アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～｜リアクション

アホー！　～そしてカラスは闇夜に哂う～

▼レストラン　２

　志波三兄弟も、レストランに集結していた。
「何か変な声が聞こえたと思ったら……この島おかしいだろ」
　調達したビールを飲みながら、弟の説明を聞く長男・志波高久は、ロボプラモ。
　パンを千切って投げながら、カラスを餌付けしていた。

　次男・志波武道はカワウソの縫いぐるみ、生き様の反映なのか黒ブーメランビキニ着用。
　今は腹筋割れてなくて、キュートなぽんぽん見せ見せである。

　三男・志波拓郎は、もふもふ柴ワンコの縫いぐるみ。自身のあまりの心地よさに、ついセルフモフモフ……していたら、お腹が鳴った。
「自分も、すこし食べたい……」
　しょぼんと弟がそう呟いたら、なりふり構わず厨房にすっ飛んで行くのが、武道クオリティである。
「さあ、たー坊☆　育ち盛りだもんな、遠慮すんな！」
「……」
　そっぽを向かれた。
　お兄ちゃん、ショック。

　ともあれカラスにパンを投げながら、兄弟談義は続く。
「兄貴も、もれいびか……アレ？　この、島にいなくても、なるのか……もれいび、って？」
「それならちょうどいい、たかにーちゃん頼みがあるぜぃ！
　実は鴉の中に一人、すんごく美人の女の子が変身してるのがいてな。口説いたゲテ☆」
　高久のろっこんは、対象を指さし両拳を胸前で突き合わせる事で、こちらから向こうへ一方通行の意思の伝達を可能にする。
「俺の力で、一羽ずつ口説き確認していけばいいのか？」
　半信半疑になりつつも、高久は集まったカラスにそれを試したが、カラス達は異変を感じたか一寸首を傾げただけで、床にバラ撒かれたパンを啄ばむのに夢中だった。
「こいつら、違うんじゃ、ないのか……？」
「うーん、外しちゃったかな☆　ま、そんな事もあるってー」
　ぱんつカワウソに向けて、眉をしかめる拓郎は、食料を高久に括りつけてもらいレストランを出た。
「たー坊、それどうすんだ？」
「……外のも、ひきつけてくる……これでも、足には、自信、ある」

　勇敢に外へ出た拓郎も、轟と同じように極力生き物は傷つけたくない。
　ならばと、遠吠え威嚇。
「……がぅ、ワオーン！！」
　しかし次の瞬間、気恥ずかしさにオドオドしてしまう所が、なんとも愛らしい弟なのであった。

　自称フランス人で、ゲイバー “ジオフロント” のママ、ミッシェル・ナイスゲイは普段とはタイプの違う美女に変身していた。
　ノンケでも喰っちまうという、彼女の目的は
「クローネをレストランでお・も・て・な・し、しちゃいますわ～ん♪」
　だそうである。クネクネした、お姉さん走りのド迫力も今は鳴りを潜めている。
　厨房で酒瓶を物色していたミッシェルは、猫耳メイドの普堂しおりと鉢合わせる。

　彼女の腕には、キラキラ光るグッズや花、道中しおりに拾われた、こけしの七緒璃音が居た。
「……はい。またいつものアレね、巻き込まれ系ね。
　いやぁこう何度も何度も巻き込まれてると、誰でも巻き込まれ体質になれちゃうね、やったね☆
　……って言ってる場合かー！！　これじゃねこったーも出来ない……って今は、どっちにしろ使えないんだっけ？」
「うんうん……あれ、ひょっとしてあなたもクローネさん達のおもてなし？」
「あはん？　てことは、あなたもそうなのねん？」
「はい、あのね実はちょっといいコト、思いついちゃったんだ……」
　ごにょごにょと、しおりがミッシェエルに耳打ちする。
　璃音は気のない顔で聞いている。

「あらん素敵ねん、楽しそう♪　こう見えてあたし、接客はお手の物よん。ご一緒していいかしらん？」
「勿論♪」
　物資を調達すると、彼女等はしおりが手配していた猫グッズを頼り、＜猫間飛行＞で観覧車へと飛んだ。

　しおり達と入れ替わりに現れたのは、同じ新聞部の桜井ラッセル達から情報を得た、部長の八神修である。
　修はレストランに備え付けられていたスピーカーを拝借すると、店外にも聞こえやすいよう、ろっこんで少し分解して位置を調整する。
　そして、クローネ発見の報を更に拡散させた。

『皆、聞いてくれ、新聞部の八神だ。
　クローネは水のみ場だ、水のみ場に向かってくれ！　真辺女史が俺達に協力して、地図を作ってくれている。
　場所の見当がつかない者は、カナリアを見かけたら声を掛けて、受け取ってくれ！』