●1限目の休み時間(事件発生3時間前)●
「あら? これは何かしら……お弁当?」
教室に戻ってきた
剣崎 エレナは、自分の机の中に見知らぬランチボックスを発見した。
「いったい誰が……? (ぱかっ)えっ、これって」
フタを開けたそのお弁当の中身は、こんな感じだ。
↓
四角いランチボックスの中におかずやパンを使って、
エレナの似顔絵が立体的に再現されている。特徴的な縦ロールの髪はミニクロワッサン、肌部分はスライスチーズを型抜きしたもの、2つの瞳はチェリーのシロップ煮、といった具合。クラスメイトが横から、そのお弁当を覗き込んで、
「わわっエレナちゃん、ソレって、
痛弁おまじないのお弁当じゃない!?」
「痛弁……お、おまじない?」
「知らないの? 最近ウチの学校で流行ってるらしいよっ。
片想いの人にそっくりなお弁当を作って、
残さず相手がそれを食べてくれれば、その恋が叶うっておまじない!」
「ごめんなさい、その前に痛弁って……何かしら?」
「えっと、
キャラクター弁当ってあるよね?
あれの頑張っちゃった版かなっ。
お弁当の出来が痛ければ痛いほど、おまじないの成功率も高くなるんだって!
他のクラスでも、登校したら机にお弁当が入ってた、ってコが何人かいたらしいよっ」
「そ、そうなの……」
「ワーイ、いいないいなエレナちゃん! どうするのソレ、食べるの?(わくわく)」
「……やめておくわ。だって、相手が誰だか、分からないんでしょう?
何だかカロリーも高そうだし、それに私、恋愛とかそういうのは、まだ、ちょっと(赤面)」
●3限目の休み時間(事件発生1時間前)●
「無いっ!? ううチキショー、俺の弁当も盗まれてやがる!」
2時間後。3年1組の教室では、ちょっとした騒ぎが持ち上がっていた。
昼休みを待てずに早弁しようとした生徒が、弁当が無くなっていることに気付いたのが、その発端。風紀委員長
北風 貴子の呼びかけで全員が確認した結果、
クラス中のお弁当が紛失していることが判明したのである。
「弁当泥棒? でもこんなに沢山、どうして……」
そういえば今朝、貴子の机の中に入っていた痛弁も、いつの間にか消え失せている。その時、隣りのクラスからも、どっと聞こえてくる騒ぎ!
「まさか、隣りの教室まで、泥棒の被害に!?」
慌てて貴子が廊下に走り、ドアに手を掛けたその瞬間だった。
ガラッ──隣りの教室から出てきた生徒とばったり出くわし、その場で凍り付く貴子。
「えっ……」
↑
その生徒は、北風貴子に瓜二つの顔をしていた。
「あっ、貴方、誰なの!? ……って、きゃああああっ!?(ドン!)」
彼女を見るなり、歯を剥き出しにして襲い掛かってきたその女生徒を、思わず突き飛ばしてしまう貴子──
ガシャーーーーーン!!
あっけない手応えと共に、廊下の窓ガラスを割って、その女生徒が外に落ちた。
「うそ……!?」
慌てて窓に駆け寄る貴子、ところが見下ろす中庭には、割れたガラスが散乱しているばかり。他に落ちている者の姿は見えない。
「どうして? ここは3階なのに……」
あまりの異常事態に、混乱する風紀委員長。ふとその彼女が、自分の手に付着している小さな残留物に気が付いた。先ほど、あの謎の生徒を突き飛ばした方の手だ。
「何で……これって、
ご飯つぶよね……?」
●昼休み(事件発生)●
栖来 衣夢が学食に向かっている時、ついにその事件は起きた。
「「きゃああああああああああああっ!?」」
パニックになって食堂の方から殺到してきた学生たちが、いっせいにフッと彼女の目の前で消え失せ、
ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!
そして、中庭に突然そびえ立つ、巨大な人の姿──!
