【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　真新しいマラソンウェアを着た梓智依子はスタートラインへ向かう。高い身長とモデル並みの体形で詰め掛けた人々から応援の声が飛ぶ。
　智依子は照れたように口元で笑う。グラウンドの周辺には小さな子供もいた。愛娘の顔が頭に浮かび、それとなく目で探してみる。
　――これだけ人がいると、そう簡単に見つけられないわね。
　諦めて視線をスタートラインに向けると幼い声が飛んできた。
「ママー、かっこいい！」
　瞬間、左斜めの方向に目をやる。
　祖父に横向きで抱えられた楓が大きく手を振った。同じように智依子が返すと、がんばってね！　と笑顔で言われた。
　人目もあって智依子は力瘤を作るようなポーズで応えた。
　――上位は狙ってないけど、力を貰えたような気がする。
　弾むような足取りで参加者の中に加わった。
　そこには同級生の姿があった。
「智依子さんも出るんだね。一緒に走る？」
「現役の陸上選手についていける気がしないんだけど」
「まあ、そうなるかー」
「でも、誘ってくれてありがとう。今回は自分のペースで走るよ」
「わかった。お互い、上位を目指して頑張ろう」
　声を掛けた女子は笑顔で離れていった。
　一人になった智依子はスタートラインに目を向けた。
　――応援にきてくれた楓にカッコイイ姿を見せたいよね。
　切れ長の目に強い意志を覗かせた。