「いやあ、降られちゃって。まいったまいった」
「いらっしゃい。おや、お前さん、確か……」
古書喫茶『思ひ出』にて。駆け込んできた濡れネズミなお客、傘をたたみ髪にまつわりつく水滴をはらった女性に、
柏村 文也は見覚えがあった。ふむ、と記憶を探り当てると、
「そうそう。近所の、ハセ書房のお嬢さん?」
「どーも、いや、今は『OLDLYNX(オールドリンクス)』つってね、わたしが店長やってまして。
馳 つるぎッス、ヨロシク」
同じ旧市街界隈の古書店同士だ。ふたりは握手をかわした。
文也を見つめたつるぎの目つきはぎょろりとして鋭いが、物腰は穏やかだ。きっと読書家が過ぎるのがたたって視力を落としてしまったクチだろう。猫背に羽織ったドテラはどうにも野暮ったいが、親近感をおぼえ文也は微笑んだ。
「外はいささか冷えただろう。とりあえず、熱いコーヒーでもどうかね」
「いただきまッス。あ、ついでにナンか軽食ももらえないッスか? 今朝はまだなにも食べてなくて」
「オーケー、じゃサンドイッチを」
初めて店を訪れた客はたいていおどろいて、書架の充実に目を輝かせる。同業者であってもそれは変わらないようだ。
「ここ、ずっと来てみたかったんッスよねえ。おほー、このラインナップ! こ、これ全部読んでいいんッスか? マジで?」
「もちろん。マジで」
「コーヒー飲みながらこの本たちを堪能できるなんて、ゼイタクすぎる……お兄さん、なかなか罪つくりなお人ッスなあ」
「ははは。ま、よかったら、これからもごひいきに頼むよ」
窓の外には春の雨。
木の芽時に降る雨はさまざまな感情を生み、その成長を助けることだろう。あらたな出会いが初春をいろどり、人生の機微を芽吹かせ、はぐくむことだろう。
墨谷幽です。よろしくお願いいたします~。
柏村 文也さん、ガイドにご登場いただきましてありがとうございます!
ご参加いただける際は、ガイドのイメージにこだわらず、ご自由にアクションをお書きくださいませ~。
このシナリオの概要
雨の一日を描くフリーシナリオです。
雨が降っているときなら、平日・休日、時間帯、場所やシチュエーションなどは、
自由にご指定いただいてかまいません。
このお話には、もうひとつのテーマがあります。
それは、『あらたな出会い』です。
PCさん同士はもちろん、既存のNPC・未登録NPCとも、
見知らぬ間柄やあまり話したことのない誰かと交流してみるのはいかがですか?
特にご指定がない場合は、ご参加いただいたPCさん同士で交流するシーンが描かれることがあります。
希望しない場合は、アクションにお書きください。
ふつうに雨の一日を過ごす様子を描くこともできます。
アクションは自由な発想でどうぞ!
NPCについて
登録済みのキャラクターでしたら誰でも登場可能です。
また、墨谷のシナリオに登場したNPCでしたら、登録・未登録問わず登場OKです。
ただし、不自然でないシチュエーションに限ります。登場が難しい場合もありますので、ご了承ください。
こんなNPCと絡んでみたい、なんてリクエストがありましたら、お気軽にご指定ください。
細かく指定もOKですし、マスターにおまかせもOK。
Xキャラクターも登場可能です。
口調などのキャラクター設定は、アクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
NPC・Xキャラともに、いつもとは違った肩書きや人物像を指定しても構いません。
以上になります。
それでは、ご参加お待ちしております~!