●ＶＳジャイアント姫神弁当、ジャイアント雨寺弁当（１）●


【中庭】

　▼エネミー情報：
　●ジャイアントチアガール弁当（モデル：姫神 絵梨菜）
　・主成分：ゆで卵。つやつやぷるぷるなたまご肌の巨大弁当。
　　超ミニスカのチアガール衣装は、オムレツの皮製。巨乳部分はジューシィなメロン。
　・主兵装：美脚チアキック。


　シュババババッ！


　その必殺の美脚チアキックが、北校舎のベランダめがけて炸裂した！　薄焼き卵のミニスカが鮮やかに翻り、校舎が完膚なきまでに破壊される──
『ガ……ミ？』
　──かに思えた連続キックを、全て脚技で受け切った姫神 絵梨菜に、巨大チアガールがうめくような声を漏らした。３階のベランダから１歩も退かずに、にっこり微笑む本物チアガール、
「ろっこん、【超音速美脚乱舞】！
　相手も私なら次に繰り出してくる技も読める……あなたの攻撃は見切ったよっ☆（ばばーーん！）」
「あっ、パンツ丸見え……！」
　そして、その絵梨菜を中庭から見上げている変態は、おなじみ横嶋 下心です。
「ああっ、小っちゃなミニスカチアガと、大っきなミニスカチアガが居るよ！
　つまり……？　足許に行ったら、ダブルでパンツ見放題！（ダッ）」
「Σ って、やーん、スカートの中覗いちゃダメー！！」
　ワーーと駆けつける横嶋だったが、残念！　巨大チアガの方はちゃんと、フリルのアンスコを履いていた。
「でもパンツじゃなくても恥かしいよっ！
　もー、Ｈな目で見る男子は後で記憶が飛ぶまで蹴るからねっ！」
　ってベランダでじたじたする絵梨菜の、注意が一瞬おろそかになってしまった！　その隙を見逃さず、蹴り上げるように直下から炸裂する巨人の美脚チアキック！
「って、キャーーーー！？」
「危ない！」
　ベランダに跳び出し、手持ちのバットでその軌道を逸らそうとする毒島 林檎、
（でも間に合わない……、なら！）


「秘技・真剣白歯取り！（しゃきーーーん！！）」


「って、歯で止めちゃったよーっ！？」
　危機一髪！　巨人のつま先をガッチリ強靭な歯で受け止めた林檎が、
「……って、この味はご飯？　何……これ全部お弁当だと？
　た、食べてもいいのかな？（お腹ぐー）」
　そいでもって絵梨菜から、ようやく巨大痛弁の正体を聞かされたこの食欲魔人、
「なら、１匹残らず駆逐してやる！　いただきます！」
　あんぐり目の前の足にかぶり付くと、そのままガツガツとモグラのように巨人の体内を掘り進み始めた！


【西門】

　さて少し時間はさかのぼって、まだ昼休みが始まって間もない頃。
「へーそうなんだ！　お兄さん、お弁当を届けに来たの？」
「うん、妹は少しのんびりしているところがあってね……」
「１年生の教室なら、あたしもこれから行くとこ！　案内してあげるね！」
　桃原 空音は、西門で迷っていた青年の道案内を買って出ていた。「親切にありがとう」と、にっこり空音に礼を述べると、彼は眼鏡の奥の眠そうな目をしばたたかせて、
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は堂島 直樹。
　旧市街で、堂島自転車店っていうお店をやっているんだ」
「その自転車屋さんなら、知ってるよ！　あたしも旧市街住まいなのだ！
　へーそっかあ、妹さんがウチの生徒だったんだぁ……
　ねっ、妹さんって可愛い？　いつもどんなおぱんつ穿いてるの？
　案内したらお礼に１枚ぐらい、おぱんつくれないかなっ！（わくわく）」
　おいやめろ。直樹が戸惑ってるじゃないか。
「（はっ）そ、そうだね！　（話題を変えて）あたしも今日は、お友達にお弁当作ってきたのだ！
　プロテインで炊いたお米でこさえた、特製プロテインもりもり弁当だよ！」
「ま、不味そう……？」
「ななな何を言うのさ！　明日から陸上部のみんなに配る、プロテイン弁当の試作品だよ？
　そりゃあたしはあんまり、料理とかしないけど……
　でもプロテインさえ入ってれば、きっと身体も丈夫になるはず！　ムッキムキー！」
　とか何とかうるさい空音は、これからそのお弁当を差し入れした友人雨寺 凛の教室に、感想を聞きに行くところなんである。その空音とともかく歩調を合わせていた直樹が、オヤと足を止めた。
「ん、なんだろう、あれ……」
　講堂の正面の壁に、ビキビキとヒビが入っている。まるで内側から何かに殴りつけられているような不吉な振動……地面を揺らすその地響きにもてんで気付かず、まだ空音の方はぺらぺらと、
「それで彩りにはねー、カリカリベーコンで作ったギターも持たせてみたんだ！
　楽器を使ったバトル漫画を参考に！　ギターで殴ったり音で攻撃してたよ！
　そう！ 　ちょうどあんな感じで！！　……って、え？」


