九夜山雪まつり｜リアクション

九夜山雪まつり

　稲積柚春は、ウォルター・Bとともに九夜山にやってきました。
（前回はワットに残念な思いをさせちゃった。今回は万全な体調で、無理せず休憩を挟みながら楽しもう！）
　そう思い、体調は万全に整えてきています。
「冬キャン体験は夜からだから、昼は雪景色を満喫しよう」
　イベント会場で雪上を歩くためのスノーシューを借りて、雪山にチャレンジです。
「ワット、見て！　あそこに動物の足跡が」
「ほんとだ、何の動物かなぁ」
「キツネとか？　テンとかもいるんだっけ」
「そうだねぇ、クマじゃなさそうだ」
「危険な動物の足跡はないと思うけど……ワットの苦手なヘビだって、冬眠しているはずだしね。野生動物ってどんなのが九夜山に住んでいるんだろう？」
　柚春の言葉にウォルターは肩をすくめました。
「柚春だってヘビが大好きってわけじゃないだろう？　そうだね、クマの他にも……狼がいるかも？」
　怖い顔をして見せるウォルターですが、柚春は動じません。
「ニホンオオカミは絶滅してるよね。野犬とかならともかく……あっ、雪の下に小さな芽があるよ」
「おっと、踏まないようにしなきゃね」
　雪下の植物の様子を観察したりしながら、二人は山道を登っていきます。
「雪を見てると春なんて遠そうだけど、小さな芽が芽吹いてるんだね。春が来たら、またひとつ大人になれるんだ。楽しみ！」
　４月１日生まれの柚春は嬉しそうに言うのでした。

「頂上が近づいてきたね」
「それじゃ、今度はショートスキーに履き替えて降りようかぁ」
「うん」
「疲れてないかい？」
「平気。体もあったまってるし」
「スキー場じゃないから、スピードは出さずにいくよぉ」
「うん、普通の長板だと滑るだけになっちゃうけどこっちだと途中で登ったりもできるって聞いたから」
　ウォルターが先に立ち、安全な場所を選んで滑りだしました。
　柚春はウォルターの背中を見ながらついていきます。
（意外と曲がったりは難しいかも……ワットがペースを合わせてくれてるけど、しっかりしなきゃ）
　肩に力が入る柚春にウォルターが声をかけます。
「無理しないでよぉ。夜はこれからなんだからね」
「そうだね。夜は寝かせないから」
　眠ったらもったいないもの、と無邪気に思う柚春でした。

　充実した昼の時間を過ごし、二人は満足してキャンプ場に戻っていきました。
「いい汗かいたらお腹すいちゃった。食事の準備をしよう。ポトフでいいかな？」
「いいね」
　柚春は材料を切り始め、ウォルターは火を起こすのでした。

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