喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～｜リアクション

喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～

　暖炉の見た目は木製だが、実は電気を熱源としている。
　店内の雰囲気を壊さないよう“大正ロマンを思わすデザイン”で取り入れたとか。
　だが、側面に小さなドアをつける意味は？　“ただの装飾”なら見える位置につけるもの。
「なんだ？　このちっちゃいドア」
　龍樹がドアノブに触れた瞬間、身体がみるみるうちに縮んだ。
「ここね、皆も気をつけて」
　頼子と紫、ラッセルも嘴で器用に触れると、扉の中を覗きこむ。

　中はRainyの店内のような、樫製の内装で囲まれた客間。
　そこでは、丸テーブルを挟んで小柄な男と、茶色のワンピース姿の女性が口論している。
　テーブルにはティーセットと、お菓子がズラリ。
　――その中には例の割れたジンジャーブレッドや、崩れかけのマカロンが。

「バリー、これはお店の主様が作ったのでしょう？」
「でも、お茶会にお菓子は必要だよ～？」

　変身を解いたラッセルは、不意を突く形で小男を取り押さえに。
「御用だー！」
　闖入者に女性は慌てふためき、目に涙を溜めていく。
「待って、乱暴にしないで！　私のせいなんです！」

　話の通じる相手と判断し、まず紫が女に話しかけた。
「あなたがプラムさんね」
「は、はい、家妖精のプラムと申します。彼はホビットのバリーです」
　家妖精。――主人がいない間に家事や、家畜を世話する“西洋の座敷童”だ。
　いつも茶色く薄汚れた衣を纏っていることから、ブラウニーとも呼ばれる。
　同様に、ホビットも妖精。背丈は子供ほど、食事好きで陽気な性質という。