カプセルギアは、ただの玩具になった。
いや、元より高機能ではあっても玩具には違いなかったのだけど、
先日の事件を切っ掛けにギアは多数の制限を受け、売りにしていた機能の殆どが使えなくなってしまっている。
表向きは
『大型メンテナンス』だ。
安全性が確認されるまで、A.I.C.O.はオフラインモードとして提供されることとなり、音声操作やバトルの補助など、主力であったAIによる機能は単語受付程度が精々というほどまで操作性は格段に下がった。
手動での操作はできるものの、バトルで展開していたエフェクトも最小限。今まで迫力あり格好良かったものが、突然わけもわからず地味なラジコンとなった……これが、ただの玩具と揶揄される由縁だ。
はぁ、と溜息を吐く
白石 龍樹は
ムテンを手の中で転がした。
大人にアプリを見てもらっても、このメンテナンスがいつまで続くのかわからない。
小学校への持ち込みは相変わらず禁止のままで、急いで家に取りに戻って児童公園へやって来ても、ギアで遊んでいる仲間はいない日だってあるほどだ。
「このまま、ムテンのカッコイイところを見られないなんて……あってたまるか!」
ぎゅっとムテンを握りしめ、何かできないかと周囲を伺う。
すると、数日前からこの公園でよく見かける
カロデがベンチに座っている姿が目に入った。
片手はクローバーの刻印されたタブレットを持ち、もう片方の手は脇に置いたギアを指先で撫でている。カロデはというと、端末をじっと眺めながら何かを考え込んでいるようだった。
あの事件直後、彼女がギアマスターを煽るようにして勝負を持ちかけた話は、一部の子供達には噂話として伝わっている。けれど同時に、ギアを粗末にしない相手にならば友好的だという話も広まっていた。
今の龍樹には、カロデがどんな人柄か判断する術はない。だから、思いきって声をかけた。
「おねーさん! 悩み事の解決なら、
寝子島少年探偵団におまかせだぜっ」
「アハハ。探偵くんたぁ、心強いっすね。じゃあ、事件のことはどこまでご存知で?」
一般的に認知されているのは、
カプセルギアによって傷害事件が起きたということ。
その後、アプリシステムに同様の危険性は無いとしながら、システム元の見直しのために大型メンテナンスを行うことになり、その終了日は未定となっている。
しかし一部のギアマスターによる調査の結果、真実に近づいた者もいるらしい。といっても、現場に居合わせてない者からすれば、それはまだ噂話の域を出ない。
「確か……
プロフェッサーKが自分でそう指示したって話は聞いたけど」
何かとギアマスターを試したりすることの多かった彼が、再び何かやったところで疑問はない。
今回も彼からの挑戦ならば、受けて立つまでだと龍樹は闘志を燃やしている。
「そう。海堂は――
意図的にイメージダウンを謀ったみたいっすね」
カロデが海堂に呼ばれたのも、それが理由だ。
何かしらカプセルギアやギアマスターに恨みを持つ者を集め、その悪意を存分に振るって欲しいと言った。ギアのイメージダウンを行うための作戦であれば、当時ギアマスターに恨みのあったカロデには反論する理由などない。
しかし今になって、海堂の言動が妙に引っかかる。
「あの時、確かに言ったんすよ。
『これでA.I.C.O.は自由だ』って」
そりゃあギアが見向きもされなくなれば、そのシステムを司るA.I.C.O.はお役御免だろう。けれど、イメージダウンは諸刃の剣だ。自由と引き換えに世の中から消されてしまう可能性だって否めない。
海堂の言う『自由』とは、いったい何を指しているのだろうか。
「難しいな……ギアのイメージは悪くしたかったけど、ギアを悪者にしたいんじゃなかった、ってことか?」
「恐らくは。だから、海堂の目的さえわかれば……ギアを戻すための交渉ができるかもしれないってことっす」
どういった改善をされるにしても、開発者の1人である海堂が大きな発言権を持つのは確かだ。
龍樹とカロデは、ギアをただの玩具にさせたくない同志を集めて海堂の見舞いへ行くことにした。
