幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い｜リアクション

幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い

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　新たなお化け兵のうちの数体が、タルトの方へと向かってくる。
「よっ、と！」
　くるりと身を捻って炎をかわし、カボチャ頭を踏んづけてタルトは跳躍。くるくるとまわる勢いで斬り捨てて、
「っ！」
　風を貫くような音を立て、ウィルのハサミが水平に突き出された。
　即座に身を翻すタルトだが、その瞬間を狙って放たれたお化け兵の炎が、回避のタイミングを狂わせる。
　そしてウィルの切り返したハサミが、タルトの右のわき腹を捉えた。
　体が弓なりにしなるほどの衝撃に、視界いっぱいに火花が散る。
　吹き飛ばされたタルトの体を受け止めたのは、変身しラッセル含む数羽の鳥たちだった。
「あたた……、ありがとね」
「響、動けるか？　運んだ方がよかったら言ってくれ！」
「ありがと。じゃあ、途中までお願いしていいかな？」
「任せろ！」
　タルトの肩を掴み、ラッセルの鷲は飛び立つ。

　その頃ラグドール号の右舷には、大砲による迎撃をくぐり抜けたお化け兵たちが迫っていた。
「クリストファー、君はそこから離れるな。こいつらの相手は僕がする」

　二刀のカトラスを抜き放ち、サキリは斬空赤刃を発動した。
　まずは一体、今しもラグドール号に乗り上げようとしていた敵の眼前へ転移。一刀のもと斬り捨てる。
　再発動、右へ跳ぶ。一体を右手のカトラスで背後から両断、その隣のお化け兵を構えたナイフごと、左のカトラスで袈裟懸けに切り裂く。
「ギァッ！」
　お化け兵たちが四方を取り囲み、緑の炎を放つ。
　即座に再転移、背後に居た個体のさらに背後へ回りこみ、気づかれるより先に輪切りにする。残骸を蹴って目くらましにして、さらに跳んだ。
　直後、ひときわ強烈な緑が目を焼いた。
「ッ！」
　それがウィルの放った炎だと気づくよりも先に、直感的に空間転移。すかさず殺到するお化け兵たちの得物が肌に触れる寸前、ギリギリまで引き付けてから再転移。
　勢い余ったお化け兵たちがお互いを貫き、辛うじて同士討ちを免れた個体もサキリの一閃で斬り捨てられた。

　ウィルのハサミをかい潜ったラッセルが、タルトへ呼びかける。
「っぶねえ……！　響、無事か？」
「うん！　――っと、ここで大丈夫！」
「わかった、無茶はすんじゃねえぞ！」
　できるだけ勢いを残したまま、ラッセルはタルトの肩を離す。
　彼女は器用にその勢いを利用して、ウィルの目の前まで一気に近づいた。

「ほらほら、こっちだよ♪」
　わざとらしく鳴き声をあげ、そのまま降下。
　炎を吐くには体に近過ぎる距離に、ウィルは右のハサミを突き出した。
　タルトが右へ跳んで避ければ、ハサミもまたそれを追う。そして不意に、タルトは高度を上げた。
　眼下を右のハサミが空ぶり、しかし即座に左のハサミが繰り出される。
　その切っ先をギリギリまで引き付け、振り抜く風圧さえ利用するようにして、タルトは勢いよく飛んで切っ先をかわした。
　そして空を切った左のハサミの切っ先が、山の斜面へ斜めに突き刺さる。
「みんなー！　今だよー！！」
　あらん限りの大声が、千載一遇の好機を告げた。