喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～｜リアクション

喫茶Rainyの危機～謎のスイーツ消失編～

【第2幕：試食会】
　お菓子が戻ってきたことに、甘慈は心底、驚いた。
「本当に見つけてくれると思わなかったよ、ありがとう」
「相手から言伝よ。『美味しいお菓子だった、持ち出してごめんなさい』って」
　紫の言葉に、甘慈は小ジワの浮かぶ目尻を緩め、
「返してくれたら、それでいいさ。……ついでだ、君達にお店に出せるか“審査”してもらいたいな」
「オレ達が食っていいってこと！？」
　喜ぶ龍樹とラッセルはハイタッチ。

　柚春もあまりのスピード解決に、目を見張っている。
「片付けてる間に見つかるなんて、どうやって見つけたの？」
　柚春の質問には「灯台もと暗し、って奴ですかね」と頼子はごまかした。

「さて、ご注文は？　今日はお茶請け付きの大サービスだよ。柚春さんも手伝ってくれたお礼だ、遠慮せずに言っておくれ」
「それじゃあ、ミルクティーを……茶葉は選べます？」
「ミルクティーならアッサムかな。渋みのある濃厚な茶葉だから、まろやかな口当たりになると思うよ」
　コーヒーのみならず、紅茶も嗜んでいるとはさすが、というべきか。
（「イギリスでは、ミルクティーにクッキーを浸して食べる……ダンキングっていう習慣がある、って教えてもらったんだよね。ジンジャーブレッドならピッタリかも」）
　今頃、進路相談や補習で忙しくしているのかな？
　同じように、ダンキングしながら一休みしているのかな？

　そんな風に考えていると、コーヒーのコクのある香りと、紅茶の上品な香りがカウンター奥から立ち上ってきた。

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