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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
あなたがここにいてほしい
息が弾む。
あんなに寒かったのにもう汗がにじむほどだ。
走った。解理は全力で走った。白い閃光のように走った。学校の体育祭でだって、こんなに速くは走れなかった。
今回の一件は、証拠がありながら今日まで何の手立ても打てなかった僕にも責任がある。
もはや未然に防ぐなんてことは叶わないかもだけど、せめて貴子さんを助けられる可能性があるなら手をつくすのは当然と言えるさ。
「くそっ」
解理は毒づいた。走って走って星ヶ丘まで来てしまった。あのペースで走れば、もう貴子に追いついていてもおかしくはないはずだ。なのに貴子の姿は見えない。どこにもだ。
うっかり追い抜いちゃった、はずはない。
貴子さんの今日の服装は頭に焼き付いてる。たとえ反対車線にいたとしても、見落とすなんてありえない。
だとすると……。
解理の膝は震えていた。
もう、狼の巣に貴子さんは――。
どこだ、どこだよ貴子さん！？
普段「貴子ニウム摂取～」なんて言って彼女にじゃれついているのに、肝心の場面になると貴子の気配すら感じ取れない。犬みたいに嗅覚があったらとか、オーラの色が見えたらとかありえない想像もしてみるが気休めにもならなかった。
思い出せ。
思い出すんだ。貴子さんが言っていたことを。
「十輪田先輩のマンションに行くの」
めざすはマンションだ。ああもう！ でもこのあたり高級マンションばっかじゃないか！
「サークルのみんなで集まって」
そうだ。複数人が集まってパーティできるくらいの広さだ。ワンルームや2DKとかじゃ無理！ よし少し絞れたぞ。
解理はスマホを取り出して周囲の地図を表示させる。不動産情報サイトもひらき、広めのマンションであたりをつけていった。ありがたいことに候補がしぼられた。購入にせよ家賃にせよちょっとびっくりするくらいの価格帯ばかりだったが、十輪田のチャラさを考えると親の財力でなんとかしている可能性は高い。
そうだ十輪田って男、けっこう凝ったパーマしてたよな。スパイラルパーマって言うの？ 僕、十輪田の実物見たこと二回しかないけど、二回とも雑誌モデルみたいにカッチカチに決まってた。
偶然かもしれない。しかしマメにメンテナンスしていることに賭けてみたい。
だからすぐそばに美容室があるマンションで検索をかけてみる……これでどうだ！
必死で検索すると、一階に高級ヘアサロンのあるマンションに行き当たった。近くだ。美容室は『Aubry』と書いて「オブリ」と読むようだ。フランス人女性が経営している。料金は高い。
お願いお願いお願い……。
祈るような気持ちで解理は店のサイトを開いた。ブログを読む。文章は無視だ。写真を流し見して。
ビンゴッ！
解理は叫びそうになった。
すぐに見つかった。『常連のお客様がヘアモデルをつとめてくれました』みたいな記事だ。そこにヘラつく笑みを見せているのは十輪田黄金その人だったのである。名前こそ『Tさん』になっているが、この生理的不快感をもよおす顔は見まちがうはずがない。しかも「店が入っているマンションにお住まいなんですよ。」なる一文つきだ。せいぜいちらっと写っている写真があればよかった。それくらい藁にもすがる気持ちで調べ、とうとう突き止めたのだ。
解理はすぐにマンションを見つけ出した。足を止めた位置からすこし引き返したあたりだった。郵便受けを探して四階に『トワダ・コーポレーション』なる名称を発見する。
コーポレーション？
十輪田の父親がやっている会社とか？ 会社の所有物として登録しているところに住んでいるのかもしれない。いずれにせよ十輪田の名は他にない。ここでまちがいないだろう。
マンションはオートロックだった。しかし解理とってさしたる問題ではない。
僕には『ろっこん』がある。寝子島が与えてくれた奇跡の力、ここで使わないでいつ使うんだ――！
解理は貴子のことを思い浮かべる。
貴子さん貴子さん貴子さん貴子さん……。
いつだって憧れの先輩だった貴子さん。高校時代はおかしなTシャツを着たりして抜けていたのに、大学デビューでぐっと大人っぽく素敵に羽化した貴子さん。でも僕にとってはいつだって、厳しくも優しい先輩の貴子さん。
解理の力は恋愛感情がベースだ。自身の心に、素直にしたがわねば真の力は発揮できない。
だから解理は閉じられていた心の扉を開いた。いままであえて見ないようにしてきた扉だ。
嫌われたって構わない。
貴子さんは、貴子さんは……。
僕にとって大切な「フツウ」、そのものなんだ！ だから絶対に取り戻させてもらう！
灼熱の赤に近いピンクの破壊光線が解理の手のひらからほとばしった。
光線の威力は絶大、監視カメラを瞬時にして霧に変え、オートロックの錠前も飴みたいに溶かしたのである。
待ってて貴子さん！
解理はマンションに飛び込むと、四階めざし階段を一段飛ばしで駆け上がった。
あんなに寒かったのにもう汗がにじむほどだ。
