【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

マラソン大会前
　街頭が点灯する中、三折部朝衣は役場に戻らず直帰となった。慣れない外回りの仕事とあって足取りは重い。
　シーサイドタウンにあるアパートが見えてきた。硬い表情が柔らかくなる。
「ただいま」
　ドアを開けた先に声を掛けると、お帰り、と声が掛かる。香しい匂いに釣られるように朝衣はパンプスを脱いでリビングに直行した。
「夕飯の用意はできているよ」
　同棲中の婚約者、住沢遥人は目を細めた。にっこり笑った朝衣はちらりとテーブルを見やる。
　褐色のビーフシチューが目に入る。まろやかな黄色はコーンスープ。温野菜のサラダは色味が良く、ワイングラスは赤紫の色で満たされていた。洋食レストランのシェフらしく卒がない。
「夕飯の前に前菜が欲しいわ」
「それならメルローが」
　遥人の声を朝衣は唇で塞いだ。十秒のキスを経て一言。
「心の方の前菜ね」
「理解したよ。冷める前に食べようか」
「どちらを？」
　朝衣は遥人に胸を押し付けた。
「取り敢えず、夕飯で」
「わかったわ。実はあたしもお腹ぺこぺこ」
　朝衣は笑って離れた。

　夕飯での話題はマラソン大会が中心で主に朝衣の愚痴で占められた。
「毎回のことなんだけど、リッカルド町長のこの手の企画は、大抵、あたしを巻き込む。慣れない仕事もあって最近は残業続きよ。その努力の甲斐あって開催の目途が立ったと思ったら、今度はいきなりランナーの話を押し付けられて、本当に困る。趣味がサーフィンだからマラソンも得意なんて、ある訳ないのに」
「シェフもマラソンは得意ではないけどね」
「え、もしかして一緒に走ってくれる？」
「共にゴールを目指そう」
　その言葉に結婚の文字が頭に浮かび、頑張るわ、と朝衣は笑顔で言葉を返した。

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