「ちょっと、あれって……
風紀委員長!?」
3階建ての校舎とほぼ同じ高さの、その巨大美女をあんぐり見上げて、普段はクールな衣夢もさすがに棒立ちである。すると、いつの間にかその足許にいた灰色猫・
テオが、衣夢の頭に呼びかけてきた。
『たった今次元を切り分け、現実世界からあのデカブツを隔離した。
おい、校内にいる他のもれいびどもも、俺の声が聞こえてるな?』
そのテオの猫首をとっ捕まえ、呆れて衣夢が頭上にそびえる風紀委員長を指さす。
「ちょっとテオ。いったいあれは何? またあなたがテキトーに作った生物?」
『(むっ)俺のせいみたいに言うんじゃねえよ。いいか、よく聞きやがれ。
どっかの生徒が作った
痛弁に神魂が宿り、意志を持って動き始めた。
そいつが、校内の他の弁当を取り込むだけじゃ飽き足らず、
食堂中の食糧まで吸収して、あの大きさまで巨大化しちまったようだ』
「……は?」
そう言えば今日の午前中、各教室で弁当泥棒の騒ぎがあったと聞くが。それらは盗まれたのではなく、
「
学校中のお弁当が1つに融合して、あんな巨人のカタチになってるってこと……?」
あまりの馬鹿馬鹿しさに、呆れて物も言えない衣夢である。
ところが、ぷらんぷらんぶら下がっていたテオが、チラリとその巨大美女を見上げて、
『いや、学校中の弁当……ってワケじゃねえだろうな。せいぜいアレで、半分の量だろう』
「? どういうことよ?」
『つまり、巨大化した弁当が
もう1体、向こうに居やがるからだ』
●2体目の登場●
ドギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
「あれは2年生の……
剣崎エレナ先輩!?」
今度はグラウンドの方から、ドシーーンドシーーンと歩いてきた巨大エレナを見て、衣夢が、
「ちょっとテオ、あなたふざけるのもいい加減にしなさいよ」
『だから、俺の仕業じゃねえって言ってんだろ!
いいか。あのデカブツどもは、
弁当や食料をまだ持っている生徒を襲って、その食料を奪う。
あれ以上弁当を吸収してデカくなったら、もう手に負えねえ。
そうなる前に
てめえらで、あのデカブツどもを始末するんだ。
それから、もう1点──どうもあの痛弁どもは、自分たちのモデルになった人間を探しているようだ』
「
北風風紀委員長と、剣崎エレナ先輩が、あいつらの標的に? でも、どうして?」
『そんなのは、俺の知ったことじゃねえ。
てめえらで考えろ……と言いたいところだが、どうやらそんなヒマも無さそうだな』
「きゃああああああああああああっ!?」
絹を裂くような悲鳴にハッと衣夢が頭上を見上げれば、巨大エレナが窓ガラスをぶち割り、校舎から1人の女生徒を引きずり出したところ。
その右手には、美しい顔を恐怖に歪めて苦しむ、
剣崎 エレナ(本人)が握られていた──。
●今朝の登校直後(事件発生4時間前)●
さて、そんな騒ぎがこれから起ころうとは、つゆ知らず。登校してきた
あなたは、机の中に見知らぬ弁当を見付けて、不思議がるかもしれない。
「おや? 何だろう、これは……
(ぱかっ)」
寝子島は、だいたい南海。こんにちは、巨大美女っていいよねっ!鈴木二文字です。
(はっ)それどころじゃないぞ皆、大変だ!
みんなの弁当が合体して暴れているんだ!(1行状況説明)
このままだと君たち、今日のお昼を食べそびれちゃうぞ!
みんなの力を合わせて、あの巨大弁当をやっつけろ! 食べ物の恨みを晴らすのだ!
▼シナリオ目的:
・2体のジャイアント痛弁と、バトルしようぜ!
・NPC剣崎エレナと北風貴子の2人を、痛弁の魔の手から守ろう!