白い髪を靡かせた、
儚げな少女。
耳福池のほとりに座り、水鳥でも眺めているわけでもなく。待ち人が来ず憂いているわけでもなく。
どこか感情の読めない――いや、抜け落ちてしまったかのように無表情な少女は、4体のギアと共に次の命令を待っていた。
いつもはユグドラシルの本社、それも奥の奥にある
子供部屋から出ることもない。
必要最低限の日用品が置かれることもあれば、可愛らしい物で飾り付けられることもある部屋。それがどんな有様になっても、彼女は興味を示さなかった。
ただ、
誰かと通信をするときは『嬉しそうに遊べ』と命令されるので、そのように従うこともある。
一体何の意味があるのかと考えることはない。
不満も疑念もない指示に、異を唱える感情すら持ち合わせていないからだ。
そんな彼女にとって、世の中の人間は2種類しかいない。
自分に指示を出来る人間か、出来ない人間か。だから本来は、この問いかけにも振り向かない予定だった。
「お前……っ! またギアに何かしに来たんじゃないだろうな!?」
早くも
スターライトナイトで戦闘態勢を取る
源 竜世は、過去に彼女と対峙したことを思い出す。
ギアを壊してまわっていたことだって許しがたいのに、今度はギアがのびのび遊べなくなってしまった。
せっかちな正義感から遅れはとらないとばかりに睨み据えるも、彼女は竜世を一瞥だけすると再び湖面へと視線を戻した。
以前一緒に居た全身赤ずくめの男も言っていたが、本当に命令以外では動かないようだ。悔しいが、このまま睨み合っていてもどうにもならないだろう。
「……ごめん。今回もお前のせいだなんて決めつけたのは悪かった」
タイミング悪く出逢ってしまったこともあり、頭に血が上っていたとは思う。でも、何も言わなければわかる物もわからない――そう懸命に竜世は伝えるのだけれど。結局、彼女は一言も発することはなかった。
「……ってことがあってさ」
せっかく広く人目につかない場所でスターライトナイトと遊ぼうと思っていたのに。そうぶすくれる竜世は、模型店の前で会った
牧 雪人に愚痴を零した。
以前その不思議な少女と雪人は海外のユグドラシル本社で対峙している。確かに、このタイミングで渦中の寝子島に姿を現したというのは妙だと思う。
「やっぱり事件にはユグドラシルが関わっていると見るべきか……」
それとも、単に隙をついてきただけなのか。不確かな情報ばかりだが、このまま様子見というわけにもいかないだろう。
「もう1度そこへ行って、関係者が現れるまで待ってみるか?」
「そうだな、安全のために複数人で行動して……場合によっては大人に保護を頼んでもいいね」
前回も調べて貰ったが、
海堂 洋子に再調査を頼めば何らかの情報が出てくるかもしれない。そうすれば、頑なに口を開かない少女から聞き出せることもあるはずだ。
『大型メンテナンス』の切っ掛けを与えたのは海堂で間違いない。
しかし、彼がそうしなければならなかった理由が明らかにならない以上、いつまでもメンテナンスとお茶を濁すわけにはいかないだろう。
大人には大人の理由がある。でも、子供には子供のやり方がある。
「やってやろうぜ! オレたちのカプセルギアを取り戻すために!」
ニッと笑う竜世に釣られ、雪人も微笑む。
勝つまで、勝ち取るまで。何度だって挑んでやると拳を突き合わせた。
カプセルギアの復活をかけてのバトルと、関係者救出を行うシナリオです!
カプセルギアとは?
『携帯戦記カプセルギア』とは、頭や腕、足などを組み替えてカスタマイズできる、全高10cm程度の小さなロボットのこと!
スマートフォンなどにインストールした専用アプリで、ラジコンのように自由に動かすことができます。
詳しくは、以下の『カプセルギアとは』をご覧ください。
→ 『携帯戦記カプセルギアとは』
7話の出来事まとめ
■7話からの変更点『携帯戦記カプセルギア』シリーズは、参加ギアマスターの年齢制限が撤廃されることになりました。
これからギアと出逢う方、ベテランの方、もちろん種族に至るまで制限はございません!
