河童の七夕｜リアクション

河童の七夕

◎邂逅と再会

　天宵川に散歩に来て河童と子供たちを見かけた光村日向は、悩んでいた。
（河童って……お化け、妖怪だよね……怖いって聞かされてたけど……怖くないのかな。良い河童さん……信じて良いかな？）
　ねこったーに今見た事を呟こうとする。
（信じてくれないかもだけど……しらせなきゃ）
『河童が子供達を誘ってるよ……。仮装かな、撮影かな……気になる』
　もれいびが連絡くれるといいけど、と思いながら。
　足元では、飼い猫のコトラが川に入っていく。
　みるみるうちに頭に皿、背中に甲羅が生えてきた。

　すぐに反応があった。
『河童！？　どこなのだ？　なんていってるのだ？』
『天宵川。河童の七夕まつりがあるんだって』　
『壁に耳あり東海林メアリー？　なのだ面白いことは首を突っ込むものなのだレッツ河童祭り突撃なのだ～』
　他にも寝子高生から飛んできたレスやＤＭに答える。
『アマタロウ？　うん、そう呼んでるみたい。子供たちや猫に、河童の皿や甲羅が生えてきたんだ』
『河童の世界、行ってみた～い！』

　子供たちと河童は、川の深い方へ向かっていた。本当に水中で息ができるのか試したり、お互いの皿や甲羅を触ってみたりしているようだ。
　見失いそうで、追いかけるべきか日向が迷っていると。
「こんにちはなのだ！　ねこったーを見てきたのだ！」
　同じ体育科一年の後木真央が駆けてきた。
　すでに水着姿である。
「こんにちは……ここ……！　で見たんだ。良い河童ならいいけど、子供達だけじゃ……心配だよ」
　案内しようとしていると、真央と同じ新聞部の椿美咲紀もやってきた。
「ねこったーの噂を見て、やってきたら、あらホントだぁ。河童ちゃんからの川へご招待なのねん？」　
「あっ、真央ちゃん～」
　そしてこれまた真央と同じ陸上部の鴇波羽衣が現れる。
　羽衣も、水着の準備をしてきているようだ。
「羽衣ちゃんも来たのだ？」
「河童さんの世界に行けるって聞いたら、飛びつくしかないでしょー！
　物語の世界に入れるような感じがして……すっごくワクワクする」
　子供っぽい真央よりさらに小柄な羽衣が目を輝かせる。　

　河童と子供たちもこちらに気づいたようだ。
　続いてやってきた桜庭円は、スクール水着の上にパーカーを羽織り、肩に猫を載せていた。
　手にはキュウリの箱。
「おーいアマタロー！　ボクも祭りに呼んでよー！」
　河童……アマタロウが、こちらへ向かってきた。子供たちもそれに続く。
「あ、こないだのお姉さん」
　円を見たケンが言う。
「差し入れに、沢山きゅうり持ってきた！　ケンくん、カケルくん！　元気？」
「円ちゃん、河童と知り合いなのだ？　すごいのだ。みんなこんにちは、真央ちゃんなのだ。よろしくなのだ」
　子供っぽくフレンドリーな真央に、戸惑い気味だったケンやカケルも、笑顔になっている。
　アマタロウの表情は動かないが、少し沈黙があった。
「……ニンゲンッテ　イウノハ　ナイショニシテネ？」
「……えっ？　人間は行っちゃだめなの？」
　円の顔に戸惑いが浮かぶ。
「カカニハ　トメラレタ、ケド……ジジハ　ワカッテクレルト　オモウ」
「わーアマタロウくんだ。久しぶりだね元気にしてた？」
　そこへ、眠そうな目をした遠野まほろが現れた。
　アマタロウが黙ってうなずく。
「またあえて嬉しいな……。
　今日は河童さん達のお祭り連れて行ってくれるって聞いて来たんだけど……私も一緒でいいかな？」
　もう一度アマタロウが頷いた。
「キョウハ　カワニハイレバ　カッパニ　ナレルカラ　ダイジョウブ」　　
「やったー！　アマタロウちゃん、よろしくなのだ！」
　言うなり真央が川に飛び込んだ。
　瞬く間にその背中に甲羅が、頭に皿が生えている。
「アマタロウくんっていうんだ？　初めましてー。
　あたし羽衣、よろしくね！」
　羽衣もにっこり微笑んだ。

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