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寝子島高校
木の芽雨にはぐくまれ
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【緑雨】
朝からの雨がふたりの顔をおおい隠してくれた。いや別に
稲積 柚春
にしてみればおおっぴらにしていてもいいのだしなんならラブラブイチャイチャぶりを世間に喧伝してもいいくらいなのだが、世間体ある社会人
ウォルター・B
としてはそうもいかんというのが実情であり大人の事情というやつである。今日も旧市街をふたりで歩くにあたっていくらか人目を意識しないでもないが、雨はいい。しとど降る春のあたたかい雨は、人々の目と意識を空へと向けてくれる。下界はしばしばふたりだけの世界となった。
「雨もいいもんだね。ワット」
「そうだねえ。日本の雨には風情を感じるよ。雅ってやつ?」
金髪に青い目をしてそんなことを言う彼に、くすりと笑む。好きな人の意外な言葉を引き出してくれる雨に天をあおいで、ひとつ感謝。そういえば傘というものもいい、ふたりで一本広げたなら、そこはまさしくふたりきりの空間ではないか。
「肩が濡れちゃうから、もう少しそっちに行ってよワット」
「ムチャ言うなあ、これが限界。そんなに大きな傘じゃないんだから」
「ふふふ、そうだよねえ? じゃ、ワットがもっとこっちにくればいいんだよ。ほら、ぎゅーって」
「せまいなあ」
苦笑いするウォルターの腕をぎゅうと抱き込み、歩むたび足もとへ透きとおる王冠を生み出す共同作業を楽しみながら、旧市街をゆく。
「おっ? 古書喫茶『思ひ出』……へえ、なんだか雰囲気よさそうなお店じゃない」
「入ってみる? なにか飲もうか」
「いいね、そうしよう」
木造の隠れ家的喫茶店だった。扉をくぐるとあたたかみある電球色の照明がともり、静謐というにふさわしい店内の様相と、店主の気さくで軽い調子がふたりを出迎えた。おごそかを感じながらもこの気安さがちょうどよい塩梅だ。
ふたり分のコーヒーやちょっとした軽食を注文し、わくわくとする書棚のラインナップへ目を向けようとしたところで、
「やあ、これは。こんにちは、ブラックウッド先生」
「おや。八神かあ、奇遇だねえ」
ふと声をかけたのは、奥の書架の脇のいい席で優雅に読書中の
八神 修
だった。寝子高校舎のどこかで、あるいは学校行事などで見かけたことがあったろうか。柚春も名は知らないまでも見知った顔の先輩だ。たしか仲の良いガールフレンドといつもいっしょにいたような気がするが、今日のところはひとりのようだ。
柚春はぺこりと会釈をして、
「こんにちは、八神さん。稲積です」
「八神だ。よろしく」
たしかツインテールの彼女さんは修くん、などと呼んでいた。まあ彼女かどうかはさだかではないが、ともかく柚春を見すえる瞳はクールで理知的に見えた。なかなか頼りになりそうな先輩だ。
彼は寝子島高校の教師であるウォルターと、生徒であろう柚春の取り合わせにはあえて突っ込むでもなく、興味深くなにくれとたずねたりもしなかった。きっと口は堅いほうにちがいない。
注文を待つ間にウォルターはよき出会いを求めて書棚をめぐり、柚春はなにやら興味をひかれ、修へたずねた。
「本、好きなんですね?」
「ん? ああ……これか」
彼の眼前の机には書籍が山と積まれていた。多くは推理小説のようだ。聞けばほとんどが一度読破したものだが、いま一度読み返しているのだという。なかなかの物量であり、よほどの本好きかビブリオマニアでもなければこうはいくまい。
修は肩をすくめて、
「本は好きだよ。君はどうだい」
「そうですね。興味のある本とか趣味の本なら、ついのめりこんじゃうかも」
「なるほど。それでいいと思うよ。俺なんか、幼児の頃から百科事典にかじりついてたそうだからな……」
「それはまた、筋金入りってやつですね」
彼は推理小説が好きらしい。柚春が机の上の本たちをながめると、いくつかおすすめを教えてくれた。なかには映画化された作品もあって、シーサイドタウンにあるシネマカフェの個室でそれを鑑賞するひとときなど至福なのだと、語る彼の声色はいささかの熱を帯びていた。クールなだけでなく、情熱的なところもあるようだ。
「シネマカフェ……『クランク・イン』でしたっけ。何度か行ったことありますよ」
「そうか、いい店だよな」
まだ特別な間柄ではなかった頃のウォルターと、そういえばあの店で
偶然出会った
ことがあったな、と思い出す。またふたりでおとずれてみるのもいいかもしれない。
「なんだい、話が弾んでるみたいじゃないか。僕もまぜておくれよお」
「あ、ワッ……ウォルターさん」
こちらもどっさりと写真集やら図鑑やらを持ってきたウォルターも交えて、しばし本にまつわる歓談を楽しんだ。
