九夜山雪まつり｜リアクション

九夜山雪まつり

　冬の寒さも何のその、羽生碧南のテンションは上がりっぱなしでした。
「木天蓼大学への特待生入学が決まっていて、今は入学準備に追われている……けど、洋二さんに今回のイベントを誘われたら、もう行かないわけないじゃない！」
　去年の暮れ、ずっと片想いだった鷹取洋二先輩とついに両想いになりました。　
「今回は冬山だから、デートのコーデに困ることはないわね」
　センスに自信がないわけではなく、高身長女子に着られる服は限られているのです。
「うん、冬山用の装いだけど、結構シュッとした感じになってる」
　姿見で自分の姿をチェックした碧南は胸を撫でおろしたのでした。

　雪道をできる限り急ぎ、碧南は九夜山の洋二の元にたどり着きました。
「洋二さん、お待たせしました……！」
「忙しいのによく来てくれたね、碧南さん」　
「いいえ、誘ってもらえて嬉しいです！　雪像作りコンテスト、何を作るんですか？」
　木天蓼大学芸術学部の洋二の専攻は音楽ですが、洋二は絵も得意だし、きっとすごい作品になるに違いない、と碧南は楽しみにしていました。
「それなんだけど、手伝ってもらってもいいかな？　スコップで雪を削り出したり、形を整えたりするんだけど」
「もちろんです！　体力ならありますから任せてください」
「ありがとう、助かるよ。それじゃまず、僕が雪を積むから、固めてもらえるかな」
「はい！」
　線が引かれた中に洋二が雪を積み、碧南がそれをスコップで固めます。
　それは息の合った共同作業でした。
（雪像を作るなんて結構体力いるよね。それを考えると、アートって意外に体力勝負なんだな……）
　などと思っているうちに、洋二が息を切らせ始めました。
「洋二さん、私代わります」
「すまないねえ……」
　碧南にとってはまだまだ軽いウォーミングアップ。
　軽快に雪を積み上げていきます。
「すごいよ碧南さん、助かった」
　尊敬の目で碧南を見つめる洋二に、
「お役に立てて良かったです。これからが先輩の仕事ですよ」
　と碧南は微笑むのでした。　

　積み上げた雪柱を、洋二は手際よく削っていきます。
「碧南さん、ちょっとポーズを取ってもらってもいいかな」
「えっ、私ですか？　どんな？」
　モデル立ちってどんなだっけ、と一瞬考えた碧南ですが。
　洋二が指定したポーズはそれとは全然違うものでした。
「こう、ですか？」
「そう。うん、イメージが湧いてきた。行けそうだよ」　
　洋二は雪を削り、細かいところにも手を入れて、だんだん作品が形になっていきました。
（素敵。どう評価されるか……優勝だといいな）

　ついに作品が完成しました。
　美しい少女の雪像は、バスケットボールを手に今まさにシュートを決めようとしているところでした。
「すごいです。今にも動き出しそう……」
「君のおかげだよ。ありがとう」
（私の雪像を作ってくれるなんて……ゲームだってこんな展開見たことないわ）
　碧南は熱い思いでいっぱいになるのでした。
　