走った。解理は全力で走った。白い閃光のように走った。学校の体育祭でだって、こんなに速くは走れなかった。
今回の一件は、証拠がありながら今日まで何の手立ても打てなかった僕にも責任がある。
もはや未然に防ぐなんてことは叶わないかもだけど、せめて貴子さんを助けられる可能性があるなら手をつくすのは当然と言えるさ。
「くそっ」
解理は毒づいた。走って走って星ヶ丘まで来てしまった。あのペースで走れば、もう貴子に追いついていてもおかしくはないはずだ。なのに貴子の姿は見えない。どこにもだ。
うっかり追い抜いちゃった、はずはない。
貴子さんの今日の服装は頭に焼き付いてる。たとえ反対車線にいたとしても、見落とすなんてありえない。
だとすると……。
解理の膝は震えていた。
もう、狼の巣に貴子さんは――。
どこだ、どこだよ貴子さん！？
普段「貴子ニウム摂取～」なんて言って彼女にじゃれついているのに、肝心の場面になると貴子の気配すら感じ取れない。犬みたいに嗅覚があったらとか、オーラの色が見えたらとかありえない想像もしてみるが気休めにもならなかった。
思い出せ。
思い出すんだ。貴子さんが言っていたことを。
「十輪田先輩のマンションに行くの」
めざすはマンションだ。ああもう！ でもこのあたり高級マンションばっかじゃないか！
「サークルのみんなで集まって」
そうだ。複数人が集まってパーティできるくらいの広さだ。ワンルームや2DKとかじゃ無理！ よし少し絞れたぞ。
解理はスマホを取り出して周囲の地図を表示させる。不動産情報サイトもひらき、広めのマンションであたりをつけていった。ありがたいことに候補がしぼられた。購入にせよ家賃にせよちょっとびっくりするくらいの価格帯ばかりだったが、十輪田のチャラさを考えると親の財力でなんとかしている可能性は高い。
そうだ十輪田って男、けっこう凝ったパーマしてたよな。スパイラルパーマって言うの？ 僕、十輪田の実物見たこと二回しかないけど、二回とも雑誌モデルみたいにカッチカチに決まってた。
偶然かもしれない。しかしマメにメンテナンスしていることに賭けてみたい。
だからすぐそばに美容室があるマンションで検索をかけてみる……これでどうだ！
必死で検索すると、一階に高級ヘアサロンのあるマンションに行き当たった。近くだ。美容室は『Aubry』と書いて「オブリ」と読むようだ。フランス人女性が経営している。料金は高い。
お願いお願いお願い……。
祈るような気持ちで解理は店のサイトを開いた。ブログを読む。文章は無視だ。写真を流し見して。
ビンゴッ！
解理は叫びそうになった。
すぐに見つかった。『常連のお客様がヘアモデルをつとめてくれました』みたいな記事だ。そこにヘラつく笑みを見せているのは十輪田黄金その人だったのである。名前こそ『Tさん』になっているが、この生理的不快感をもよおす顔は見まちがうはずがない。しかも「店が入っているマンションにお住まいなんですよ。」なる一文つきだ。せいぜいちらっと写っている写真があればよかった。それくらい藁にもすがる気持ちで調べ、とうとう突き止めたのだ。
解理はすぐにマンションを見つけ出した。足を止めた位置からすこし引き返したあたりだった。郵便受けを探して四階に『トワダ・コーポレーション』なる名称を発見する。
コーポレーション？
十輪田の父親がやっている会社とか？ 会社の所有物として登録しているところに住んでいるのかもしれない。いずれにせよ十輪田の名は他にない。ここでまちがいないだろう。
マンションはオートロックだった。しかし解理とってさしたる問題ではない。
僕には『ろっこん』がある。寝子島が与えてくれた奇跡の力、ここで使わないでいつ使うんだ――！
解理は貴子のことを思い浮かべる。
貴子さん貴子さん貴子さん貴子さん……。
いつだって憧れの先輩だった貴子さん。高校時代はおかしなTシャツを着たりして抜けていたのに、大学デビューでぐっと大人っぽく素敵に羽化した貴子さん。でも僕にとってはいつだって、厳しくも優しい先輩の貴子さん。
解理の力は恋愛感情がベースだ。自身の心に、素直にしたがわねば真の力は発揮できない。
だから解理は閉じられていた心の扉を開いた。いままであえて見ないようにしてきた扉だ。
嫌われたって構わない。
貴子さんは、貴子さんは……。
僕にとって大切な「フツウ」、そのものなんだ！ だから絶対に取り戻させてもらう！
灼熱の赤に近いピンクの破壊光線が解理の手のひらからほとばしった。
光線の威力は絶大、監視カメラを瞬時にして霧に変え、オートロックの錠前も飴みたいに溶かしたのである。
待ってて貴子さん！
解理はマンションに飛び込むと、四階めざし階段を一段飛ばしで駆け上がった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年11月12日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年11月19日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年11月19日 11時00分
