河童の七夕｜リアクション

河童の七夕

「よう桜庭、こんにちは、にゃーくん」
　御剣刀が、いつも持ち歩いている煮干しを円の肩にいるにゃーくんに差し出した。
　肩から飛び降り、煮干しを美味しそうに食べたにゃーくんは、川の中にいる河童猫……コトラに興味を示している。
　刀は日向にも声をかけた。
「よう光村、こんにちはコトラ」
　煮干しに惹かれてコトラが川から上がってきた。
　その姿に驚きながらも刀は煮干しをあげる。
「ほんとに皿と甲羅が生えてるな……」
「うん、びっくりしたよ……こんなことつぶやいても信じてもらえないかと思った」
「河童のお祭りか。どんなのだろう？　楽しみだな」
「日向くん、来たよ～」
　佐々寿美礼が、水泳部の競泳水着にサンマさんパーカーを羽織ってやってきた。
「部活で泳いでる身としては水中で息できるのって憧れだよね」
　寿美礼は日向とは探検部で一緒だが、水泳部の部長でもある。
「身体がカッパ化するって？　外見気にしないから平気、泳ぎに特化した身体って言うのも悪くないよ」
　パーカーを脱ぎ、水泳部の習性か準備体操を始める。
「あ、みんなも体操しておいたほうがいいよ～」
　そう言われて、日向も持っていた水着に着替え、準備体操をする。
　いよいよ川の中へ。
　ぼーっと手を見て。
「……わ！　あ……河童だ。水かき立派……速い！」
　さっそく泳いでみて、速く泳げることに驚く。
　寿美礼も嬉しそうに泳ぎだす。
「帰るまでにカッパ流の泳ぎをマスターしてもっと速く泳げるようになりたいな。
　あ、でも人間に戻ったら使えないよね･･･うーん」
　「自分が河童さんになるのって不思議だねー。
　お皿に甲羅に水かき……ほんとに河童さんなんだ」
　まほろは、水かきで自分のお皿や甲羅を撫でながら、不思議そうに言う。
　
「アマタロウくん元気かねぇ」
　真辺伸幸も、噂を聞いてやってきた。
「暑中お見舞い……にはまだ早いけれど胡瓜のお土産なのよー」
　アマタロウにキュウリを渡す。
「アリガトウ」
「伸幸ちゃ～ん！　今日は１人なのだ珍しいのだ」
「ぬん。後木さん……河童になってるねえ」
「伸幸ちゃんも来るといいのだ！」
「うん、私服の下に水着を着てきたからちゃんと川に入れるのよー」
　と言いつつ服を脱ぎ、足を川につける。
「ぬー……やっぱりちょっと冷たいねぇ」
　足をちゃぷちゃぷしてから意を決して川へざぷん。
（ぬん、思ったより深いねえ）
　川の中から水面を見上げればお日様がキラキラ。
「……ぬ？」
　いつまで潜ってても苦しく無い。
「やあ、本当に息が出来るのよー……！」

　八神修は、飼い猫のミストと共に河原へやってきた。
「待っててくれ」
　とミストを籠に入れ、川から離れた木陰に置いておく。
「修ちゃんも来たのだ？　一緒に河童のお祭りに行くのだ」
　手を振る真央の皿と甲羅に目を丸くする。
「川に入っただけで河童になるのか。神魂の働きかな」
「八神さん！　お祭りばっちりレポートしますよ」
　岩陰で学校指定の水着に着替えた美咲紀が戻ってきた。
「川に入るから、水着持ってきました☆　洋服水浸しは困るもん」
「桜庭も椿もスクール水着なんだな」
　修の言葉に、美咲紀が切なげな顔をする。
「だってビキニとかはハードル高くて……胸的に(血の涙)
　ビ(美？微？)乳には学校指定が似合うんだから……!」
「大丈夫だよ、河童になれば胸なんて気にならないよ～」
　円が笑う。
　修も服を脱ぎ水着姿になって川へ向かった。
　いつの間にか籠から抜け出したミストが後をついて来ているのには気が付いていない。

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