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九龍 シーサイド・アンダーグラウンド
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【1384】
かつ、かつ、かつん。靴音鳴らして、
エレノア・エインズワース
は朽ちかけた廊下を歩みます。壁や天井はひび割れ、黄ばみ黒ずみがまんべんなく広がり、窓ガラスのほとんどは割れ落ちてびょうびょうと風が吹き込み、エレノアの灰色の髪を巻き上げました。
「…………」
言葉なく。窓の向こう、そびえるシーサイド九龍をある種の寂寥とともに見つめ、ふわり、口元をゆるめます。
解体工事はつつがなく進行しているようです。オーソドックスなブロック解体工法で、屋上に据えられたクレーンが外壁をひとつまたひとつと崩し、少しずつビルの背を縮めていくのです。あと数週間もすれば工事は完了し、すっかり更地となるでしょう。周辺の雑居ビル群もあわせて解体された後、一帯の再開発が始まるのだそうです。
正直に言って、もう少し異なる思いが胸に浮かぶものと考えていました。たとえばそう、感傷とか。時の流れが育んだ懐古の情とか。かつて暮らした部屋へ思いを馳せ、湧き上がる記憶に心を委ね、ノスタルジーが胸に満ちてゆく……そんな陳腐な感情の揺らぎを想像したものです。
けれどいざここへ足を運んでみれば、エレノアの胸には小さなさざ波が立ったのみ。
「ま、こんなものですか」
それでも、けじめをつける必要がありました。そう強く感じるがゆえに、エレノアはふたたび寝子島へ足を運んだのです。
かつかつかつん。廊下を進み、階段を登って屋上へ。扉には南京錠がかかっているものの、エレノアにとってはたやすい障害です。いつのまにやら手の中に現れた工具類でかちゃかちゃかちゃりとやってあっさり開錠、青空の下へと飛び出すと、
「……おやおや。先客がいらしたとは。久しいですね」
「あら……んふふ。奇遇ですね、エインズワースさん」
に~んまり。いつかの夜と同じくアヤシイ笑みを浮かべてたたずむ、
胡乱路 秘子
の姿がそこにはありました。
紙コップをふたつ。水筒のふたをひねると湯気たつ紅茶をそそぎ、ひとつを秘子へと手渡します。
「ありがとうございます。まあ、いい香り!」
ティータイムに白磁のカップはなし、おしゃれなガーデンテーブルもケーキスタンドもなく、椅子だってそこらに転がっていた瓶ビールの空き箱ですけれど、風情がないということもありません。
ごうん、ごうんと軋むクレーンの駆動音。がりがりと響くドリルの音。時おり上がる作業員たちの怒声。瓦礫がくずれガラスが割れ、外された鉄骨が転がる音。高く低く、めまぐるしい破壊音こそエレノアの耳を優雅にくすぐり、多重装はオーケストラのごとく胸を震わせるのです……なんて。
「普段はそんなことありませんけど。やはり、ね」
「ええ。この瞬間は、きっと特別ですから」
ふたり並んで腰かけて、お茶をたしなむ目の前には、解かれゆくシーサイド九龍。エレノアは手のひらをかかげて、
「5階の501号室が、かつての私の部屋でしてね。ほら、あそこ」
12年も前のこと。たしかにエレノアは、灰色のビルに囲まれたあの部屋で学生時代を過ごしました。ずいぶんと遠い記憶。けれどまるで昨日のことのようにフラッシュバックする記憶。色鮮やかに、脳裏へと瞬きます。エレノア一流の悪趣味をばらまいたり、他者の暴かれたくない事情や胸中を暴き立てたり……なんと輝かしき日々。懐かしき日々。
「フ……」
エレノアはひとつ笑みを浮かべます。先ほどは毛ほども浮かばないと思った感傷が、どうやら少しは胸の奥にわだかまっていたようです。制服に袖を通し、学生の身分で世を眺めたことは、エレノアにとって懐古する価値のある記憶として刻まれたことでしょう。
だからこそ、解体にともなう心地良いバックミュージックへ耳をかたむけながら、シーサイド九龍の最期を前に感慨の湧き上がりは薄く、どこか冷めた自分を自覚しました。
「取り壊しに再開発。このまま寝子島が、伽藍とした玉虫色の観光地へと変わってゆくのは、ハハハ。嘆かわしいことですね」
「あら、そうですか? たしかに、古い建物が無くなってゆくのは少し、さみしいですけれど。寝子島がさらに活気づいてゆくのは、喜ばしいことではありませんか?」
こてんと首を傾け、秘子はそんなことを言いました。
