幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い｜リアクション

幽霊猫とお化けの国：最終幕　旅の終わりと最後の戦い

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　ツルを警戒しながら、紫苑は尻尾のウツボカズラを観察する。
（切断しやすそうな部分は……あら？）
　ウツボカズラから、尻尾に向かってツルが伸びていた。巻き付く恰好になっているのかと思えば、それも少し違うように思える。
　ツルの先が、尻尾に食い込んでいるようだった。
　違和感を覚えつつも、尾に食い込むツルの中でも細いものを狙って大鎌を振るう。
（硬いですね）
　刃が通らないとまではいかないが、一度や二度では斬れそうにない。
　再びツルに捕捉される前に、いったん離れることにした。
（そうだ、食い込んだツルのこともお知らせしておかないと）

　鳥たちにかく乱されたお化け兵を、アリサが真下に潜り込んで銃撃した。
　次に狙いを定めつつウツボカズラへと接近する彼女に、三体のお化け兵たちが迫る。口の奥に瞬く緑に、アリサはすぐさま横跳びに距離を取った。
　そうして一発目を避け、二発目は上昇して回避。真下からの三発目を回避しようとしたところへ、一体目のフォークと二体目のナイフが迫る。回避ルートを潰す動きだ。
　マズいと思ったその時、
「ギッ！？」
　ふわりと伸びた髪が三体目の体を絡めとった。メモワだ。
「助かったわ！」
　この隙にアリサが下方へ離脱、剣を振りかぶった瞬間に髪の拘束が解かれる。
「トドメはお任せかしら？」
　返事の代わりに振るった剣が、お化け兵を一刀両断する。
　アリサはすかさず上空へ反転、びっくり箱を思いきり投げつけた。

　飛び出した刃物は二体にかわされるが、海がそれらを『アクセラレイトライン』で急加速。不意打ち同然に襲いかかった刃物に二体が倒れると、
（まだまだ行くよ！）
　彼らの得物２セットを加速させ、さらに攻撃を重ねる。
「後ろ、来てっぞ！」
　ラッセルの呼びかけに振り向けば、後方に口を開けたお化け兵の姿。
　自分自身の前に線を引いて加速し、火球を回避。だが反撃するより先に二発目が、
「させっか！」
　ラッセルが飛びかかる。鷲の爪がお化け兵を切り裂いた隙に、さらに数羽の鳥が襲いかかった。
　そうしてお化け兵が武器を取り落としたのを見逃さず、海は『アクセラレイトライン』を発動。
　加速させた武器による攻撃を連鎖させ、ウィルへの道を阻むお化け兵たちの守りに穴を空ける。

（守りが手薄になった！　あそこからなら！）
　すかさず、夏朝はろっこんを発動した。自重を限界まで軽くして、お化け兵たちの守りにできた穴からウィルへと接近する。
　さらに振り返り、仲間たちへとねこシールを射出。シールの貼りついた仲間たちにもろっこんを発動、軽くすることで接近を支援する。

　当然追いかけるお化け兵たちの背後から、鳥たちが襲いかかる。鋭い爪やくちばしを繰り出し、お化け兵が夏朝たちを追いかけるのを阻む。
「鳥さんたち、無茶はしないで！」
　鳥が鳴いた。まるで、俺たちだけで戦っているわけではないとでも言うように。
　それに応えるように、ドールたちの髪がカボチャを捉えた。
「いいから、あなたたちはウィルの方へ向かいなさいな！」
「メモワさん、ありがとう……！」
　メモワに礼を言い、夏朝はウィルのもとへ向かう。
　その時、ウィルの炎の翼がぶるりと震えた。新たなお化け兵たちが生み出され、ウィルへ向かう面々の行く手を阻もうとする。
　しかし先頭の数体が、どこからともなく放たれた銃弾に撃ち抜かれた。その動揺の隙をついて、夏朝たちはお化け兵を強行突破する。

　森林地帯に身を隠していた紫苑は、突き進む仲間たちの姿を視線で追いかけた。
　やはりウツボカズラの知覚能力は別格なのだろう、お化け兵たちは彼女がどこに居るのか、いやそもそもどこから撃たれたのかすらわからないでいるようだ。
　それにしてもと、火を噴こうとして撃ち抜かれ、中から丸焼けになったお化け兵を見つめる。
（丸焼きのカボチャさん、美味しそうですね……）
　あちこち動きまわっているせいか、お腹が空いてきた気がする。

（ちょっとだけ体を貸してね）

　ろっこんを発動して小鳥に乗り移った小枝が、ウツボカズラへと急ぐ。
　記録によれば、前回もやはりウツボカズラを破壊、そして突然大人しくなった隙をついてなんとか封印したということらしい。
　ウツボカズラを破壊しきることはできなかったようだが、問題はそこではない。
　破壊した後、ウィルが突然大人しくなったことこそが問題だった。
（巫部さんが見た『尻尾に食い込むツル』が本当なら、もしかしたら……）　
　ウツボカズラは、ウィルに取りついてゴーストを捕食させている「何か」なのではないか。小枝はそう思ったのだ。
　けれど皆に呼びかけるには、まだ情報が足りなくて。だから少しでも近づいて、観察しなければならなかった。

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