授業風景～２年普通科の場合～｜リアクション

授業風景～２年普通科の場合～

起：講義の時間

　――九夜山の麓

　少し蒸し暑い中、落神神社よりすこし離れた林に寝子高の普通科・２年の生徒たちは集まった。前では生物教師の牛瀬巧が軍手を手につけている。彼は喉が渇いたら遠慮なく水分を飲みつつ聞いて欲しい、と前置きした上で口を開いた。
「ほな、まずは九夜山の動物について簡単に話そか。せやな、この寝子島には人が長いこと住んどるけど、結構人と動物の距離が保たれているんや。そのお陰で、駆除やの捕獲やのの話題はあんま聞かへんなぁ。
せやけど、最近の開発でちぃと変化が出てきた部分はあるさかい、注意しておかんとって所はあるんよ」
　そう言いながら、この辺りでは農家と野生生物との間でのトラブルが少ない事を例に説明していき、その内容を双子の兄弟である香月春人と香月秋人も仲良く並んでメモしていた。
（サボったら後からが面倒だしな）
　こう言う理由で授業は真面目に受ける春人の傍らでは、秋人がにこにこと授業を受ける。レポートは面倒だが、こうして双子の兄と一緒にいられるのが嬉しいらしい。
（授業は真面目に受けるけど、やっぱり兄さんと一緒なのは嬉しいな）
　そんな２人の傍らでは、鳥の研究を熱心にしている大天使天吏。彼女は香月兄弟の様子には目もくれず、講義に取り組む。内容が鳥の話になるとより熱心になるが、その表情は普段の柔らかくぼんやりとしたもののままに見える。
（あ……これは……）
　不意に聞こえたカラスらしき声は、濁っていた。彼女は後でより詳しく調べてみようと考え、小さく頷いた。

その傍らでは八重崎五郎八がうっすらと額に浮かんだ汗を拭いつつため息をつく。
（初夏になると、更にきついねぇ）
（日陰だけど……やっぱり暑いのは苦手だなぁ）
　体力のない彼女の傍らでは暑さに弱い澪乃澄佳もまた、バテないように水分補給をしつつ話を聞く。この場所は木陰となっておりほどよく日光が遮られてはいるが、２人には少し辛かったようだ。
　葉利沢倫理子もまた体力には自信がない方だ。しかし、彼女はこういったモノもたまにはいいかな、と小さく笑って気合を入れ直した。……が、その後ろで小さく『きゅぅ』と愛らしい音がなる。お腹を空かせた柿内友子がその事に僅かに頬を赤くした。
（春なら山菜が期待できたのに今は初夏！　見つかるドクダミやシソは山では見つかりません……）
　その事を悔しく思っているうちに、移動するとかなんとか先生の声がし、ぽん、と彼女の肩を叩く者がいた。眼鏡が特徴的な白浜渚である。
「あ、あの！　皆移動をはじめました。私たちも行きましょう」
「そ、そうですね」
　２人は遅れ気味ではあるが、他の生徒たちを追いかける。そうしながらも渚は小さく呟いた。
「む、胸が苦しいです……」
　何時もの事だとはわかっているものの、渚としてはやはり不便である。友子も着痩せするタイプで胸は中々のモノなのだが、それ以上に見事な渚の胸はやはり目立つのだった。

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