を近づけ、書かれたメッセージと貼られたカードに気付いて口の端を上げた。
　誰が始めたのかは知らないが、そんなのはどうでも良い事。燃やしたい想いなどないが、それだって関係ない。暇を持て余した奴等が集い、騒ぐ、一種のお祭。面白いショーが始まるのなら、乗らない手はない。
　誰もいない事を確認してから手近な教室に入り、鞄の中から青い仮面を取り出した。

　楽譜に並んだ音符はまるで踊っているようだった。意識していないと指先が動き出しそうで、霧生深雪はグっと小さく拳を握り締めると楽譜から顔を上げた。
　初夏の湿気を纏った風が一陣、開いていた窓から滑り込んでくる。壁に貼られた紙が音を立て、小さなカードが一枚足元に落ちた。拾い上げれば見たことのあるカードで、張り紙をには見覚えのある下手な字が並んでいた。
　何してんだよ。
　心の中でそう呟き、小さく溜息をついた後で、深雪は周囲を見渡した。誰も人がいないのを確認してから、教室の中にスルリと入り込んだ。

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