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もうひとつの卒業、桜色のにゃあ
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薄紅に手を伸べて・2
山道とアスファルトの道の境目、満開に咲く桜を背に、会いたかったひとが立っている。
「珪さん……!」
咄嗟にその名を口にしてから、慌てて唇を抑える。学校はすぐ隣だ。
「珪先生」
「こんにちは」
言い換える綾花の傍、珪先生が歩み寄る。
「こんにちは、珪先生」
「そうか、綾辻さんは猫鳴館生だったね」
「部屋に次のひとが入るまでか、入学式までは使っていいそうです」
「次に住む場所はもう決まったかい?」
こくりと頷きながら、綾花はマンションの位置を教えるかどうかちょっと迷う。
――珪さんのアパートの近くなんです
そう言って無邪気に笑ったら、どんな反応をするだろうか。
困らせてしまうだろうか、いつもみたいに大人びた曖昧な微笑みを浮かべるだろうか。
(……たぶん、)
柔らかく微笑んで、曖昧な言葉ではぐらかされる気がする。その裏になにかしらの本音を隠して。
桜色の猫の背中を片手に撫でながら、隣に立つ珪の夜色の優しい瞳を覗き込む。ほんのちょっぴり、自分も猫になった気がした。
(珪さんの心を読み取れたらいいのに)
そのためにはもっと時間が必要だろうか。もっともっとたくさん一緒の時間を重ねなくてはならないだろうか。
(ずっと一緒に居られたらいいのに)
まなざしに気づいた珪はいつもと変わらぬ微笑みを返してくれた。
数センチでも近づきたくて、綾花は立ち上がる。精一杯に背伸びしてみても、背の高い珪がふとよそを見てしまえば簡単に視線は外れてしまう。
「ああ、……行ってしまった」
逸れた視線は気まぐれにふらりと歩き出した桜色の猫へと向いている。
「それにしても綺麗な色の猫だね」
くすりと笑う珪の言葉を耳にしたように、桜色の猫は振り返って短く鳴いた。
「珪先生」
『生徒』の顔で綾花は笑って見せる。
今は、先生を困らせたくなかった。少なくとも、桜の季節が終わるまで――自分の気持ちをきちんと彼に伝えて、きちんと返事を貰うまでは。
「追いかけてみませんか」
数歩先に進んで振り返る。
「珪先生がよければ、一緒に」
デートと言ってしまえば困らせてしまう気がした。
「お散歩、しましょう!」
にゃん!、と元気よく桜色の猫が鳴いて、綾花は思わず笑う。見遣った珪もくすくすと笑っていて、綾花も一緒に笑う。
「そうだね、少しだけ」
「はい、少しだけ!」
ほんの十分だけでも一緒に歩くことが出来れば、今はそれで充分だと綾花は信じた。それだけできっと心はふわふわと嬉しくなるに違いないから。
にゃごにゃごと何事か話しながら猫が歩き出す。
綾花と珪は並んで猫の後をついてゆく。
桜色した尻尾がゆらり、風に乗って飛んで来た桜の花びらがふわり。綾花が思わず両手を伸ばしてみても花びらは掴めなかったけれど、隣の珪がひょいと手を伸ばして代わりに取った。てのひらに優しく包んだ花びらを差し出され、綾花は両手を伸ばして花びらを受け取る。
珪のてのひらの熱が移って温かな花びらにそっと唇を寄せた途端、花びらはふわりとまた気まぐれに宙へと舞った。
花びらを視線で追って、その先で桜色の猫に追いつく。花びらを頭に乗せた猫は、見えないナニカを見るように立ち止まってどこかを見つめていた。
「にゃんこさん?」
「あっちは、……窓?」
ふたりもつられて傍らに建つ民家の窓を見遣る。映っていたのは、桜色の猫でも今現在並んで立つふたりの姿でもなく――夏の日差しがきらきらと降り注ぐあの夏の日のふたり。ふとした事故のように唇を触れ合わせてしまった、綾花にとっては忘れ得ぬ出来事。
たとえ偶然に過ぎなくても、
(私のファーストキス)
映し出されたその光景に言葉をなくす。あの夏の日のようにぱっと頬に熱が散る。頬どころか耳も首筋も熱くなってきて、綾花はどきどきと暴れ始める胸をぎゅっと抑えた。
あのときは咳き込む珪が心配で、ただそれだけで、でも、
(いつもより近い距離になってたかも)
あのときの珪の驚いた顔は今でもはっきりと覚えている。
キスの後の、なにごともなかったかのようないつもの優しい笑顔も。
(……ドキドキしてたのは私だけだったのかな?)
隣の珪を見仰ぐ。窓硝子に同じ光景を見ているはずの珪は、あのときと同じように驚いた顔をしていた。
「珪さん」
そっとその名を口にする。
まだ教師と生徒の関係であると痛いほど理解していても、伝えておきたかった。だってあの時の珪は冷静だった。大人の対応をされた自分だけがドキドキしていたのかもと思うと胸がぎゅっと締め付けられたように痛んだ。
(私の心配をしてくれた優しさが嬉しかったけど)
あの時の珪は平然としているように見えたから。だから――
「偶然でもあのキスは私のファーストキスです」
告げる声が小さくなってしまう。珪の横顔を見つめていられなくなってしまう。
口を噤んでしまいそうになる綾花の足元、桜色の猫が寄って来た。脛にふわふわの頬を寄せてくる猫に励まされた気がして、両手を伸ばす。抱き上げた途端、猫はごろごろと喉を鳴らしてくれた。そうっと抱きしめると頬に頭をぐいぐい押し付けてきてくれた。
切なくて苦しいままだった胸に猫の柔らかな温もりが宿る。
猫の温かさに勇気を貰って、綾花は小さく深呼吸する。もう一度、珪をまっすぐに見上げる。
「ドキドキしてたのは私だけですか?」
知りたかった。
あの時、『珪さん』はドキドキしていたのかどうか。
あの時、どんな気持ちだったのか。
(教えてもらえるかな?)
一瞬、胸を衝かれた表情をしたように見えた。息を詰まらせ、笑おうか生真面目な顔をしようか心底迷ったような、そんな一瞬の表情の後、
「――綾辻さんだけじゃなかったよ」
珪は『珪先生』の顔で微笑んだ。
「ごめんね」
あの日から目を逸らすように珪は瞳を伏せる。思案するように黙してから、珪は顔を上げた。
あの日が映る窓をしばらく見つめ、桜の花びらが舞うようにそっと、そうっと、手を伸ばす。
最初に触れたのは猫の頭だった。
ふわりと猫を撫でて、その続きのように指先で綾花の唇に触れる。
「桜の季節が終わっても、それでもまだ――」
一秒にも満たぬ僅かな間だけ触れた指が離れた。
その刹那だけ、見たことのない『珪先生』の――否、『珪先生』ではない表情を綾花は見た気がした。それがどんな感情を意味するのか迷ううち、
「卒業式にまた会おう」
珪は『珪先生』の顔に戻って微笑む。
「珪……先生っ、」
綾花は桜色の猫をぎゅっと抱きしめる。
勇気が欲しかった。
「桜の季節が終わったら……!」
「……うん」
満開の桜を背に、珪は確かに頷いた。
「桜の季節が終わったら」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
笈地 行
桂木京介
阿瀬春
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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