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携帯戦記カプセルギア 第八話「Re:play」
その間、水槻 清恋は吐前 亀二郎と共に奔走した。
任意同行の男から聞けた情報と子供たちから聞いた情報を照らし合わし、過去はどのように事件が処理されていたのかを徹底的に洗い出して追っていく。
そのひとつひとつは小さな事件であったり、証言が幼い子供という理由で長く保留にされていた物で、特別目立った被害もない。これなら、どれほどロクでもない事実が浮かび上がっても、この前まで従事していた事件捜査と比べたらマシだろう。
そう思った清恋は、今度はカプセルギアから少し離れてユグドラシルの取引先に着目した。ここまで大企業であれば、大なり小なりトラブルや根も葉もない疑惑はあるはず。手広い業務内容から不審な点を見つけ出すには骨が折れそうだが、その代わり表沙汰になっていない裏の顔がユグドラシルには見え隠れしていると気付いた。
裏付けとまではいかないが、世良 海唯の証言や海堂の自白も、大げさに受け取るなら人身売買や洗脳と言った非人道的な内容がユグドラシルでは当たり前に行われていることになる。
（けど……ユグドラシルへ踏み込むには決定打が足りない、か）
それはそうだ。もしつけいる隙があったなら、こうして未処理扱いにされていない。仮に小さな突破口があったとしても、世界的に有名な大企業はそれを塞ぐくらい造作もないだろう。
――しかし、その穴の開いた瞬間であれば？
煙草ケースに伸ばしかけた手で、清恋は手帳を取り出した。ユグドラシルが宣言した１週間後……その日に何かを仕掛けてくると考えて、海堂と愛光堂との話し合いを設定してある。
（バトルはあの子たちに任せるとして……私も負けていられないわね）
眉間をぐりぐりと抑えて苦笑すると、清恋は再び資料に目を通し始めた。
数日後、意を決した海堂は外出許可を取り愛光堂へと赴いた。
どういう選択をするにしろ、この場所にやってこなくては前にも後ろにも進めない。出迎えた愛光 秀光に車椅子を押されながら、A.I.C.O.のマザーが待つ部屋へと向かう。
「あの悪趣味な格好はやめたのか？」
「酷いな。今やCAPGEAR MEIJINは我が社のマスコットでもあるんだぞ？」
顔を合わせたときには少し気まずそうにしていた２人も、歩み進めるうちに軽口を言い合えるような柔らかな空気が流れてきた。それは、久しぶりに顔を合わせて話の切り出し方がわからなかっただけかもしれないし、後ろを歩いていた曖浜 瑠樹が、ラピちゃんを抱きしめて微笑んでいたからかもしれない。
その影響は仙藤 紫と仙藤 蒼にも出ていて、清恋から事件の続報を聞くことに緊張していたはずなのに、どんな結果を聞かされても大丈夫だと大らかに構えている。
そして部屋に辿り着くと、海堂は皆が緊張して見守る中でマザーを起動させた。
リアスクリーンに少女の姿が映り、ぱあっと顔を輝かせる。
『おと……っ！ ええと、わたしはA.I.C.O.。あなたとカプセルギアを繋ぐ、サポート係ですっ！』
けれどすぐに周囲の人に気付いたのか、笑顔はそのままにA.I.C.O.としての挨拶を述べる。その一連の仕草だけでも、A.I.C.O.が感情を持っているというのは明白だった。
「この子は亜依子を……私の娘をイメージして作られている。もっとも、意図的ではないんだ。会話の資料になればと見せていたホームビデオなんかで学習をされてしまってね」
カプセルギアのような、子供に夢を与える玩具を作りたかったと言う海堂の顔は切なげだ。A.I.C.O.のメインシステムとして思い入れはあるが、それ以上に育ってしまった今、企業で扱う範疇を超えてしまっていることの自覚はある。
愛光堂のセキュリティや企業としての力は未熟で、守り抜ける保証はない。個人などもってのほかだ。
「これ以上、大人の都合で亜依子を縛り付けたくない。……自由に、させてやってくれないか」
それはつまり、A.I.C.O.の消滅を意図しているのだろうか。A.I.C.O.が修繕されれば、亜依子はいなくなってしまうのだろうか。
カプセルギアは救いたいけれど、そのためには海堂の大切な物を奪うことになる。
瑠樹はぎゅむぎゅむとラピちゃんを抱え、みんなの心が和めば癒やして助けられないのかと、必死に考えた。何があっても涙だけは流すまいと、ふわふわのラピちゃんに顔を埋めるようにして堪えている。
そんな姿を見て、稲積 柚春はおずおずと聞いてみた。
「あの……それって、亜依子ちゃんにどうしたいか聞いてみたんですか？」
「そっ、そうだぜ海堂さん！ いきなり自由だって野放しにされたって困ると思うぞ」
続く桜井 ラッセルも、海堂が１番大人の都合を押しつけているではないかと、リアスクリーンに映る亜依子へ微笑み同意を求める。
……けれど、見た目こそ子供でも、高機能ＡＩだ。海堂が守るために別れを選択しようとしてくれたことは理解できるらしく、まるで叱られた子供のようにしょぼくれて、何かを言おうと躊躇う姿は幼いのに。
『わたしはカプセルギアとみんなを繋ぐシステムです』
弱々しく微笑む顔は、どことなく海堂と雰囲気が似ている気がした。
任意同行の男から聞けた情報と子供たちから聞いた情報を照らし合わし、過去はどのように事件が処理されていたのかを徹底的に洗い出して追っていく。
