【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

　光村日向はランニング姿でいた。入念なストレッチは冬の寒さを退けた。
　今は脱力した状態で軽い跳躍を繰り返す。目は見えないゴールを見据える。
　――マタ大に推薦入学が決まっていても手は抜かない。全力で一位を目指して走るつもりだ。
　視線は足元に向かう。そこにはピンクのシクラメンの花が置いてあった。大会関係者から配られたものではなく、可愛い妹からプレゼントされた。
　――花言葉は確か、『憧れ』だったかな。そんな兄になれるように頑張らないと。
　跳躍を止めてシクラメンを手に取る。自身が着ていた陸上部のユニフォームに目を落とすと断片的な過去が蘇ってきた。
　――いろいろあったよな。家族や陸上部の仲間。それに体育科の皆がいてくれたおかげで、今の僕がいる。
　だから負けられない。絆のバトンは最終走者の僕に渡された。皆に報いるためにも華々しい一位を狙う。
　目に力がみなぎる中、シクラメンを見つめる。
　――君と一番にゴールテープを切って、一緒に家に帰ろう。花瓶に生けて共に喜びの余韻に浸るのも、いいよね。
　気負い過ぎず、愚直に一番を目指す。
　高校生、最後のマラソン大会に日向は臨もうとしていた。