幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い｜リアクション

幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い

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　ハサミを引き抜いたウィルが、炎の翼をはためかせた。
「飛ぶ気か！？　――させっか！」
　隼の姿へと変身したラッセルが、ウィルの目の前へ飛び出す。目前でホバリングして注意を引き付けた後、右へ左へ飛びまわって、少しでも意識を釘付けにしようとした。
　飛ぶ気が失せたらしいウィルが、鬱陶しそうにハサミを振るう。
　ギリギリまで引き付けて回避したラッセルは、そのままウィルの背後へと回りこもうとした。しかしウィルの口元に緑の炎を見て、それどころではなくなってしまう。
「またブレスかよ！　来るぞ！」

「っ！」
　ラッセルの呼びかけに真っ先に動いたのは、夏朝だった。周囲の仲間たちへねこシールを射出し、ろっこんを発動。可能な限り体重を軽くさせることで、回避を支援する。
（みんなを逃がさないと……！）
　主戦場からやや距離を置いて戦っていた海は、退避する仲間たちの行く手の空間へと幾つもの線を引いた。発動した『アクセラレイトライン』が、皆を加速させる。
　次の瞬間、緑の炎が波となって駆け抜けた。

「っ、ぶねえ……！」
「ラッセルくん、危ないよ！」
　自身もなんとか炎を回避したラッセルは、タルトの言葉で迫りくる左のハサミの刃に気づく。
　しかし彼はそこで、
（今度こそやってやる！）
　距離を取るのではなく、あえて刃の前へと躍り出た。
　当然、斬られようというのではない。ほんの少しでも狂えば刃に触れるほどの速度で、ぐるりと弧を描く軌道で逃げる。
　目指すのは、ただ一点。すなわち、ウィル自身の尻尾である。
　そして、目の前に尻尾が――ウツボカズラが迫る。
（今だっ！）
　急上昇。
　しかしウィルはその急激な動きに、すんでのところで追随した。ハサミを振るう手の速度が落ち、巨体に満ちる力が慣性をねじ伏せようと――
「させない！」
　夏朝がろっこんを発動するために必要なシールは、山肌に突き刺さった時に貼りついてそのままだ。
　『重く軽く』が発動し、突如として軽くなったハサミにウィルは慣性を殺しそこなう。
（そのまま切れてっ！）
　さらに、海がハサミを加速させた。
　軽くなったうえに加速したハサミの勢いは、ウィルが一瞬バランスを崩す程。
　そしてその一瞬が、決定的な好機を生む。
　尾とウツボカズラを繋げるツルに、ハサミの刃が深々と食い込んだのだ。
　その瞬間、夏朝はろっこんを再度発動。ハサミの刃を、限界まで重くさせる！
　自らの重みに引きずられたハサミは、より一層深々とツルへ食い込み――そしてブツリと音をさせて、ついにはツルを断ち切った。
　尻尾から切り離されたウツボカズラが、音を立てて落下する。
　すかさず肉迫する、戦士とピエロ。二人の刃が、ボロボロになっていたウツボカズラの表面を断ち割った。
　その瞬間、真っ二つになったウツボカズラから、光があふれ出す。それは囚われ、今この瞬間まで吸収され続けていたゴースト達の姿だ。
「おお、同胞たちよ……！」
　天に昇って花咲くように散らばっていく光の中に、喰われた仲間の魂を見たのだろう。
　戦いの最中であることを忘れて声をあげた戦士に、隣へ降りてきてろっこんを解いたラッセルが声をかける。
「よかったな、戦士」
「貴公らのおかげだ。後は――」
「ああ、決着をつけるだけだ！」