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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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この手で、君と。This is where we begin
さわさわと揺れる草木の音が、耳をくすぐる。
障子越しに差し込む光はやわらかく、檜の香りを孕んでいた。
自宅ではない朝――柚春は、昨夜の出来事を思い出して小さく笑う。
（幸せだ……）
彼の隣で目を覚ますのは、初めてじゃない。
でも、こんな心地よい気怠さと、胸いっぱいの愛しさを抱えた朝は初めてだった。
視線を横にやると、ウォルターが静かに寝息を立てている。大きな手が柚春の指を覆って、まるで逃がすまいとでもいうように絡めていた。
（夢じゃ、ない）
これは学校行事でも、緊急事態でも……そしてうっかりでも、ない。
これからも、彼はきっとここにいてくれる――そんな実感が、身体の奥までじんわりと広がった。
「……おはよう、柚春」
瞼がぴくりと動き、やがて低い声がこぼれる。
寝起きの気怠さを纏った彼の瞳と視線を合わせると胸が熱くなって、柚春は思わずぎゅっと手を握った。
「おはよう、ワット」
――昨夜、確かに結ばれた。
微かな痛みも、肌に残る証だって、彼が与えてくれたものだ。
なら、自分は何を与えられただろう。
まだ伝えていないことがあるのではないかと、柚春は深呼吸をする。
夜の熱でも勢いでもなく、今の自分の想いをそっと紡ぐために、緊張の中で勇気を振り絞った。
「僕は、ウォルターさんがすき。……あなたを支える恋人になりたいです。付き合ってください」
16歳のときと同じ台詞。
あのときは「いいよ」なんて軽く答えてくれたけど。……好きだから待ってる、なんて言われたけど。
もう生徒ではなくなった今、比べものにならないほどの重みを持った言葉は、ウォルターの目を丸くさせた。
握った手が震えている。それでも柚春は、目を逸らさない。逸らせない。
困ったように笑む彼から、どんな言葉が飛び出ようとも諦めないと、強い意志を滲ませていた。
「……I’m yours, always」
聞き覚えのある単語に、柚春は瞬く。その様子にウォルターは呆れ、「昨日も言ったんだけどねぇ」とベッドサイドに手を伸ばした。
「どうして、英語なの」
綺麗にラッピングされた小箱を見せられたって、喜んであげられない。
じぃっと問いただすように見上げれば、彼は視線を泳がし、小箱で顔を隠して。
「…………恥ずかしいからだよ」
そうして少し拗ねたような声で、ぽつりと呟いた。
くすくす漏れる笑い声を塞ぐように重なる唇。――彼が、消えない。
「ね、日本語でも言って？」
「……恋人に告白されるなんて、変な朝だなぁって」
絶対違う。
けれど、照れ隠しなんだと思うと、今日のところはその可愛さに免じて許してあげようかなと思った。
「それで……これ。卒業祝いも兼ねてね」
軸の色だけが違う、ペアの万年筆。持ち手にはイニシャルが刻まれていて、ほんの少し大人びている。
卒業祝いなんて言ったけど、まるで、これは――。
「今日という日に、未来の僕らと約束するために、ね」
小箱の下から現れたのは、小さな鍵。
ずっとずっと、一緒に開けることを夢見ていた、恋人証明書の入った小箱の鍵だった。
柚春は急いで浴衣を引っかけて、リビングのソファへ。ウォルターと並んで腰を下ろすと、倒れていた鞄から小箱を取り出した。
蓋の両端にある錠をそれぞれの鍵で開けると、Balmewral Castleと箔押しのされた重厚な封筒が１通。
中にはもちろん二つ折りにされた恋人証明書が入っていて、テーブルに広げると感慨深い息が出た。
「なんだか……婚姻届みたいだね」
贈られたペンを握り、背筋を伸ばして。
２人の名前が恋人同士として綴られることに、どんなノートの１ページ目よりも緊張する。
ペン先が紙を滑る音が２人のこれからを刻むように響いて、同じ未来を見据えるのもののようだ。
署名を終えた柚春はふっと息を吐き、証明書を掲げる。間違いなく２人で書いた、違う筆跡の名前があった。
その事実が嬉しくて、もう一度ウォルターと確かめるように口づけを交わす。
――そのとき、足元で小さな音がした。ворだ。
さっき小箱を取り出したときに転げ出て……いや、それにしては見かけなかった気がする。
不思議に思いながらも、柚春は彼へ１番に報告できることを、満面の笑みで喜んだ。
「あのね、見て！」
光の加減だとわかってる。
それでも彼は、２人の恋の始まりを静かに祝福するように、ふっと笑った。
どこに連れ出したって、何を喋りかけたって、勝手に動くことも返事をすることもない玩具だけれど。
柚春にとっては、とてもかけがえのない大切な存在。
いつだって見守ってくれた――何でも話せる、友達のようなカプセルギアなのだ。
