河童の七夕｜リアクション

河童の七夕

◎いざ、河童の世界へ

「ソレジャ、イコウ」
　そう言うとアマタロウが深いほうへ進んでいき、潜った。
「暗くなる前には帰らなきゃだよー。親が心配するし」
　円の言葉にうなずく子供たちと共に、河童になったみんながアマタロウの後に続く。
「浮いたまま泳ぐのは苦手だけど、潜水は得意だからいくらでも潜れちゃうよー」
　小柄だが体育科、羽衣はスムーズな潜りを見せる。
　続いて潜りかけた修は、横を泳いでいる河童猫に気づいた。
「ミスト、ついてきちゃったのか……」
「にゃー」
　ミストは気紛れで好奇心旺盛な仔猫だ。
　興味の赴くままにあっちへにゃー、こっちににゃーん。
「あら、可愛いー」
　羽衣がミストを見つけ、そっと甲羅を撫でる。
「ミストちゃんなのだ？　こんにちは、一緒に河童さんの世界にくるのだ？」
　真央も嬉しそうに言う。
「仕方ないな……」
　置いていくのも心配なので、修はミストを連れていくことに決めた。

　アマタロウが川底の平たい石に手をかけると、それは簡単に動き、人ひとり通れる穴が現れた。
「ココカライクヨ」
「やあ、すごいねぇ。こんなところに入口が……」
　伸幸が感心する。
「きっと人魚のお城とか竜宮城とかの入口もこんな感じー？　人間は気づかないようになってるのねえ」
　ケンとカケルが飛び込んでいくのにみんなも続く。
　穴に入ってみると、中は薄暗いが広く、天井のあちこちから光が差している。
　あちこちの壁の石が街灯のように光っている。
　地下道のようになっており、先は曲り角になっていて見えない。
「河童さんの世界に行くのは初めてだから、ここのルールとかよくわからないんだ
　アマタロウくん、教えてくれる？」
　羽衣の問いに、アマタロウは答える。
「オマツリノ　モノハ　カワノイシデ　コウカンシタリ　アソベタリスルヨ。ニンゲンノ　オカネモツカエルッテ」
　気が逸るのかスイスイ泳ぎだすアマタロウに、みんなは遅れないよう頑張ってついていく。
　
　おっとりしている日向だが、体育科だけあってスポーツ好きの血が騒ぐ。
　コトラを抱えながら、泳ぐのが楽しくなって泳ぎの限界に挑戦してみる。
「コノヘンデ　イシヲヒロッテイコウ。コノサキノ　カドヲミギニ　マガルヨ」
　アマタロウの声にバタ足を止める。
「ふう……もう少しかな？」
　迷子になる人がいてはいけないと、ふと後ろを振り向くと、自分と同じように猫を抱いた少年がゆらりと浮かんでいる。
「！？　溺れてる？！　……君、大丈夫！？」
　目を閉じた彼が、このまま流されて曲がり損ねては、と心配になって思わず手を伸ばした。
「ああ……休憩してたら流れてしまったよ（汗）」
　ミストを抱いたまま流されていた修は、少しきまり悪そうに言う。
「うん……よかった。僕は1－10の光村……だよ。河童になってるんだから大丈夫。ゆっくり……ゆっくり」
「修ちゃんお昼寝してたのだ？　お祭りはこれからなのだ！」
　同じように先を泳いでいた真央が声をかけてきたのを見て、日向は安心して修から離れ、アマタロウの後を追った。

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