　ドバッコーーーーーン！


【講堂前】

　▼エネミー情報：
　●ジャイアントビック凛弁当（モデル：雨寺 凛）
　・主成分：プロテイン炊き米。ムッキムキなベーコンブロック製ギターを装備。
　・主兵装：爆音攻撃。


　講堂の壁をぶち破って、突如目の前に現れた巨人に、雨寺 凛は唖然と立ちすくんだ。
「ひゃーっ、な、何あのおっきいの、私！？」
　棍棒のようにギターのネックを振りかざしたまま、ギロリとこちらを見下ろすビック凛。そして、その足許には、ぴょんぴょん跳ねるアホ毛の少女と、眼鏡の青年の姿が。
「あ、凛ちゃんこんにちはっ！　お弁当どうだっｔデカっ！？」
　ビック凛の方に声を掛けてから、ギョッとそのタッパを二度見する桃原 空音、
「え、え、プロテインってそんなに身長伸ばせるものだったの？
　すごい！　プロテインすごい！　プロテイン最強！
　これで陸上部も全国制覇間違いなし！（ぴょんぴょん） 」
「わわ、空音ちゃん！？　そんなところに居たら危なー……」
「えええっ？　凛ちゃんが２人いる！　ど、どっちが本物っ？」
　大小の凛をキョロキョロと見比べ、仰天する空音。しかし勿論、大事な友達の顔を見間違えるはずもなく、
「あ、おぱんつ見えるからこっちが本物だー！（ひしっ）」
「Σ ってちがあああう！　どう見たって、こっちが本物の私でしょ！？」
　巨人の片足にぴょわい〜んと抱きつく空音に、全力で突っ込む凛である。
「ちがうもん！　本物の凛ちゃんなら喜んであたしに、おぱんつ見せてくれるはずだもんっ！
　この偽者め！　偽者め！」
「そんなこと１回もしてあげたことないでしょ！？（たぶん）
　お願いよ空音ちゃん、目を覚ましてー！」
「ああっ、本物の凛ちゃんのおぱんつ可愛い可愛い（すりすり）
　かわいｉてどうしたの踏まないでー！？（ごろんごろん）」
「っておっきい私のパンツ見てる場合じゃないよ！
　逃げてー逃げてー！　ってか恥ずかしいから見ないでーぇ！！」
「お、怒ってるの！？　落ち着いて話せば分かる話せばうぎゃぁぁぁぁぁぁ！！」
「そっ、空音ちゃああああん！？」
　いや間一髪、空音を小脇に抱えて、その足の裏から滑り出たのは堂島 直樹だ！
「こら痛い痛い、そんなに暴れないでったら」
「やだやだもっと凛ちゃんのおぱんつ見るー！
　いやぁぁぁああああ！　離せー！　ちきしょー！（じたばた）」
　ひどいな……。ともかく、逆方向に逃げ去る２人を見て、ほっと胸を撫で下ろす凛だったが、
「Σ って今度は、こっちに向かってきたー！？」
　巨大ギターを引きずりながら、ドシーンドシーーンとこっちに歩いてくるビック凛を見て、
「わ、私を狙ってるの！？　
　ど、どうしよう……！　ここはとにかく逃げるよ！」
　くるりと回れ右して、中庭の方へと必死に逃げようとする凛。しかしそちらの方向ではすでに、ジャイアント北風とジャイアント姫神の２体が、破壊の限りを尽くしている真っ最中！
「ええーーーーこっちも！？　あっ、うわぁ！（こてんっ）」
　まごまごしている間にすっ転んで、あっさりビック凛の手に捕まってしまった！

「だ、誰か助けてーー！　お願いだよーーー！！」