「んふふ」
かつかつかつんと迷いなく、
胡乱路 秘子はほの暗い路地へと踏み込みます。
隙間なく生え伸びるビル群。薄汚れたコンクリートの壁。錆びついたドア。開けっ放しの窓枠は歪み、どこか遠くから風に乗って届くラジオの音。頭上に覗く白い空を切り分ける無数の電線。
路地と路地の複雑な連なり。行きどまりの階段を上り、下り、また上って、いつのまにやらビルの上。淀んだ空気、どこかから届くえもいわれぬ臭気。
ゴミだらけの道をさらにゆけば、点々と赤黒く残るのはもしかして、血痕? それともおっちょこちょいな誰かがぶちまけたケチャップでしょうか。後者であったら良いのですけれど。
シーサイド九龍を中心とする雑居ビル群は、今日も変わらずそこへたたずんでいます。
非行少年少女のたまり場であるとか、黒服のアヤシイ者たちが出入りしては悪だくみをしているとか……あるいはビルたちの落とす影の中には、この世ならぬ胡乱な者たちが潜んでいるのだとか。そんな噂もありました。
ぱちり、秘子はひとつ手をたたいて、
「まあ、なんて素敵なところでしょう♪ 暗く、淀んでいて、ひそやかで……なんだか昔を思い出しますね」
「なんだ、嬢ちゃん迷子か? んな小奇麗な格好して、ここらをうろつくもんじゃない。襲われちまうぜ」
見上げれば、上階にて紫煙をくゆらす、眠たげな目をした男。着崩したシャツの胸元にはちらり、蜘蛛の刺青がのぞきます。
ジニー・劉は片眉を下ろしていぶかしげに見据え、言いました。
「ふん? 見たような顔だな、あんた。どっかで会ったかい」
「そうですね。いつかの夜に、お目にかかったこともあったかもしれません……あら、あれはなんでしょうか? 興味深いですね、んふふふ」
かろやかな足取りで暗がりの奥へ歩いてゆく背中を、ジニーは煙草をふかし見送ります。安全なところまで送り届けてやるべきか、それともほっとくべきかと考えているかのようでした。
ここは九龍、寝子島のアンダーグラウンド。危険がいっぱい、スリルもいっぱい。
けれどあえて踏み込んでみたなら、面白いものが見られる……かも?
墨谷幽です。よろしくお願いいたします~。
ジニー・劉さん、ガイドにご登場いただきましてありがとうございます!
ご参加の際はガイドのイメージによらず、ご自由にアクションをお書きくださいませ~。
このシナリオの概要
今回の時の流れは、自由です。
ねこぴょんの日の直後、あるいは数年後の設定など、なんでもOK。
雑居ビルシーサイド九龍とその周辺に広がる、
アンダーグラウンドなエリアを舞台としたお話です。
みなさんはここへうっかり迷い込んでしまったり、気になる噂を聞いて自ら踏み込んだり、
あるいは気が付くといつの間にか立っていたりします。
ちょっぴり素行の悪い人々のたまり場となっていたり、スネに傷を持つ人々が出入りしてなにやら画策していたり。
あるいはホームレスや社会的に弱い立場の人たちが、相互互助の名のもとに共同生活していたり。
またあるいは……光あるところには存在し得ない、奇妙で不気味でこの世のものではない怪異たちが潜んでいたり?
アンダーグラウンドエリアにも人々の日々の暮らしがあり、お店があり、子どもたちの遊び場があったりもします。
勇気を持って踏み込んでみれば、稀有な出会いや貴重な体験ができるかも?
まあ多少、アブない目にもあってしまう可能性はなきにしもあらずですけれど。
<アクションの一例>
◆恋人とデート中に迷い込んじゃった。
不良に絡まれたけど、彼氏が守ってくれた。カッコイイ♪
◆裏路地に知る人ぞ知る名店があるらしい。
怖いけど、探しにいってみる……!
◆迷路みたいな暗い路地を、得体のしれない怪異に追いかけられるホラー体験。
コワ~っ……!
などなど。
アクションはマスターに完全オマカセもOKです。
迷ったらお気軽にポンとどうぞ。
NPCについて
★胡乱路 秘子
シーサイド九龍を気ままにお散歩しています。
アクションに指定があれば登場します。
その他、登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
また、墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、登録・未登録問わず登場OKです。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。登場が難しい場合もありますので、ご了承ください。
こんなNPCと絡んでみたい、なんてリクエストがありましたら、お気軽にご指定ください。
細かく指定もOKですし、マスターにおまかせもOK。
Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
NPC・Xキャラともに、いつもとは違った肩書きや人物像を指定しても構いません。
以上になります。
それでは、ご参加お待ちしております~!