「……胡乱路さん。貴女は少し、変わったようですね」
「そうでしょうか?」
「貴女とてあの鮮烈な夜をこそ、愛していたのでは?」
秘子が司会をつとめた、胡乱な夜のTVショウ。エレノアも目にしたことがありました。いつしか深夜に彼女の姿が映し出されることはなくなりましたけれど、だからこそ今日この時に、シーサイド九龍という闇が擁した神秘の終わりを見届けに来たのではないかと。エレノアはそう考えたのです。
秘子はしばし目の前に進行する解体工事を見つめ、紅茶をひと口含み、小さくこくんと飲み下してから言いました。
「ええ、そうですね。たしかにそう。わたくしを受け止め、育んでくれたのは、あの愛おしい夜闇でした。けれど、昼の光の歩み方を教えてくれたのもまた、あの夜の……」
最後まで語らず、秘子は目を細めて見つめたのみ。やわらかく微笑みながら。
エレノアはどこかつまらなさそうにそれを見やり、肩をすくめました。
「どうやら貴女と私は、違う道を歩んでいるようですね」
「そうなのですか? んふふ。あの頃が懐かしくはありませんか?」
「ええ、懐かしく、そして遠い。いえね、どうやら私は、玩具で新しい遊び方を生み出すのは得意でも、新しい玩具を生み出すのは不得手なようでね」
す、と取り出しました。ほんの他愛ない、ちょっとした仕掛け。それは、小さなスイッチでした。
「今でも探しているんですよ。次の玩具を。真新しくてピカピカの、遊びがいのあるやつを」
かちり、躊躇いもなく押しこみます。瞬間、風を切るような音が鳴り響き、眼前の解体現場から、いくつもの火の玉が打ち上がります。火の玉は少しずつ赤みがかってきた午後の空へ弾けて、ぽん、ぽん、ぽぽん。無数の花となりました。
ビルの向こうでは、突然のことに驚き慌てふためく解体業者の黄色いヘルメットが、右往左往。秘子はぱちり、手をたたいて、
「まあ、素敵♪ 花火でお別れだなんて、エインズワースさんらしいですね」
「時の流れをさかのぼることはできません。だからこそ、過ぎ去った全ては美しく、そして儚い……今が色褪せて見えるほどに。だからせめて、手向けは派手に、ね」
エレノアはカップをかかげ、目に映る七色の光をまぶたの裏へ焼き付けるかのよう、ただ真っすぐに見つめて、
「シーサイド九龍に、あの頃の日々に……献杯」
寝子歴1384年の夏。ついに行政の手は下され、シーサイド九龍と一帯の雑居ビル群を中心とするスラム街は、取り壊しとなりました。
直後に実施された再開発工事を経て、跡地に造成された広大で自然豊かな公園は、かつてのスラムの面影もなく、市民の健やかな憩いの場となっているのです。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
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墨谷幽です。『シーサイド九龍』のお話、リアクションをおとどけいたします~。
ずいぶん久しぶりにシナリオの舞台とさせていただきました。シーサイド九龍。
寝子島のダークサイド、裏の一面を垣間見られる貴重なロケーションだと思います。
あまり使われていないのはもったいない! ということで、エピソードとしても今回はダークめで書かせていただきました。
楽しんでいただけましたら幸いです。
それでは、今回もご参加いただきまして、まことにありがとうございました。
また次のシナリオでお会いできますよう、楽しみにお待ちしております。
お疲れさまでした~!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
ホラー
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
8人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年04月20日
参加申し込みの期限
2025年04月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年04月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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