幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い｜リアクション

幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い

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　ウツボカズラは、ゴーストを捕食するための最も重要な器官のはずだ。
　しかしウィルは怒るでもなく、かといって、体の一部を破壊された苦痛に喘ぐわけでもなく。
　むしろまるで意欲がなくなかったかのように、重くなったハサミを力なくぶら下げてじっとするばかりだった。
　炎の翼も勢いを失くし、まるで火がうまくつかない時のガスコンロみたいに、弱弱しい火を瞬かせるばかり。
　残っていたお化け兵すら、蚊取り線香にやられた蚊のように落ちて動かなくなった。
　不可解に思いながらも、決着のチャンスを逃すまいと攻勢に――、

「ま、待ってみんな！」
　しかし、小枝がそこに待ったをかけた。
「どうして？　このまま止めを刺さないと、再封印してもまた同じことが起こるかもしれない」
　疑問を呈する夏朝の声は、あくまで冷静だった。奇跡でも起こらない限り、それしか手はないはずだと思えばこそだ。
「そうかも……そうかもしれないけどっ！」
　小さな拳をきゅっと握り締めて、息を吸い込み。小枝は夏朝へ、そして皆へと訴えかけた。
「もしかしたら、ウィルはウツボカズラのせいで暴れてたかもしれないの！」
　疑問の色を浮かべる皆に、深く考えない性質なりに必死に考えたことを言葉にしていく。
　前に封印された時も、ウィルはやはりウツボカズラを破壊されたら大人しくなったという。それは、ウツボカズラがウィルを凶暴化させていたせいなんじゃないだろうか。
　それにウツボカズラのツルが、尻尾に食い込んでいたのだって変だ。ウツボカズラは元々ウィルの体の一部だったのではなく、そうやって彼に取りついたんじゃないだろうか。
　だからウィルはいくらウツボカズラに攻撃されても、痛がる素振りさえ見せなかったんじゃないか。
「……つまり？」
　アリサの問いかけに、小枝は一度ごくんと息を呑みこんでから、再び口を開いた。
　つまり、何が言いたいのかというと。
　ウツボカズラこそがゴーストを捕食する危険な存在で、元凶で、ウィルは取りつかれていただけなのだとしたら。
「いままでみたいに、ウィルさんとも仲良くできないのかなぁって」
　だって、
「メモワさんとも、ピエロさんたちとも仲良くなれたでしょう？　カルカドロさんとは仲間にはなれなかったけど、やっつけて、それで終わりじゃなかったよね」
　せっかくここまで来たんだから、物語はハッピーエンドでないとダメだと思う。
　そしてこの旅という物語のハッピーエンドは、ただ最後の敵を倒して、それで終わりではない気がするのだ。

「……それを言われると、わたくしたちは弱いかしら。ねぇ、ピエロ？」
　メモワの言葉に、ピエロはこくこくとうなずいた。特にピエロに至っては、悪霊や怨霊の類ですらあったわけで。
「でも、ウィルが元々凶暴なお化けだったら？　だからウツボカズラが取りつくのに選んだんだったらどうする？」
「そ、それは……」
　アリサの言葉を否定する材料はなく、小枝が押し黙る。
　その時だった。