星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～｜リアクション

星降る夜とホットスナック　～かろやかに、サックリと～

　ろっこん『チェシャ猫』で、人の姿に猫の耳を持つ獣人姿となった響タルトは、黒髪の猫耳少女、お三夜大明神と侍従たる狛猫が、若侍姿でがこちらへ来るのを見つけ、シオ・レイゼルオークの服を引っ張った。
「こんばんは、お三夜さま。素敵な景色ですね」
「おぉ、シオ殿か。よくぞ参られたにゃ。今宵は楽しんで欲しいにゃ」
「狛一之助さん、狛二右衛門さんもこんばんは。本日はよろしくお願いします」
「はっ。こちらこそよろしくお願いします」
「お三夜さまは、あなたのお越しを楽しみにしておりましたぞ」
　シオの挨拶が終わるのを待って、タルトも口を開く。
「お三夜さま、こんばんは。シオさんの友達のタルトです♪」
「おぉ！　さすがはシオ殿にゃ。このような可愛らしいお耳の持ち主がご友人とは、見る目があるにゃ」
「そ、そんなぁ……お三夜さまも素敵なお耳ですよ」
　タルトは、お三夜さまに褒められたシオの顔が緩みそうになり……慌てて引き締まったのを目撃した。
　ついでに「しっかり、私！　お三夜さまたちをおもてなしするの！」と小さく呟いたのも聞こえた。
「辺りはお星さまばかりで、なんだか天の川みたい。わくわくするね！」
　タルトがそう言うと、シオの足下で降ってきた星が立ち止まり、頂点のトンガリをシオの顔に向かって曲げている。
「……見上げてくる星のかわいさっ！　ぐっ、膝つきそう」
　まぁ、星には顔が無いのだが――シオには見上げていると分かったらしい。

◆

「ほら！　星が降ってきてるんだ！　すっげーだろ！」
「きれいだね、ラッセル。みんなあの湖に向かってるみたい」
　ろっこん『ピヨコ変化』で梟に変身した桜井ラッセルは、風の精晴月と共に夜間飛行を楽しんでいた。
　なぜか今日は星がくるりと回って、一直線に三夜湖に向かって降っていくようだ。
「じゃ、ちょっと着地してみっか」
「うん！」
　空を自由に飛べる２人は、すぐさま湖に向かい、人気の無い所で着地。人の姿に戻ったラッセルが見たのは、数多の屋台に目を輝かせる晴月の姿。
「すごーい！　なんか、美味しそうなものと……星がいっぱい！」
「なんだこれ、祭りか？　って、星も動いてるし」
　祭り囃子と食べ物の匂い、地面で動き回る星。寝子島のフシギには慣れっこになっているラッセルでも、さすがに少し驚いた。
「ラッセル、こっち！　何か食べようよー！」
「おう！」
　一足先に屋台に向かう晴月に返事をして、ラッセルはポケットの財布を確認したのだった。

このページにイラストを設定する