【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　仙藤蒼はウィンドブレーカーにハーフパンツを合わせた格好で参加した。
「まさか、私が出ることになるなんて思わなかったよ」
「勝負事はなんでも楽しいよね」
　強引に誘った宮内詠美は他人事のように言った。
「まあ、身体を動かすことは嫌いじゃないからいいけど」
　蒼は運営から渡されたクロッカスを手の中でクルクルと回す。目にした詠美は蘊蓄を披露する。
「白いクロッカスの花言葉は『青春の喜び』だよ。今回のマラソンにぴったりと思わない？」
「そうなんだ。じゃあ、詠美が貰った花の意味は」
「私はサザンカだから『困難に打ち勝つ』だね。マラソンで上位を狙えるかも」
　不敵な笑みで負けず嫌いの片鱗を覗かせる。
　同様に花を手にした仙藤紫はどこか浮かない顔で佇む。気付いた蒼はさりげなく近づいた。
「お姉ちゃん、具合でも悪いの？」
「そんなことはないわ。ただ、この可憐な花を見ていて、しんみりした気分になって」
「それ、サイネリアですよね。青だから花言葉は『悩み多き恋』ですね」
　詠美は溌溂とした声で語った。
「そうね」
　紫は小さな一言を返して青い小さな花に目を落とす。
　――誓一は元カレで私の恋は終わったわ。今更、悩む必要はないのにあの時のことが未だに頭にちらついてモヤモヤする。
　マラソンで全力を出して、すっきりすればいいのだけれど。
　沈んだ目で小さな溜め息を吐いた。