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もうひとつの卒業、桜色のにゃあ
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Fly High
入学したときの同級生たちより一年遅れの卒業式を間近に控えたある日。
椎井 莉鳥
は、大学入学の準備などで慌ただしい日々を送っていた。
進学先は、木天蓼大学薬学部。薬剤師になるための学びを本格的に始めることになる。
合格発表までは嵐の前の静けさという雰囲気もあったのだが、合格が決まった後は怒涛。入学手続きのような公的なものから、卒業前に集まろうという部活仲間の誘いなど私的なものまで、人生の転換期はなにかとやることが多い。
そんな駆け抜けるような数日を過ごして、ようやくひと段落ついたとシーサイドタウンにある自宅の庭で日向ぼっこをしていたら。
「ん……?」
一匹の猫が迷い込んできた。
猫そのものは珍しくはない。
なんといってもここは寝子島だし、莉鳥の家の庭もいろんな猫のお散歩コースなっていたりする。
なのにこのとき莉鳥が思わず目を瞠ってしまったのは、その日やってきた猫が、桜色をしていたからだ。
「変わった色の子ね……」
物珍しく思って見ていると、桜色の猫はちらりと莉鳥のほうへ目線を送ってきた。
そこに何かがある、と知らせるかのようなまなざしに、莉鳥は背後を振り返る。
何があるわけでもない。家の窓があるだけ――のはずが。
「――……っ」
莉鳥は息を呑む。
窓に映っていたのは抜けるような一色の青。
吸い込まれるような、あるいはどこまでも落ちていきそうな、そんな矛盾した美しさに満ちた蒼天であった。
「これは……この青には、覚えがあるわ……」
どこまでも高く深く舞い上がり、落ちることなんて想像もつかない……まごうことなき、あの日の青。
忘れようがない。
ついこの前の秋。
高校生活最後の記録会でみた青だ
。
大学を受験する学生は夏のうちに部活動を引退するのが一般的だが、莉鳥は夏のインターハイで優勝という好成績を残したために最後に是非にと請われて、この、秋の記録会に出場した。
どうしても跳びたかった。
高みに輝く真っ白なバーを。
バーの高さはすでに身長よりも高く、インターハイで跳んだ1m76cmという自己記録よりもさらに2センチ引き上げられている。三度挑戦できるうち二度目までバーを落し、莉鳥にはあとがなかった。
部活仲間やコーチ、観客、審判たちも、莉鳥が記録を更新するかどうかを固唾を飲んで見守っていた。
(今思えば――)
窓に映る青を見つめる莉鳥は、半年前のあの日の感情を反芻する。
(記録更新より、自分が陸上競技から引退するに際して、自分が納得できる──自分がこれをやり切ったと言える、そのような証明が欲しかったのかもしれない……)
あのときの自分が青の中に映る。
スタートラインに立ち、軽くニ三度その場でジャンプして体のこわばりをほぐしている。
あのときは夢中だった。仲間や観客たちが期待の眼差しで手拍子を送って、背中を押してくれていた。
結果は分かっているのに――見ているだけの今のほうが、肩に力が入ってしまう。
今の自分の緊張をよそに、窓の中の自分はふうっと息を吐いて肩の力を抜き、軽やかに走り出した。
結末まではほんの数秒。
ユニフォームを着た自分は加速し、青空へ向かって地面を蹴る!
弓のように背を逸らして描かれる弧のなんと美しいことだろう。
莉鳥は息を止める。
(あの時の私は──夢中であの青い空の高みへ舞い上がった。跳ぶことこそが、私の人生の証明になると信じて……)
記録はあくまでも、記録でしかなかった。
高く。
高く。
真っ青な空へ。
ただそれだけを望んで。
――超える!
怒号のような歓声が巻き起こったのと、自分の背がどさりとマットについたのは、どちらが先だっただろう。
真っ白なバーは空にあった。
跳ぶ前とまったく変わらぬ姿で、青の中を横切ったままだった。
「ああ……」
あの日あの瞬間の感慨が込み上げて来て、春の莉鳥の頬を濡らす。
(私が流したあの時の涙は、記録更新に対する感涙じゃなかった。それも多分にあるけれど、でもそれがすべてじゃなかった……)
思えば、莉鳥は子どもの頃から観察眼にすぐれ勘の良いところがあった。
ほかの人が必死に努力しなければ到達できないところへ、ふっと到達してしまうようなところもあった。
勉強などはとくにそうだ。
理数系の科目は不得手ではなく、数字や理論は『見ればわかる』という感覚になることもある。
もちろん一ミリも勉強しなくてもできます、という人外じみた天賦の才を持ち合わせているわけではないのだけれど、炎を燃やすというよりは水の流れるようにというのだろうか、淡々とやればクリアできてしまう。大学受験もそうだ。薬学部は木天蓼大学のなかでも偏差値が高いほうの学部なのだけれど、莉鳥は日常の延長でクリアしてしまった。その気になれば、もっと高いところも目指せたのかもしれない。けれどそこまで夢中になるほどでもない……そういった自分にどこか虚しさを感じてきた気がする。
(……あの日の青は違った……)
無我夢中になった。
過去も未来も、肉体も精神も、全部そこには存在せず、ただ青のなかにある白だけを目指す。
いままで他のことでは感じたことのない感覚に包まれたあの瞬間、莉鳥は高く跳んだのだ。
あの日、自分が超えたいと思ったものは本当はなんだったのだろう。
インターハイで出した176センチという自己記録?
いいや、違う。あれはただの記録更新じゃなかった。今思えば――。
(……何かを終わらせて何かを始めるために必要な儀式だったのかもしれない……)
その「何か」が何を意味するかは、いまはまだ分からない。
莉鳥は目を瞑る。……あの日から半年たったいま、涙に濡れた瞼の裏に浮かぶのは、黙々と走り込む自分の後姿だ。灼熱のグラウンドで、念入りに踏み切りのフォームを確認し、それでもうまく行かず頬の泥をぬぐっていた……けっして要領のよくない自分が、いまはとてつもなく愛おしい。
莉鳥にとって高校時代は穴でもあった。学校に通って勉学を励んだり友情を育んだりといった、一般的に考えられているような当たり前の青春に意味を見出せなくなり、一年留年もした。「お前って何を考えているかわからない」……そういわれ続けてきた莉鳥が、十代の終わりに夢中で頑張れたものがあったことを、いま、誇ってもいいのではないだろうか。
(たった2センチ……けれど私にとってはとてつもなく大きな2センチ)
超えた先で見た青は、それまでに見たどんな青より美しかった。
未完成な世界の中で見上げた青を、きっと一生忘れないだろう。
瞼を開けると――いつの間にか窓は元に戻っていた。
桜色の猫もどこにもいない。
そこは見慣れた我が家の庭で、若いスズメが囀っている。
窓に映るのは大学生になろうかという自分の姿。
「You're gonna fly high(あなたは高く跳べるでしょう)」
莉鳥は自分へ手を伸ばしてみる。
その手をゆっくり空へと掲げ、何かをつかみ取るように握りこむ。
(高く跳ぼう)
またべつの青を目指して。
「I know you can fly high(私は知ってる、あなたが高く跳べることを)」
空に向かって告げた莉鳥は、踵を返して部屋へと戻る。
胸の奥に沸き起こるなにかは、眠りにつく青い竜のよう――……。
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担当ゲームマスター
笈地 行
桂木京介
阿瀬春
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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