▼エネミー情報:
●ジャイアント剣崎弁当(モデル:剣崎 エレナ)
・主成分:パン。ほか、洋食系のおかずが合体して巨人形態になっています。縦ロール部分は無数のクロワッサンで出来ています。
・主兵装:ホーミングクロワッサン……PCを自動追尾して飛ぶパンのミサイル。対策が無い場合は口腔に命中し、PCの喉を詰まらせます。気絶、または一定時間行動不能になります。
●ジャイアント北風弁当(モデル:北風 貴子)
・主成分:米。ほか、和食系のおかずが融合して巨人形態になっています。おっぱい部分は巨大な三角おにぎり。尖端部はダイヤモンド並みの硬度を誇る梅干しのタネです。
・主兵装:ドリルおにぎり……バストのおにぎりが超速回転し、触れる物全てを破壊します。PCにドリルが当たった場合は、死にませんが負傷します。ミサイルとして発射も可能(装填数:2発)。
▼NPC情報:
・剣崎エレナと北風貴子(本人)は、ともにこちらの異世界にいます。
・2人ともそれぞれ、ジャイアント痛弁の標的となって、執拗に狙われます。
・2人は「ひと」のため、ガイド内で説明されたテオの声は、聞こえていません。状況も分からないまま、自分そっくりの巨人に追い回されて、パニック状態です。誰か、助けてあげて!
・テオは屋上で昼寝しています。アクセスしても、ガイド以上の情報を引き出すことは出来ないでしょう。
▼エネミーの目的:
・エレナと貴子の2人を標的として狙いますが、その目的・動機は不明です。
・PCさんの推理や各対応により、本シナリオのエンディングは可変します。
▼痛弁おまじないとは:
・恋の相手と両想いになれる、最近寝子高で流行りのおまじない。
・作ったお弁当が相手にそっくりなほど、効果があるようです。ケンカしているお友達とも、仲直りできるそうですよ?
▼サンプルアクション(出来ること色々):
(1)ジャイアント剣崎弁当(略称:GKB1)と戦う。
(2)ジャイアント北風弁当(略称:GKB2)と戦う。
(3)剣崎エレナ(本人)に関わる。
(4)北風貴子(本人)に関わる。
(a)エレナさん(or貴子さん)に痛弁を作ったのは、実はこの私なんです!
(b)実は私の机の中にも、痛弁が入ってたんだけど…… →3体目の敵(GKB3)の出現。
(c)実は(b)のPCさんに痛弁を作ったのは、この私なんだ!
(5)GKB3(or 4、5、6……)と戦う。
・アクションを掛けるメイン対象は、上記の例のように1対象に絞って下さい。複数対象での行動は不可とさせていただきます。(数字)+(アルファベット)の行動の組み合わせはOKです。
・OKな例:(a+3なら)=自分の作った痛弁がエレナを襲っているのに責任を感じ、彼女を守る。
・(b)のアクションを掛けた場合は、そのPCさんをモデルにしたジャイアント弁当がもう1体(以上?)、シナリオに登場して暴れることになります。主成分と主兵装は任意で設定可(マスター判断でアレンジする場合もあります)。ただし、その武器を使ってあなた自身に襲い掛かってきますので、ご注意を。
・(c)のアクションを掛ける場合はGAを利用して、(b)のプレイヤーさんと相互の同意が取れていることが、マスターにも分かるようにして下さい。
・(b)と(c)のアクションを掛けるPCさんは、事前にコメントページにその旨の書き込みをお願いします。でないと、他のプレイヤーさんが(5)の対応アクションを書けませんので……。
・(a)の場合、痛弁を作ったことにできるのは、エレナか貴子のみです。その他のNPCをモデルにしたジャイアント弁当は、シナリオに出現させられませんので、ご注意下さい。
▼その他の注意:
・舞台は寝子島高校(の異世界空間)ですが、今回は寝子高生以外の社会人などのPCさんも、テオの召喚に巻き込まれたというかたちで、参加可能です。ただし、昼休みに学校の敷地内にいた理由は、何かしらでっち上げて下さい。
・突発的に起こった事件のため、異世界への物品の持ち込みは(弁当や菓子類を除き)原則不可です。学校内に一般的に有る備品類や施設は、異世界側でも活用できます。
・学校の敷地の外には、何もありません。白い平坦な地面が、地平線まで続いているだけです。
・また参加PCさん以外にも、無差別にテオに召喚されたモブ生徒が、異世界に100人ほどいます。ジャイアント痛弁から、逃げたり逃げ遅れたり捕まったり、弁当を奪われたりする役回りです。戦力にはなりません。
というワケで皆さん、バトルシナリオです! バトルシナリオだってば!!
上記の注意事項を念頭に、どうぞ存分に暴れちゃって下さいませ。
またリアクションでお会いできたらいいですね! 鈴木二文字でした。