授業風景～２年普通科の場合～｜リアクション

授業風景～２年普通科の場合～

（なーるほど）
　巧はくすくすと笑うと、草むらから僅かに見えた頭にぽん、と手を置いた。
「ひゃうっ！？」
「見つけたで、後木さん」
　まるでいたずらっ子を嗜めるような声に、後木真央は面食らう。彼女は苦笑いをしつつ巧を見たが、彼は感心したように小さな声で言った。
「何やら動物の逃げるような音とか出しとったみたいやな。よぉ、観察しとる。せやな、それに免じて見逃したるさかい。その代わり、貸しやで」
「ふぇ？」
　巧はくすくす笑いながらそういい、今のうちに学校に帰るよう促した。真央はぺこっ、と頭を下げて一足先に学校へと帰っていった。その後ろ姿を見送りつつ巧はぽつりと「三男坊に似とるな」と思わず呟いた。

　時間となり、ホイッスルが吹かれる。それを合図に生徒たちは集合場所へと戻ってきた。全員が揃ったのを確認し、巧は一つ頷く。
「ほな、軽くゴミがないか点検したら学校に戻るで。忘れ物がないようにな。そうそう、お菓子や弁当を食べた人はちゃんとゴミを持ち帰る事」
　その言葉に友子が思わず顔を赤くする。それに気づかぬふりをしつつ巧は鞄からゴミ袋を取り出した。
「そういえば、飲み物と甘い物を持ってきていいって言うのは……」
「あれか？万が一山で迷った時の保険なんよ」
　若菜の質問に、巧はべっこう飴を口にしつつ答えた。
「水と甘い物があれば量にもよるが結構凌げる。せやから持っとった方がええんや。まぁ、カロリーが高い物が好ましいんやけどな？　それに……３時間目、４時間目ってなにかと腹が減りやすいやろ？」
そう言いながら、にぃ、と笑う。
　また、香月春人から齎されたタイワンリスの報告に巧は少し表情を正す。そして詳しく聞くと「追々調査が必要かもしれん」と呟いた。

　暫くしてゴミ拾いを終えた巧たちは学校へと戻ってきた。その後レポートを提出してもらい……未完成の者は翌日までの宿題となった。サボる者は居なかった為、巧は安堵の息を吐いた。
（さて、弁当を食べたら早速読もうかな）

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