芽森菜々緒の迷走｜リアクション

芽森菜々緒の迷走

　無事にスライムキングを討伐した攻略班の面々は、意気揚々に宝物庫へ向かう。
　だが、既に扉が開いている事に彼らは気が付いた。
　しかも中から呻き声が聞こえてくる……。
　面々は武器を構えて、一気に中へ踏み込んだ。
　すると、そこには……！

「なるほど、これがミミックですか。あまり美味しくないですね。得られる遺伝子情報量も物足りません。テケリ・リ」
「今度は……ミミック！？　やめてー！！　そんなトコ舐めない、でっ……やん、ぁあんっ！　らめぇぇ……っ！　そんなのテストに出ないよぉ！？」

　大量の宝箱の山の中で、ミミックを次から次へと丸呑みしてゆく手蹴と、上半身裸のまま下半身をミミックに噛みつかれている水上がいた。
　手蹴は本物の宝箱は無視して、むしろミミックだけを直感で開けまくっている。捕食者の勘だろうか。
　そして水上はミミックプレイという未知なるジャンルの扉を開け放ってしまい、顔を紅潮させて全身を震わせていた。

「うわー！　ミミックを食べてる全裸のお姉さんと、ミミックに食べられて性癖を開拓しちゃってる全裸の女の子がー！　みんな、見ちゃ駄目だー！！」
　エッチなのはいけない！とばかりに、桜井が取り乱す。
　タルトも見知った後輩のあられもない姿に、慌てて自分の羽織っていたマントを水上の上半身に纏わせてからミミックをデッキブラシで破壊した。
「大変！　桜ちゃんが変態さんになっちゃう！　ミミックめーっ！　許さないぞー！」
　猫獣人化しているせいか、タルトも野生の勘でミミックだけをデッキブラシで殴り潰しまくってゆく。
「俺の槍とか風で遠くから開けれねーかな？　ものは試しだな！　行くぜ！　風翼緑槍（シルフィーナ）！」
　桜井も前方に旋風を発射してミミックを無理矢理に叩き起こすと、素早い突きで仕留めていった。
　そんな中、真白は念願の宝物庫に興奮気味だ。
「思っていた以上に多くない？　この部屋だけでもひのふの……うん、これ絶対普通の宝箱じゃないよねー。片っ端から殴っていった方が安全かも？」
　真白のハンマーに星の力が宿る！
「ってことでドーン！」
　真白はハンマーでまとめて宝箱を横薙ぎにホームラン！
「成程、これを全部斬ればいいんだな？　海、援護してくれるか？」
『まかせて、刀』
「私も手伝うわね」
　海が虹色の軌跡を描いた箇所へ、刀と菜々緒が剣を添わせて高速斬撃を繰り出す！
　ミミックを次々と強引に斬り捨てて中身を改めてゆく面々に、ラピスの表情が凍り付いた。
　そして解体されたミミックの残骸を、シオがニコニコしながら採取していった。
　本当は新聞紙などで呼吸の有無を確かめて判別しようと思ったのだが、同行者が思いのほか脳筋だらけで、その必要がなくなったので楽ちんだった。
「タルトさん、知ってましたか？　ミミックは分類上、貝類だそうですよ？」
「シオさん、それ、本当？　斬新な発想だね！　という事は、あの全裸のお姉さんみたいに食べられるのかな？？」
　驚くタルトは、生で齧り付く手蹴をまじまじと見つめてしまう。
「流石に、生食は無理かも……」
「おや、ミミックを食べますか？　それでは、食べやすいようにスライスして差し上げましょう」
　手蹴はおもむろに触手ブレードでミミックを三枚におろすと、中身のピンク色の肉をタルトへ差し出した。
「あなたも一口どうぞ。ポン酢もありますよ。ポン酢は万能調味料です。テケリ・リ、テケリ・リ」
「う、うん、いただきます。……嘘ぉ？　意外とポン酢と合う！？」
「ええ、ポン酢最高。あなたもポン酢最高と叫びなさい」
　誇らしげに断言する手蹴。
　タルトはこの日、異世界メシの一端に触れ、新たなグルメのレパートリーが広がった。

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