this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
木の芽雨にはぐくまれ
<< もどる
1
…
4
5
6
7
8
【雨後の空】
古書喫茶『思ひ出』
のひっそりとした立地にも、あたたかみある木造や店内のちょっとした飾りつけ、あるいは書架のならびやそこへぎっしりと収まる本たちの一冊一冊にいたるまで、すべては店主の理念やこだわりの体現だ。空間という演出、そこで過ごす心安らかな時間も、提供されるメニューの飾り気なさやシンプルさまでも、
柏村 文也
の人となりが発露した結果なのだ。
「でも、もすこしいろんなメニューも用意したらどッスか? わたし、パフェとか食べたいなあ」
「はっはっは」
「それは、こだわりだからあきらめてねの『はっはっは』なのか、それとも無理だからガマンしてねってイミなのか、どっちなんッスか?」
馳 つるぎ
の苦笑いに、答えが返ってくることはなかった。文也という人物はどうにも風や雲のようにつかみどころがなくて、今のスタイルを今後もつらぬくつもりなのかもしれないし、あるいは明日には新メニューがお品書きに加えられているのかもしれないが、そこのところは誰にも分からないのだった。
「まあ今のところパフェはないが、書物の充実には自信があるよ。読書を楽しんでもらえると嬉しいね」
「とか言いつつ、店主サンがカウンターで手芸にいそがしいのはどうなんッスかねえ……」
とはいえ、同じく旧市街で古書店を営むつるぎは早くも、『思ひ出』や文也の流儀に迎合しつつあるようだ。その後もしばし軽妙なおしゃべりをかわしてから、また寄らせてもらうッス~と言い残して帰っていった。またひとり常連客が増えたようで、ありがたいことだ。
うむ、とうなずきながらに文也はふたたび手芸にいそしむ。今編んでいるのは店内に飾るウォールタペストリーだ。木造の風合いに似合いそうな淡い色合いの糸が何本も絡みあい、複雑な模様を描き出してゆく。客に応対する必要のない時間は、そうして手なぐさみで暇をつぶすのもまた文也のスタイルであった。
店内に客はひとり。三十分ほど前か、ぐっしょりと濡れて駆け込んできた。長雨は降り続くようだから、雨宿りをさせてほしいと言ってきたので文也はもちろん、どうぞと答えた。
客足がにぶいのは雨のせい。さりとてそれが悪いとも思わないし、焦ることもない。ケ・セラ・セラ、風のふくまま雨の降るまま、すべては流れゆく川のごとくに、だ。
件の客は、没頭していた。来店してしばらくは時間を気にして何度かスマホをのぞいたりしたが、いまやそれもすっかり忘れていた。
古書のかもす特有のかおりに包まれていると、実に安らぐ。近くの足を運びやすい界隈に、こんな空間があったとは知らなかった。立ちのぼる紅茶のフレーバーも鼻をくすぐり、いっしょに注文したサンドイッチの味も好みだ。
(なかなかいいお店を見つけましたね)
志波 甲斐斗
の職業柄、適切な気分転換のタイミングや、根を詰めるあまり頭へ溜まりすぎた熱を放出できる場所というものは、これが案外重要だ。彼は陶芸家であり芸術家である。タスクをこなせばよいという仕事とちがってインスピレーションが重要だから、己のメンタルの管理を怠ればたちまち、成果ゼロ。死活問題なのだ。ある意味で自由、ある意味でシビアだが、ありがたくも甲斐斗の性分には合っているようだった。
そんなわけで良き気晴らしを求めて街へ出た先で、なんと傘が壊れてしまった。木の芽雨といったやさしい雫に打たれながらも、風邪をひいてはたまらないと駆け込んだのがこの『思ひ出』だった。
甲斐斗も読書をする。近頃は創作のなにか足がかりになればと美術史の考察本だとか、初心に帰って取り組むための入門書だとか、画家や陶芸家にとってのパトロンやミューズ、プライベートな実像に迫るストーリーなどなど、芸術にまつわる本ばかり手にとっていた。ここにもそういった書籍は多くあるようだが、今日ばかりはふだん読まないような本にふれてみるのも一興だろう。
(ふむ。推理小説ですか)
実写映画化されたこともあっただろうか、甲斐斗も見かけたことのある著名な一冊だ。それなりに分厚くページ数もあるが、この降り様のなか工房へ駆け戻っても、あまりいい仕事はできまい。ここはひとつ割り切って時間を有意義に使い、思うさまリフレッシュしていこうと決めた。これもまたプロの仕事の取り組み方というものだ。
(さて……)
紅茶の香りを楽しみ、サンドイッチをほおばり、奇妙かつ繊細なギミックや濃密な描写が織りなす文学の迷宮へと深くもぐり込んだ。
雨音が上がったと気づく頃、甲斐斗の手にした一冊はページの半ばほどに差しかかっていたが、これが困ったことに、物語はまさに佳境へと突入していくところだ。
どうしたものかと甲斐斗はすこし悩み、やがて店主へ声をかけた。
「すみません。紅茶とサンドイッチを、もうワンセットお願いします」
「ああ、分かったよ。すこし待っていておくれ」