ギアを持たずに事件の真相を探るなど、ギアマスター以外の参加も可能です。
※但し、ギアを持ち、専用アプリ『A.I.C.O.』を使用している方と得られる情報に差が出る場合もございます。
そちらだけはご留意ください。
■7話での結果
『A.I.C.O.』のメインシステムはオフラインモードになっている
カプセルギア特有の高機能AIやエフェクトなどの演出は使えなくなっています。
回復までの間、アプリは基本的に手動操作のみとなります。普通のラジコン程度とお考えください。
(簡単な単語での音声操作は可能ですが、意図した通りに動くとは限りません)
小・中学校でのカプセルギア禁止
現在も、カプセルギアを校内に持ち込むことが禁止されています。
校外で遊ぶ分には制限されていませんが、一部大人の目が厳しくなっていることもあります。
※7話の個別コメントで情報を入手した方へ
今回新たに参加するお友達へ、情報の事前共有ができます。
ただし、それらを「ねこったー」など不特定多数の閲覧ができる場で発言した場合、
情報によってはシナリオにマイナス影響を及ぼす物があります。
偶然会話を耳にした、などはセーフです。
ともだち設定やGAを組む必要はありませんが、取り扱いには注意をしましょう。
概要
■海堂(プロフェッサーK)の回復意識不明で入院中でしたが、会話が可能なレベルまで回復しています。
事件当時のこと、思惑などを聞くことが可能です。
但し、そのためには彼自身の不安を払拭している必要があります。
■クー(白髪の少女)の来襲
カプギア破壊配信事件のときに寝子島に居た少女。普段はユグドラシル本社の子供部屋に居ます。
現在は指示待ちのようで、耳福池のほとりに1人です。
容易には会話もままなりませんが『ある単語』に反応します。
目的
今回の主目的、行動先は3つ。【1】~【2】のどちらか1ヵ所と、別日となる【★】の計2ヵ所に向かうことができます。
※ こちらのシナリオでは、GAを組んでいなくても同じ場所にいるメンバーと連携する描写が含まれます ※
ソロでの立ち回りや交流制限をしたい場合は【場所番号(記号)-Z】と記載をお願い致します。
より密接な描写を希望される場合は、通常通りGAを組んでください。
【1】海堂(プロフェッサーK)のお見舞いに行き、事件について問い質す
お見舞いにはカロデが同行します。入院先を知らなくても大丈夫です。
海堂はある理由から『A.I.C.O.のイメージダウン』をしなければなりませんでした。
この問題を解決するには、よくお見舞いに来ているというスペードのリングをした少女が鍵を握っており、
ユグドラシルとの対決が行われそうです。
バトルは病院敷地内の公園で行われ、カロデは味方に付きますが、ギアの制限があり1体しか操作できません。
ユグドラシルは、海堂に愛光堂を辞めて戻ってくるよう交渉をしていました。
今までの出来事でおわかりの通り、まっとうな企業ではありません。
海堂以外にも、ユグドラシルに従うほかない人がいそうです。
※PL情報
こちらで入手できるのは下記2点の情報です。
・海堂が事件を起こした理由、A.I.C.O.への思い入れ
・なぜユグドラシルの元にクーがいるのか
【2】雪人の呼びかけに応じ、クーと合流する
福耳池のほとりにいる少女、クーから目的を聞き出します。
ただし、彼女との会話には何かとっかかりがないと成立しないようです。
とっかかりの入手条件は、『スペードのリングをした少女から聞き出す』です。
そのためには【1】のバトルで勝利を収める必要があり、
仲間からの情報が届くまで、バトルが発生しても耐え凌ぐ必要があります。
バトルの際、クーのギアも制限を受けているため、四神をモチーフにした4体のうち2体を同時に扱います。
※PL情報
こちらで入手できるのは下記2点の情報です。
・ユグドラシルの事件への関与、今後の目的。
・クーが感情を取り戻す方法。
【★】愛光堂にてA.I.C.O.を修復する
CAPGEAR MEIJIN(愛光 秀光)と海堂による、話し合いの場が設けられました。
皆さんが【1~2】の情報を持ち寄ることで、海堂の心を変えることができそうです。
A.I.C.O.の修復をかけて、彼の不安を全て払拭し、カプセルギア復活に働きかけましょう!
しかし、それをよく思わない乱入者が現れそうです。
海堂の不安が払拭されている場合は、この場にいる全員のギアは制限が解除されます。思う存分戦いましょう!
主要NPC
・プロフェッサーK(海堂)行動場所【1】【★】
カプセルギア開発した研究者の1人。
A.I.C.O.の名付け親で、メインシステムの育成者でもあります。
ユグドラシルだけでなく、愛光堂にも悩まされており、今回の事件を起こすことになりました。
意識は回復しましたが、まだ精神的に不安定なところが残っているようです。
・牧 雪人
行動場所【2】【★】
クーの元へ一緒に向かってくれるメンバーを探しています。
ユグドラシルへの疑念は高く、カプセルギアを元に戻すため奮闘しています。
・クー
行動場所【2】
白髪の無感情な少女。基本的にはユグドラシルの指示がない限り会話も成立しません。
四神をモチーフにしたギアを、同時に3体操作します。制限中は2体です。
・???