そのひとつひとつは小さな事件であったり、証言が幼い子供という理由で長く保留にされていた物で、特別目立った被害もない。これなら、どれほどロクでもない事実が浮かび上がっても、この前まで従事していた事件捜査と比べたらマシだろう。
そう思った清恋は、今度はカプセルギアから少し離れてユグドラシルの取引先に着目した。ここまで大企業であれば、大なり小なりトラブルや根も葉もない疑惑はあるはず。手広い業務内容から不審な点を見つけ出すには骨が折れそうだが、その代わり表沙汰になっていない裏の顔がユグドラシルには見え隠れしていると気付いた。
裏付けとまではいかないが、世良 海唯の証言や海堂の自白も、大げさに受け取るなら人身売買や洗脳と言った非人道的な内容がユグドラシルでは当たり前に行われていることになる。
（けど……ユグドラシルへ踏み込むには決定打が足りない、か）
それはそうだ。もしつけいる隙があったなら、こうして未処理扱いにされていない。仮に小さな突破口があったとしても、世界的に有名な大企業はそれを塞ぐくらい造作もないだろう。
――しかし、その穴の開いた瞬間であれば？
煙草ケースに伸ばしかけた手で、清恋は手帳を取り出した。ユグドラシルが宣言した１週間後……その日に何かを仕掛けてくると考えて、海堂と愛光堂との話し合いを設定してある。
（バトルはあの子たちに任せるとして……私も負けていられないわね）
眉間をぐりぐりと抑えて苦笑すると、清恋は再び資料に目を通し始めた。
数日後、意を決した海堂は外出許可を取り愛光堂へと赴いた。
どういう選択をするにしろ、この場所にやってこなくては前にも後ろにも進めない。出迎えた愛光 秀光に車椅子を押されながら、A.I.C.O.のマザーが待つ部屋へと向かう。
「あの悪趣味な格好はやめたのか？」
「酷いな。今やCAPGEAR MEIJINは我が社のマスコットでもあるんだぞ？」
顔を合わせたときには少し気まずそうにしていた２人も、歩み進めるうちに軽口を言い合えるような柔らかな空気が流れてきた。それは、久しぶりに顔を合わせて話の切り出し方がわからなかっただけかもしれないし、後ろを歩いていた曖浜 瑠樹が、ラピちゃんを抱きしめて微笑んでいたからかもしれない。
その影響は仙藤 紫と仙藤 蒼にも出ていて、清恋から事件の続報を聞くことに緊張していたはずなのに、どんな結果を聞かされても大丈夫だと大らかに構えている。
そして部屋に辿り着くと、海堂は皆が緊張して見守る中でマザーを起動させた。
リアスクリーンに少女の姿が映り、ぱあっと顔を輝かせる。
『おと……っ！ ええと、わたしはA.I.C.O.。あなたとカプセルギアを繋ぐ、サポート係ですっ！』
けれどすぐに周囲の人に気付いたのか、笑顔はそのままにA.I.C.O.としての挨拶を述べる。その一連の仕草だけでも、A.I.C.O.が感情を持っているというのは明白だった。
「この子は亜依子を……私の娘をイメージして作られている。もっとも、意図的ではないんだ。会話の資料になればと見せていたホームビデオなんかで学習をされてしまってね」
カプセルギアのような、子供に夢を与える玩具を作りたかったと言う海堂の顔は切なげだ。A.I.C.O.のメインシステムとして思い入れはあるが、それ以上に育ってしまった今、企業で扱う範疇を超えてしまっていることの自覚はある。
愛光堂のセキュリティや企業としての力は未熟で、守り抜ける保証はない。個人などもってのほかだ。
「これ以上、大人の都合で亜依子を縛り付けたくない。……自由に、させてやってくれないか」
それはつまり、A.I.C.O.の消滅を意図しているのだろうか。A.I.C.O.が修繕されれば、亜依子はいなくなってしまうのだろうか。
カプセルギアは救いたいけれど、そのためには海堂の大切な物を奪うことになる。
瑠樹はぎゅむぎゅむとラピちゃんを抱え、みんなの心が和めば癒やして助けられないのかと、必死に考えた。何があっても涙だけは流すまいと、ふわふわのラピちゃんに顔を埋めるようにして堪えている。
そんな姿を見て、稲積 柚春はおずおずと聞いてみた。
「あの……それって、亜依子ちゃんにどうしたいか聞いてみたんですか？」
「そっ、そうだぜ海堂さん！ いきなり自由だって野放しにされたって困ると思うぞ」
続く桜井 ラッセルも、海堂が１番大人の都合を押しつけているではないかと、リアスクリーンに映る亜依子へ微笑み同意を求める。
……けれど、見た目こそ子供でも、高機能ＡＩだ。海堂が守るために別れを選択しようとしてくれたことは理解できるらしく、まるで叱られた子供のようにしょぼくれて、何かを言おうと躊躇う姿は幼いのに。
『わたしはカプセルギアとみんなを繋ぐシステムです』
弱々しく微笑む顔は、どことなく海堂と雰囲気が似ている気がした。
シナリオ
シナリオデータ
- 担当ゲームマスター
- 前回シナリオ
- シナリオタイプ（らっポ）
-
- シルバーシナリオ（150）
- グループ参加
-
- 3人まで
- シナリオジャンル
-
- 日常
- バトル
- ＮＰＣ交流
- 定員
-
- 15人
- 参加キャラクター数
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2023年12月16日
- 参加申し込みの期限
-
- 2023年12月23日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2023年12月23日 11時00分