片や文也のほうはといえば、タペストリーづくりがちょうどひと段落をみて、自分用にコーヒーでも淹れようかとしていた矢先だった。話し相手もあればなおよい。
「それ。いいねえ」
「え?」
きょとんとした甲斐斗の胸元を文也は指差した。陶器のペンダントがそこには揺れていた。
「どこで買ったものだね? いやなに、店の飾りつけを考えていてね。なかなか良い出来だから、そういった類の品が手に入るところがあるなら教えてもらえればとね」
「ああ。いえ、これは僕がつくったものでして」
「ほう!」
文也の瞳がかがやいた。単に品物の目利きだけではなくて、目の前の客になにやら、興味深いものを感じとったようだ。
「それはすごい。しかしアマチュアの作品とは思えないほど、良く出来ている」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。僕は……」
せっかくなので、甲斐斗は名刺を取り出して手渡した。ビジネスの一環などというつもりはなく、単にてっとり早いと思ったからだ。
「シーサイドタウンの工房で、こういったものを作ってまして。陶芸家なんです」
「ほう、ほう! 陶芸家、なるほどねえ」
しきりにうなずきながら、文也は甲斐斗の前へ紅茶とサンドイッチ、それに皿へ乗せた何枚かのクッキーを置いた。
怪訝そうに首をかしげた甲斐斗へ、
「私が焼いたものだよ。こんな天気だろう? ふと、いつもと違ったことに挑戦したくなったんだが、これが自分でもびっくりするほどうまくでき上がってね。誰かにおすそわけしたくなったというわけ。それにいい品を見せてもらったから、そのお礼だよ」
「なるほど、じゃあ遠慮なく。いただきます」
さっくりと、軽やかな食感。プレーンと珈琲味があり、どちらも紅茶によく合う。もちろん読書にも。
美味しいです、と素直な感想を告げると文也は少年のように明るく笑った。
「ま、お近づきの印ってことで。小生がそちらの工房へお邪魔したときには、よい品をみつくろってもらえれば助かるよ」
「ええ、いつでも来てください。そのかわりといってはナンですけど」
糸目を細めて、甲斐斗はしおり紐をはさんだ文庫本を軽くふってみせた。
「おすすめの本やシリーズなどあれば、教えてもらえますか」
「あるある、あるとも! いくらだって教えるともさ」
本の楽園を標榜する、店主自慢の空間だ。甲斐斗をのめり込ませるような新しい物語の扉が、これからいくつも開くことだろう。
店先へ出ると、文也は雨上がりのすがすがしい空気に大きくひとつ深呼吸をし、ガラじゃあないなと自嘲気味に笑みをこぼす。
しかし時には雨もいい。おかげで今日はいつもとすこし客層が違って、なかには常連となってくれそうな者も何人もおとずれてくれた。
「雨が客を連れてきてくれたようなものだな。お、そうだ、雨の日限定でなにかメニューを用意するというのはどうだ? ああ、雨にまつわる作品の特集コーナーなんてのも……」
文也にもまたいつもと趣向の異なる考えが生まれ、新鮮な思いだ。
「上がったねー」
「あ、見て見て、虹!」
大学生だろうか、ういういしいふたり組が店先をとおりがかったところで、これまたいつもと違ったことをためしてみたくなった。雨のせいだろうか。
「やあやあ、やつがれは古書喫茶を営んでいる者でね、すぐそこ、そうそこの店さ。雨上がりのさわやかな午後に、オリジナルのコーヒーと珠玉の一冊を耽読するひと時はいかがかな?」
雨がつないだ、あたらしいお客がまたひとり、ふたり。
<< もどる
1
…
4
5
6
7
8
このページにイラストを設定する
あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。『木の芽雨にはぐくまれ』のリアクションをお届けいたします。
雨にまつわるシナリオ、何度か書かせていただいております。
雨は嫌いじゃないのです。傘も差さずに飛びだしていくほどではないけれど、ちょっとくらいなら降られてもいいかな? と思ったりします。
ただ、夏のむし暑い雨模様はカンベンしてほしいですね。皆さま、熱中症にはお気をつけて……。
それでは、今回もご参加いただきましてありがとうございました。
次のシナリオも、どうぞよろしくお願いいたします。
お疲れさまでしたー!
↑ページトップに戻る
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
木の芽雨にはぐくまれ
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年07月01日
参加申し込みの期限
2024年07月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年07月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!