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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ハレよ、風吹け ～ぼくらが幸せでありますように～
みじめな砂浜
涙で霞んでどこをどう走ったかなんてわからない。
誰かとぶつかって「バカヤロー！」なんて言われた気もする。
走って走って……気づけば寝子ヶ浜海岸にいた。オフシーズンで人は少なく、浅見 柚乃は誰にとがめられることもなく波打ち際へと進んでゆき、黒く濡れた砂浜に膝をついた。
「……うっ、……く」
砂を掻き、それが爪の間に食い込むのも構わず嗚咽する。
――碧南先輩。
愛する先輩が鷹取洋二とかいう男の胸の中で泣いていた。その光景が瞼から離れない。
悔しい、のだろうか。悲しい、のだろうか。それとも、……恨めしいのだろうか。
自分でもわからないが、あのパレードの場に居ることが出来ず、駆けだしてしまったのは確かである。
「あああ……！」
柚乃は声を震わせる。波音できっと声はかき消される。誰にも知られたりしない。
そう思っていたのに……柚乃の手元に人の形の影が落ちた。
「！」
柚乃は振り返った。
息を切らして立っていたのは――。
「霧生 愛……！」
柚乃は愛を睨みつける。何でこいつが……！
言葉にならなくとも愛には伝わったのだろう、彼女は哀れそうに眉をしかめた。
それがまた気に食わなくて、柚乃は吠える。
「見てたの？ さぞいい気分だったでしょうね？」
「いい気分？ 私は先輩を案じて」
「アハハッ！ 楽しんだの間違いでしょう、大嫌いな先輩が恋に破れて惨めに泣きわめく姿を見られて！」
柚乃が吐いたのはいわゆる罵声だ。髪を振り乱し、正気とは思えない様である。
「浅見先輩」
愛は宥めようとするが手を振り払われ、更に砂まで投げつけられる。
「っ！」
腹を立てていいものだろうか。そう迷うくらい、柚乃の嘆きは常軌を逸していた。
結局、愛は柚乃の手を掴んだ。
「先輩、桜花寮ですよね。今日はもう自分の部屋に戻って休みましょう、送ります」
「ふざけんな！」
柚乃は逆上して組み付いて来る。愛は容赦のない柚乃に組み敷かれて砂浜に背を付けた。
「先輩！」
「わかってるわ、これは八つ当たりよ！ 私がどんなに泣こうが喚こうが、恋の敗北者である厳然たる事実は変わらない！ だから……だからこそ……この行き場のない感情をぶつけずにいられないのよ……」
柚乃の声は次第に弱弱しくなり、愛を組み敷く力も抜けて、その胸に頭を預ける形になる。
「浅見先輩……」
そのときである。天から花びらが降ってくるのが目に入ったのは。
「え、何……？」
修羅場も忘れて、愛は花びらを手で受けた。
うららかな日差しの中、愛はひとりで自主練をしている。
だがその心は晴れない。事件を起こして辞めていった浅見先輩のことが気にかかって……。
「え……？」
今のは未来？ 信じられず、愛は立て続けに花びらを取った。
――愛はバスケットコートを走っている。試合中で、前方には技量を信頼する柚乃がいる。体が自然と柚乃にボールを送っている。柚乃はそのボールを見事にシュート！ 今年のチームも全国を狙えるかも……。
――競泳水着を着た愛が泳いでいる。
柚乃からの謂われない嫉妬に耐え切れずバスケを辞めて水泳に転向したのだ……。
――愛と柚乃は雨の校舎裏でずぶ濡れになりながら言い争いをしている。
だが最後には、二人抱き合い口づけを――……。
訳が分からない。時系列はばらばらだし、互いに矛盾し合ってもいる。
未来は一つではない、ということだろうか。
愛が柚乃を見つめていると風が吹き、柚乃の手にも幾枚かの花びらに触れた。
――柚乃の手には血濡れたナイフ。
碧南が洋二を庇うように覆いかぶさっている。碧南の背中に広がる血の赤。
「いやあああああっ、碧南先輩！」
――花火大会だ。浴衣を着た碧南、愛、柚乃が仲良く歩いている。
柚乃は嬉しい。碧南が大学に行ってもこうしてお祭りに誘ってくれて、また一緒に過ごせるなんて。
愛もいるのがちょっと邪魔だけど。
――碧南に公園に呼び出され、ベンチに並んで腰かけてその背を擦る。碧南先輩はあの男と別れたらしい。
優しい言葉を掛けながらも、柚乃の心に黒い炎が宿る。
（今度こそ私のもとにきて、先輩……）
――昨年、全国で好成績を残した寝子高女子バスケ部が初戦敗退……！？
私のせいだ、私が碧南先輩みたいにみんなをまとめられなかったから……。
――雨の校舎裏で柚乃と愛が噛みつくように口づけ合っている。
お互いのことは嫌い。なのにお互いを求めてしまう。
この感情はいったい……。
花びらが見せる様々な未来は、砂浜に倒れ込んだふたりの感情を千切れさせてゆく。
……見つめ合うしかできなかった。
何を言っていいかもわからなくて。
涙で霞んでどこをどう走ったかなんてわからない。
