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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
もどかしくて心が高ぶる
バイト先の花屋で京極 花音は剪定鋏を持ち、茎や葉を適当な長さに切って器に飾る。その手は頻繁に止まり、気付けば店内の客を目で追っていた。僅かな靴音にも反応して鋭い目を向ける。
そして決まって頭を左右に振った。心の中の声が漏れて、またかよ、と憤ることもあった。
花音が働いている時に意中の相手、暁月 静は現れなかった。
着替えを済ませた花音は飢えた狼のように静を探した。手には不釣り合いな可愛らしい紙製の巾着を持ち、結んだ赤いリボンが風に靡く。
――このままじゃ、終われねえ。彼女に会えないことを不幸の一言で済ませるなんて、俺にはできねぇんだよ。こんなことを続けていたら、いつか彼女は誰かのものになっちまう。
人で賑わう通りに出た。仲睦まじい男女に目が行く。女性のショートの髪を見て安堵しつつ他を探す。
その過程で洋菓子店を目にした。店内にいる女性を片っ端から見ていく。
――俺の誕生日を祝ってくれた時も、こんな店だったよな。自分の為に買ったクッキーだけど、貰えて本当に嬉しかった。だから今度は俺が静さんに手作りのクッキーを渡したい。
握っていた紙の巾着に目を落とす。バイト先の包装を利用して作った物だった。
――中身は定番のバタークッキーでも、何十回も試して完成させた。米粉のおかげで食感が良くなったと思う。偶然の幸運を当てにしない。今度こそ、俺の手でチャンスを掴み取るんだ。
その相手が一向に見つからない。焦った花音は居酒屋にも目を向けた。
――静さんは二十歳の大学生だ。サークル活動はわかんねぇけど、仲間と一緒にビールを飲んでいることも考えられるよな。酒の力で一線を越える可能性も。
湧き出す不安が自身を追い詰める。雲行きの怪しさは天候にまで及び、ゴロゴロと低い遠雷が聞こえてきた。
――雨はダメだ。俺のろっこん『Lycanthrope』が発動したら狼になってしまう。人間の言葉を話せないと想いを伝えることもできやしねえ。
暗くなる空を睨みながら同時に避難場所を探す。
寂れた公園が目に付いた。小さな東屋を見て花音は迷わず飛び込んだ。
屋根の作りはしっかりしていた。中央にある木製のテーブルは木目が美しく、くすんだところはなかった。
花音は長椅子の中央に座るとテーブルに巾着を置いた。仰け反るような格好で空を眺める。遠雷はあるものの稲光を見ることはなかった。
「……降らねぇのかよ」
不貞腐れたような顔で溜息を吐いた。
「京極さん？」
横手からの声に花音はビクッと肩を震わせた。見ると公園を覗き込むような格好の静がいた。視線が合うと嬉しそうに小走りでやってきた。右手に提げたビニール袋がゆらゆらと揺れる。
「一人ですか？」
「あ、はい。そうです」
「誰かのプレゼント？」
静はテーブルに置かれた巾着に目を向けた。花音は迷うような表情を吹っ切って立ち上がる。
「静さんはクッキーが好きみたいなんで、俺なりに作ってみました。味はわからないんだけど、よかったら受け取って貰えないですか」
「ちょうど間食用のお菓子が切れていて、嬉しいです。もしかして今まで私を探していました？」
「その、どうして？」
静はワンピースのポケットからハンカチを取り出し、花音の首筋に当てた。
「汗が流れているので」
「あ、どうも」
花音は俯いた。その拍子に静が手に提げたビニール袋の中身が見えた。開花前のバラや春の花々が小さな花器に艶やかに活けられていた。
「その花は俺のバイト先で買いました？」
「正解です。京極さんがバイトを終えたあとだったので、他の店員さんにアレンジして貰いました」
「あ、ああ、そうなんですね」
多少、笑みがぎこちない。自ら進んで遠回りした結果となった。
その後、花音は恥ずかしそうにしながらも手作りクッキーを自力で手渡した。
そして決まって頭を左右に振った。心の中の声が漏れて、またかよ、と憤ることもあった。
花音が働いている時に意中の相手、暁月 静は現れなかった。
着替えを済ませた花音は飢えた狼のように静を探した。手には不釣り合いな可愛らしい紙製の巾着を持ち、結んだ赤いリボンが風に靡く。
――このままじゃ、終われねえ。彼女に会えないことを不幸の一言で済ませるなんて、俺にはできねぇんだよ。こんなことを続けていたら、いつか彼女は誰かのものになっちまう。
人で賑わう通りに出た。仲睦まじい男女に目が行く。女性のショートの髪を見て安堵しつつ他を探す。
その過程で洋菓子店を目にした。店内にいる女性を片っ端から見ていく。