ふところが震え、スマホへとどいたNYAINのメッセージに、修は店主へちょっと失礼とひと言断り店の外へ出た。あいかわらずの雨だ。しっとりとした空気が肌にはりつくが、梅雨どきにはまだ早いし不快ではなかった。
「……ああ、あおい。こっちだよ」
「おつかれー、修くん。本読んでた? ごめんね」
「かまわないさ。あおいのためならどこへでも、ってね」
「もう、調子いいんだから」
もちろんけっして冗談のつもりはないのだ。くすくすと肩をゆらした
七夜 あおい
の笑みがあれば、修はどこへだって駆けつけるだろう。
「雨だねえ、今日は。こういう日に喫茶店でゆったり読書って、最高だよね」
「ああ、本当に。なんなら少し寄っていくか? コーヒーの一杯くらいおごるよ」
「そうしたいんだけどごめん、今日は時間ないんだー」
このあとは寝子島へ来ているらしい
弟
と会う用事があるそうだ。待ち合わせまで間もないが、それでもそのわずかな時間のすき間を縫って声をかけてくれたことが、修にはこの上なく嬉しい。
あおいは手に提げた紙袋を、ん! と差しだした。
「NYAINで言ってたのはこれ。ちょっと味見してもらいたくって」
「いちごの桜もち、だったか。楽しみだよ。ありがとう」
「修先生のお眼鏡にかなえばいいんだけどねー」
あおいのつくったものならなんでも美味しい、というのは修にとってまぎれもない事実でありながら、あおいが求めているのは忌憚のないご意見ご感想というやつだろう。忍耐づよい修の手助けやアドバイスが功を奏して、壊滅的な料理下手だったあおいの腕前もこのところは上向いてきた。ような気がする。たとえそうでなくても乗りかかった船だ、料理の指南役を最後までまっとうすべきだろう。
すぐにも食べてしまいたいところだが、持ち帰っていただくことにする。
その後には少しばかり、話もはずんだ。星ヶ丘寮の修の自室を引き払うにあたって、ペットたちもしかるべき場所へ引っ越すこと。春からの新生活には、もっとも付き合いの長い猫のミルクを連れていくと決めたこと。寮の書棚いっぱいに収まっていた本たちを処分したからか妙にさみしく、今日はつい古書喫茶へ足を向けてしまったこと。他愛もない話題のひとつひとつにも、けらけらと声をあげて笑うあおいの軽やかさに、気安い距離感に、修の顔もほころぶ。
「あ、まずい。時間が! それじゃ、感想よろしくね!」
「分かった、まかせてくれ」
「ありがと! またね、修くん!」
あおいは手を振りながら慌ただしく、小走りに駆けていった。
手のひらに感じる紙袋のちょっとした重みは、あおいの想いがつまっているからだろうか。修の胸はじんわりとあたたかく満たされた。
「嫉妬した? ワット」
にんまりと柚春がのぞきこむと、しかしウォルターはすずしい顔。
「んー? なにがかなあ」
「僕がほかの男の子としゃべってたら、気にならない? 嫉妬しちゃったりするものじゃない?」
「さあねえ。そんなものかねえ」
「むう」
つれない彼はいつだってひょうひょうとして、寛容だ。大人の責任というものをわきまえてもいる。柚春が仮に別のだれかと急接近、ウォルターへイチャイチャを見せつけたとしても、その態度を崩すことはないのだろうか? もちろん一途な柚春はそんなことをするつもりもないのだが。
嫉妬もしてくれないとしたら、
(それはなんか、ヤだなあ……)
「まったく。あまりからかうもんじゃないよぉ? さもないと……」
耳元でささやかれて、背筋がぞくぞく。電流が走り抜けたかのよう。
「わ、ワット……!?」
「こまった子だねえ」
「ちょ、さもないとなに? さもないとどうなるの? なにされちゃうの!?」
「ははは」
答えてくれないままコーヒーをすすり、魚類図鑑のページなどめくる彼はやっぱり、すずしい顔。鼻歌まじりだ。そこが少々、くやしくはある……が、
(すこしは妬いてくれてるのかな?)
なんだかぴりりとした空気を、彼の横顔に感じないでもない。嫉妬だろうか、妬いているのだろうか?
柚春はふんすと鼻から息をついて、彼の隣へ。まだ降り続くしずかな雨音をBGMにしながら、しばし読書へふけった。
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担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年07月01日
参加申し込みの期限
2024年07月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年07月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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