誰かとぶつかって「バカヤロー！」なんて言われた気もする。
走って走って……気づけば寝子ヶ浜海岸にいた。オフシーズンで人は少なく、浅見 柚乃は誰にとがめられることもなく波打ち際へと進んでゆき、黒く濡れた砂浜に膝をついた。
「……うっ、……く」
砂を掻き、それが爪の間に食い込むのも構わず嗚咽する。
――碧南先輩。
愛する先輩が鷹取洋二とかいう男の胸の中で泣いていた。その光景が瞼から離れない。
悔しい、のだろうか。悲しい、のだろうか。それとも、……恨めしいのだろうか。
自分でもわからないが、あのパレードの場に居ることが出来ず、駆けだしてしまったのは確かである。
「あああ……！」
柚乃は声を震わせる。波音できっと声はかき消される。誰にも知られたりしない。
そう思っていたのに……柚乃の手元に人の形の影が落ちた。
「！」
柚乃は振り返った。
息を切らして立っていたのは――。
「霧生 愛……！」
柚乃は愛を睨みつける。何でこいつが……！
言葉にならなくとも愛には伝わったのだろう、彼女は哀れそうに眉をしかめた。
それがまた気に食わなくて、柚乃は吠える。
「見てたの？ さぞいい気分だったでしょうね？」
「いい気分？ 私は先輩を案じて」
「アハハッ！ 楽しんだの間違いでしょう、大嫌いな先輩が恋に破れて惨めに泣きわめく姿を見られて！」
柚乃が吐いたのはいわゆる罵声だ。髪を振り乱し、正気とは思えない様である。
「浅見先輩」
愛は宥めようとするが手を振り払われ、更に砂まで投げつけられる。
「っ！」
腹を立てていいものだろうか。そう迷うくらい、柚乃の嘆きは常軌を逸していた。
結局、愛は柚乃の手を掴んだ。
「先輩、桜花寮ですよね。今日はもう自分の部屋に戻って休みましょう、送ります」
「ふざけんな！」
柚乃は逆上して組み付いて来る。愛は容赦のない柚乃に組み敷かれて砂浜に背を付けた。
「先輩！」
「わかってるわ、これは八つ当たりよ！ 私がどんなに泣こうが喚こうが、恋の敗北者である厳然たる事実は変わらない！ だから……だからこそ……この行き場のない感情をぶつけずにいられないのよ……」
柚乃の声は次第に弱弱しくなり、愛を組み敷く力も抜けて、その胸に頭を預ける形になる。
「浅見先輩……」
そのときである。天から花びらが降ってくるのが目に入ったのは。
「え、何……？」
修羅場も忘れて、愛は花びらを手で受けた。
うららかな日差しの中、愛はひとりで自主練をしている。
だがその心は晴れない。事件を起こして辞めていった浅見先輩のことが気にかかって……。
「え……？」
今のは未来？ 信じられず、愛は立て続けに花びらを取った。
――愛はバスケットコートを走っている。試合中で、前方には技量を信頼する柚乃がいる。体が自然と柚乃にボールを送っている。柚乃はそのボールを見事にシュート！ 今年のチームも全国を狙えるかも……。
――競泳水着を着た愛が泳いでいる。
柚乃からの謂われない嫉妬に耐え切れずバスケを辞めて水泳に転向したのだ……。
――愛と柚乃は雨の校舎裏でずぶ濡れになりながら言い争いをしている。
だが最後には、二人抱き合い口づけを――……。
訳が分からない。時系列はばらばらだし、互いに矛盾し合ってもいる。
未来は一つではない、ということだろうか。
愛が柚乃を見つめていると風が吹き、柚乃の手にも幾枚かの花びらに触れた。
――柚乃の手には血濡れたナイフ。
碧南が洋二を庇うように覆いかぶさっている。碧南の背中に広がる血の赤。
「いやあああああっ、碧南先輩！」
――花火大会だ。浴衣を着た碧南、愛、柚乃が仲良く歩いている。
柚乃は嬉しい。碧南が大学に行ってもこうしてお祭りに誘ってくれて、また一緒に過ごせるなんて。
愛もいるのがちょっと邪魔だけど。
――碧南に公園に呼び出され、ベンチに並んで腰かけてその背を擦る。碧南先輩はあの男と別れたらしい。
優しい言葉を掛けながらも、柚乃の心に黒い炎が宿る。
（今度こそ私のもとにきて、先輩……）
――昨年、全国で好成績を残した寝子高女子バスケ部が初戦敗退……！？
私のせいだ、私が碧南先輩みたいにみんなをまとめられなかったから……。
――雨の校舎裏で柚乃と愛が噛みつくように口づけ合っている。
お互いのことは嫌い。なのにお互いを求めてしまう。
この感情はいったい……。
花びらが見せる様々な未来は、砂浜に倒れ込んだふたりの感情を千切れさせてゆく。
……見つめ合うしかできなかった。
何を言っていいかもわからなくて。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年08月04日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年08月11日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年08月11日 11時00分