障子越しに差し込む光はやわらかく、檜の香りを孕んでいた。
自宅ではない朝――柚春は、昨夜の出来事を思い出して小さく笑う。
（幸せだ……）
彼の隣で目を覚ますのは、初めてじゃない。
でも、こんな心地よい気怠さと、胸いっぱいの愛しさを抱えた朝は初めてだった。
視線を横にやると、ウォルターが静かに寝息を立てている。大きな手が柚春の指を覆って、まるで逃がすまいとでもいうように絡めていた。
（夢じゃ、ない）
これは学校行事でも、緊急事態でも……そしてうっかりでも、ない。
これからも、彼はきっとここにいてくれる――そんな実感が、身体の奥までじんわりと広がった。
「……おはよう、柚春」
瞼がぴくりと動き、やがて低い声がこぼれる。
寝起きの気怠さを纏った彼の瞳と視線を合わせると胸が熱くなって、柚春は思わずぎゅっと手を握った。
「おはよう、ワット」
――昨夜、確かに結ばれた。
微かな痛みも、肌に残る証だって、彼が与えてくれたものだ。
なら、自分は何を与えられただろう。
まだ伝えていないことがあるのではないかと、柚春は深呼吸をする。
夜の熱でも勢いでもなく、今の自分の想いをそっと紡ぐために、緊張の中で勇気を振り絞った。
「僕は、ウォルターさんがすき。……あなたを支える恋人になりたいです。付き合ってください」
16歳のときと同じ台詞。
あのときは「いいよ」なんて軽く答えてくれたけど。……好きだから待ってる、なんて言われたけど。
もう生徒ではなくなった今、比べものにならないほどの重みを持った言葉は、ウォルターの目を丸くさせた。
握った手が震えている。それでも柚春は、目を逸らさない。逸らせない。
困ったように笑む彼から、どんな言葉が飛び出ようとも諦めないと、強い意志を滲ませていた。
「……I’m yours, always」
聞き覚えのある単語に、柚春は瞬く。その様子にウォルターは呆れ、「昨日も言ったんだけどねぇ」とベッドサイドに手を伸ばした。
「どうして、英語なの」
綺麗にラッピングされた小箱を見せられたって、喜んであげられない。
じぃっと問いただすように見上げれば、彼は視線を泳がし、小箱で顔を隠して。
「…………恥ずかしいからだよ」
そうして少し拗ねたような声で、ぽつりと呟いた。
くすくす漏れる笑い声を塞ぐように重なる唇。――彼が、消えない。
「ね、日本語でも言って？」
「……恋人に告白されるなんて、変な朝だなぁって」
絶対違う。
けれど、照れ隠しなんだと思うと、今日のところはその可愛さに免じて許してあげようかなと思った。
「それで……これ。卒業祝いも兼ねてね」
軸の色だけが違う、ペアの万年筆。持ち手にはイニシャルが刻まれていて、ほんの少し大人びている。
卒業祝いなんて言ったけど、まるで、これは――。
「今日という日に、未来の僕らと約束するために、ね」
小箱の下から現れたのは、小さな鍵。
ずっとずっと、一緒に開けることを夢見ていた、恋人証明書の入った小箱の鍵だった。
柚春は急いで浴衣を引っかけて、リビングのソファへ。ウォルターと並んで腰を下ろすと、倒れていた鞄から小箱を取り出した。
蓋の両端にある錠をそれぞれの鍵で開けると、Balmewral Castleと箔押しのされた重厚な封筒が１通。
中にはもちろん二つ折りにされた恋人証明書が入っていて、テーブルに広げると感慨深い息が出た。
「なんだか……婚姻届みたいだね」
贈られたペンを握り、背筋を伸ばして。
２人の名前が恋人同士として綴られることに、どんなノートの１ページ目よりも緊張する。
ペン先が紙を滑る音が２人のこれからを刻むように響いて、同じ未来を見据えるのもののようだ。
署名を終えた柚春はふっと息を吐き、証明書を掲げる。間違いなく２人で書いた、違う筆跡の名前があった。
その事実が嬉しくて、もう一度ウォルターと確かめるように口づけを交わす。
――そのとき、足元で小さな音がした。ворだ。
さっき小箱を取り出したときに転げ出て……いや、それにしては見かけなかった気がする。
不思議に思いながらも、柚春は彼へ１番に報告できることを、満面の笑みで喜んだ。
「あのね、見て！」
光の加減だとわかってる。
それでも彼は、２人の恋の始まりを静かに祝福するように、ふっと笑った。
どこに連れ出したって、何を喋りかけたって、勝手に動くことも返事をすることもない玩具だけれど。
柚春にとっては、とてもかけがえのない大切な存在。
いつだって見守ってくれた――何でも話せる、友達のようなカプセルギアなのだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年07月11日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年07月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年07月18日 11時00分