――俺の誕生日を祝ってくれた時も、こんな店だったよな。自分の為に買ったクッキーだけど、貰えて本当に嬉しかった。だから今度は俺が静さんに手作りのクッキーを渡したい。
握っていた紙の巾着に目を落とす。バイト先の包装を利用して作った物だった。
――中身は定番のバタークッキーでも、何十回も試して完成させた。米粉のおかげで食感が良くなったと思う。偶然の幸運を当てにしない。今度こそ、俺の手でチャンスを掴み取るんだ。
その相手が一向に見つからない。焦った花音は居酒屋にも目を向けた。
――静さんは二十歳の大学生だ。サークル活動はわかんねぇけど、仲間と一緒にビールを飲んでいることも考えられるよな。酒の力で一線を越える可能性も。
湧き出す不安が自身を追い詰める。雲行きの怪しさは天候にまで及び、ゴロゴロと低い遠雷が聞こえてきた。
――雨はダメだ。俺のろっこん『Lycanthrope』が発動したら狼になってしまう。人間の言葉を話せないと想いを伝えることもできやしねえ。
暗くなる空を睨みながら同時に避難場所を探す。
寂れた公園が目に付いた。小さな東屋を見て花音は迷わず飛び込んだ。
屋根の作りはしっかりしていた。中央にある木製のテーブルは木目が美しく、くすんだところはなかった。
花音は長椅子の中央に座るとテーブルに巾着を置いた。仰け反るような格好で空を眺める。遠雷はあるものの稲光を見ることはなかった。
「……降らねぇのかよ」
不貞腐れたような顔で溜息を吐いた。
「京極さん？」
横手からの声に花音はビクッと肩を震わせた。見ると公園を覗き込むような格好の静がいた。視線が合うと嬉しそうに小走りでやってきた。右手に提げたビニール袋がゆらゆらと揺れる。
「一人ですか？」
「あ、はい。そうです」
「誰かのプレゼント？」
静はテーブルに置かれた巾着に目を向けた。花音は迷うような表情を吹っ切って立ち上がる。
「静さんはクッキーが好きみたいなんで、俺なりに作ってみました。味はわからないんだけど、よかったら受け取って貰えないですか」
「ちょうど間食用のお菓子が切れていて、嬉しいです。もしかして今まで私を探していました？」
「その、どうして？」
静はワンピースのポケットからハンカチを取り出し、花音の首筋に当てた。
「汗が流れているので」
「あ、どうも」
花音は俯いた。その拍子に静が手に提げたビニール袋の中身が見えた。開花前のバラや春の花々が小さな花器に艶やかに活けられていた。
「その花は俺のバイト先で買いました？」
「正解です。京極さんがバイトを終えたあとだったので、他の店員さんにアレンジして貰いました」
「あ、ああ、そうなんですね」
多少、笑みがぎこちない。自ら進んで遠回りした結果となった。
その後、花音は恥ずかしそうにしながらも手作りクッキーを自力で手渡した。
あとがき
担当マスター：
黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！
今回のシナリオは苦難と言えるようなハードモードではありません。
ことわざにある「空腹は最上の調味料」を恋愛バージョンでお届けしました。
空回りのまま終わる展開もありましたが、ほとんどがほろ苦い甘さに仕上がったと思います。
途中、畳み掛ける不幸も考えたのですが、作者である私が割とハッピーエンドが好きなこともあって、
このくらいのソフトな感じになりました。いかがでしたでしょうか。今回のシナリオの反動で次作は……。
本シナリオにご参加いただき、ありがとうございました。
甘い夢のような時間をシナリオと共に過ごし、完成に至りました。
アクションの良さにも助けられ、満足のいくリアクションになったと思います。
重ね重ねになりますが、ありがとうございました。
ことわざにある「空腹は最上の調味料」を恋愛バージョンでお届けしました。
空回りのまま終わる展開もありましたが、ほとんどがほろ苦い甘さに仕上がったと思います。
途中、畳み掛ける不幸も考えたのですが、作者である私が割とハッピーエンドが好きなこともあって、
このくらいのソフトな感じになりました。いかがでしたでしょうか。今回のシナリオの反動で次作は……。
本シナリオにご参加いただき、ありがとうございました。
甘い夢のような時間をシナリオと共に過ごし、完成に至りました。
アクションの良さにも助けられ、満足のいくリアクションになったと思います。
重ね重ねになりますが、ありがとうございました。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年07月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年07月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年07月22日 11時00分
