【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！｜リアクション

【マラソン大会】お花がいっぱい♪ フラワーマラソン！

マラソン大会当日
　寝子島高校の第一グラウンドに多くの参加者が集まる。本番直前とあってストレッチを行う姿が至る所で見られた。緊張を吹き飛ばすような会話で盛り上がる集団もいた。花に因んだ大会に相応しく、各々が生花を手にして華やかな時を過ごす。
　羽生碧南はバスケットボールのユニフォームでマラソンに挑む。木天蓼大学に特待生として入学が決まっていることもあって、今日の空のように晴れやかな表情を浮かべていた。
　――これが私の勝負服。気合の入り方が違うわ。
　赤いランニングシャツに同色のハーフパンツの組み合わせは胸に秘めた闘志を表しているようだった。それでいて胸元のゼッケンの紐に絡めた黄色いスイセンは目にした者に爽やかな印象を与える。
　――花言葉は確か、『愛にこたえて』だったかな。
　それとなく視線を観客の方に向ける。別の方向にも目をやった。
　――応援に来ていると思うんだけど。もしかしてサプライズで参加者にいたりして。
　細身の天然パーマを見かける度に目が止まる。そして決まって数秒で深い溜め息へと変わった。
「碧南さん」
　呼び掛けられて即座に後ろを振り返る。瞬間、笑顔となって自ら駆け寄った。
「先輩、来てくれて嬉しいです」
「今日を楽しみにしていたからね。あと僕のことも名前で呼んで欲しいな」
　鷹取洋二はクールを気取りながらも横目で言った。
「……わかりました、洋二さん」
「自分から頼んだことだけど、少し照れるね」
「実は私も」
　二人はまともに目を合わせられず、俯いた姿ではにかんだ。
　その時、冷たい風が吹いた。参加者から悲鳴に近い声が上がる。
　洋二は瞬時に行動を起こす。着ていたコートを脱いで碧南の肩に被せた。
「身体を冷やすとよくないからね」
「でも、洋二さんが」
「僕は平気だよ。逆に嬉しいくらいさ」
　洋二は自分の身体を抱き締めるような格好となった。
「僕はナルシストだ。この世で、一番、自分が好きだった。その僕が君を優先して行動した。この意味がわかるかい」
「私が、洋二さんの、一番になった？」
「そうだよ。僕の最愛の人になった」
「……コートのおかげで、身体が熱くなってきました」
「僕も同じだよ。この熱い気持ちを全力のエールに変えるつもりさ」
「私、頑張ります」
「僕も応援を頑張るよ」
　二人は自然な笑顔となって会話を楽しんだ。