行動場所【★】
ハートのイヤーカフを付けた男性です。
海堂に集められた、ギア(ギアマスター)に恨みを持つ1人です。
海堂が愛光堂と和解すると、行動目的を見失って危険な状態になるでしょう。
ハートのマークが付いた専用端末を操作し、カプセルギアを同時に2体操作します。
他にも端末を所持しており、合計3体のカプセルギアで戦います。制限中は1体です。
・スペードのリングをした少女
行動場所【1】【★】
白髪のショートヘア、高校生くらいの風貌です。
ユグドラシルとも、海堂とも繋がりがあるようです。
スペードのマークが付いた専用端末を操作し、カプセルギアを同時に3体操作します。
制限中は2体です。
※PL情報
・クーの姉です。
その他NPCとXキャラ
今回のシナリオでは、NPCは特定のキャラクターのみ登場可能です。・海堂 洋子
行動場所【全て】(アプリ通話のみ)
カプセルギアそのものに興味はないものの、メカやプログラムには強い関心をもっている少女。
とある理由で部屋にひきこもっているらしく、学校にも行っていないようです。
A.I.C.O.のメンテナンスに関する新情報がないかと、クーに関する情報の2点を調べています。
どちらかに絞って調査をお願いすると、情報の精度があがりそうです。
・カロデ
行動場所【1】【★】
喜怒哀楽がとてもはっきりしている『あやかし』のお姉さん。見た目は20代前半。
ある程度のことは笑って流してもらえますが、『物を粗末にする』ことには過敏です。
クローバーのマークが付いた専用端末を操作し、カプセルギアを同時に2体操作します。
他にも端末を所持しており、合計3体のカプセルギアで戦います。制限中は1体です。
・CAPGEAR MEIJIN(愛光 秀光)
行動場所【★】
スーツ姿にノーマルヘッドのマスクをかぶったおじさん。
元国内唯一のプロ・ギアマスターであり、愛光堂の現社長でA.I.C.O.開発者の1人。
海堂がなぜA.I.C.O.と名付けたのかは薄々感づいています。
・吐前 亀二郎
行動場所【1】【★】
老刑事さんです。
カプセルギアについてはまだまだ知識不足なため、小さな協力者には好意的です。
【1】で入手する情報によっては、ユグドラシルの裏の顔について捜査をしてくれそうです。
・ウォルター・B
行動場所【2】【★】
寝子高の風紀委員の担当をしています。
高校でもカプセルギアを取り締まらないかと誰かから手紙が届きました。
そのタイミングでの事故だったので、手紙について調査を続行しているようです。
【2】で入手する情報によっては、ユグドラシルの裏の顔について捜査依頼をしてくれます。
Xイラストのキャラクターを描写する場合、
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写なので、無関係の行動などはお控えください。
※Xキャラだけを1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PC自身の描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
不足している情報は、アクション内に書き足しをお願いします。
※独自ルール※
参照シナリオ、アイテムの持ち込み、Xキャラの情報をアクションに記載する際、 短縮表記が可能 です。【参照シナリオについて】
他のシナリオ、コミュニティなどの描写や設定を参照することは、原則的には採用されにくいとなっています。
・事実を確認するだけで良く、深い読み込みがいらないもの
・どうしても前提にしてもらわないと困るもの
これらに関しましては、できる限り参考にしますので『URLの一部』をお知らせ下さい。
【例】シナリオID3242の9ページと、トピックID2853の181番目の書き込みを参照依頼する。
- T/2853/181の結果を受けてS/3242?p=9で●●を成功しました。●●の情報はある前提の行動です。 -
など、シナリオを『S』としたり、トピックを『T』としたり短縮表記で大丈夫です。
IDから該当ページまでのURLは省略せず、そのまま提示して下さい。
・過去参加して頂いた浅野のシナリオに関しても、記憶違いを避けるためにご協力頂けると助かります!
・必須じゃないけど知っておいて欲しいなという事柄については、余力があれば確認させて頂きます。
【アイテムについて】
カプセルギアなどアイテムを持ち込む際、指定単語と共にマイリストIDまたはアイテムIDを記入してください。
【例】牧 雪人が『【カプセルギア】ボナパルト2』を持ち込む場合
CG/206 ……と記載してください。
・カプセルギアを『CG』、その他マイリストを『ML』、アイテムを『I』と記載して下さい。
※なお、アイテムやマイリストは、アクション送信時の情報が保存されません。
執筆期間中に編集を行うと、アクションと齟齬が出てしまう可能性があります。
投稿締切から1週間は、該当のアイテムやマイリストを編集しないようにご協力ください。
【Xキャラについて】
Xキャラ図鑑はトピックなので、参照トピックと同じ手順で短縮可能です。『URLの一部』をお知らせ下さい。
X/2892/(書き込み番号) をお知らせ頂くか、
またはイラストページに補足がある場合はXI/(イラストID)も合わせて記入してください。
※浅野の独自ルールのため、こちらは他MSへ対応を迫る行為はお控え下さい。
それでは、ご参加お待ちしております!