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【終業式】課題をクリアして冬休みを死守せよ！
４：浅井 幸太のＰＫ合戦
「大体のことはわかった。俺に恋焦がれる乙女達よ。あとは任せるんだ」
黒板を背にした八十八旗 信彦は金色に染め上げた髪を掻き上げる。きょとんとする女子達に白い歯を見せて、はははは、と高笑いで教室を飛び出していった。
第一グラウンドを囲むようにして生徒達がいた。スタートラインの位置にジャージ姿の吉田 熊吉が踏ん反り返る。足元には米俵が置かれ、挑戦者を待ち侘びた。
信彦は目にした途端、笑顔で駆け寄った。
「熊吉センセー！ 俺が挑戦していいですか」
「構わねぇぜ」
「ただ米俵じゃ、モチベーションが上がらないんで、レディに変えて貰っていいですか？」
「いいわけねぇだろ、このバカタコがっ！」
「やっぱダメですか、そうですかーってことでＰＫ合戦に行ってきまーす」
敬礼の姿のまま走り出す。
あっという間にグラウンドの端に着いた。サッカーゴールの手前に小柄な守護神、浅井 幸太の姿があった。動き易そうなジャージを着て入念なストレッチを行っていた。
「浅井センセー！ ＰＫをやりにきましたー！」
「良いところにきたな。早速、やるか」
「それはいいんですけど、キーパーできます？ 俺、サッカー部なんで本気でやるつもりなんですけど」
信彦はゴールサイズの縦と左右を見て言った。
「小柄は認めるが、俺もサッカー経験者だ。歯応えのあるところを見せてやろう」
「いいですねー。俺もなんか燃えてきました」
信彦は白いラインが引かれたところに立つ。幸太はアンダースローでボールを転がした。
「よっと」
右足でトラップして瞬時に真上へ撥ね上げた。左右の太腿を使ってリズミカルにリフティングを行う。
横手で見ていた三人の女子が、すごーい、と口々に言った。気を良くした信彦はボールを大きく撥ね上げ、ぴたりと額に載せた。落とさないようにバランスを保つ。観客が沸いたところで足元に落とし、上からボールを踏み付けた。
「身体が温まったので、そろそろ始めていいですか」
「遠慮なく蹴って来い」
幸太は中央に立ち、両腕を水平に広げた。左右、どちらにも跳べるように小刻みに重心を変える。
信彦はボールを残して斜め後ろに下がる。助走に十分な距離を確保して緩やかに走り始めた。右隅のコーナーを見ながら蹴った。
幸太は左に跳んだ。ボールは逆の右隅に決まった。
「目のフェイントか」
「ま、よくあるパターンですけどねー」
信彦はピースサインを作った。幸太は笑顔で受けて立つ。少し強めにボールを蹴って返した。
二回目、信彦は最初から左隅を見て走り出す。
幸太は軽く両膝を曲げた。蹴る直前になって右に傾き、左へ跳んだ。伸ばした左手の指先にボールが触れた。
「あっぶねー」
ボールの勢いが勝ってネットを揺らす。幸太は地面を叩いて悔しがった。
「次だ！」
熱血の一端を見せて言った。
自然と信彦にも熱が籠る。ふざけた調子はなくなり、深呼吸をした。
三回目、勢いよく走り出す。目は正面を見たまま蹴った。
ボールは幸太の頭の上を狙う。左右を警戒していて反応が遅れた。が、跳び上がって右の拳を突き上げる。
直撃したボールはクロスバーに当たって手前に落ちて転がった。
幸太は拳を固めて、よし、と気合の籠った声を出した。
「あと少しだったんだけどなー」
信彦はボールのところまでいくとドリブルで所定の位置に戻ってきた。
「少しは先生らしいところを見せないとな」
幸太は次のシュートに備えて姿勢を低くした。
四回目は力んだせいで枠を外れ、最後の五回目は左上隅に突き刺さった。
「三ゴールかー」
不満そうな顔で信彦はキーパーとして構える。
目にした幸太は置いたボールに向かって緩やかに走り出す。
その動きをキーパーの視点で捉える。
――助走の角度を考えると、右狙いか。身体や軸足の向きを見ても右だな。あとは蹴る直前まで動かなければどうにかなる。
方針が決まったところで幸太が蹴った。
予想した通り、ボールは信彦の右へ向かって飛んだ。
「え、マジで？」
跳ぶ前にボールはネットに到達した。
「どうかしたか？」
「ボールの威力が、いや、なんでもないでーす」
見ていた三人の女子は顔を寄せ合った。囁き合うようにして、だよねー、と言って体育館の方へと歩き出した。
信彦の士気が落ちてもＰＫ合戦は続く。
予測した方向に跳んだが間に合わない。女の尻を追い掛けたツケが回ってきた。泣き言をいう間もなく強烈なシュートは続き、最後はカーブが掛かってゴールポストに弾かれた。
「悪いな。四ゴールで俺の勝ちだ」
幸太は子供のように嬉しそうに笑う。信彦は空を見上げて、マジかー、と間延びした声を出した。
「大体のことはわかった。俺に恋焦がれる乙女達よ。あとは任せるんだ」
黒板を背にした八十八旗 信彦は金色に染め上げた髪を掻き上げる。きょとんとする女子達に白い歯を見せて、はははは、と高笑いで教室を飛び出していった。
第一グラウンドを囲むようにして生徒達がいた。スタートラインの位置にジャージ姿の吉田 熊吉が踏ん反り返る。足元には米俵が置かれ、挑戦者を待ち侘びた。
信彦は目にした途端、笑顔で駆け寄った。
「熊吉センセー！ 俺が挑戦していいですか」
「構わねぇぜ」
「ただ米俵じゃ、モチベーションが上がらないんで、レディに変えて貰っていいですか？」
「いいわけねぇだろ、このバカタコがっ！」
「やっぱダメですか、そうですかーってことでＰＫ合戦に行ってきまーす」
敬礼の姿のまま走り出す。
あっという間にグラウンドの端に着いた。サッカーゴールの手前に小柄な守護神、浅井 幸太の姿があった。動き易そうなジャージを着て入念なストレッチを行っていた。
「浅井センセー！ ＰＫをやりにきましたー！」
「良いところにきたな。早速、やるか」
「それはいいんですけど、キーパーできます？ 俺、サッカー部なんで本気でやるつもりなんですけど」
信彦はゴールサイズの縦と左右を見て言った。
「小柄は認めるが、俺もサッカー経験者だ。歯応えのあるところを見せてやろう」
「いいですねー。俺もなんか燃えてきました」
信彦は白いラインが引かれたところに立つ。幸太はアンダースローでボールを転がした。
「よっと」
右足でトラップして瞬時に真上へ撥ね上げた。左右の太腿を使ってリズミカルにリフティングを行う。
横手で見ていた三人の女子が、すごーい、と口々に言った。気を良くした信彦はボールを大きく撥ね上げ、ぴたりと額に載せた。落とさないようにバランスを保つ。観客が沸いたところで足元に落とし、上からボールを踏み付けた。
「身体が温まったので、そろそろ始めていいですか」
「遠慮なく蹴って来い」
幸太は中央に立ち、両腕を水平に広げた。左右、どちらにも跳べるように小刻みに重心を変える。
信彦はボールを残して斜め後ろに下がる。助走に十分な距離を確保して緩やかに走り始めた。右隅のコーナーを見ながら蹴った。
幸太は左に跳んだ。ボールは逆の右隅に決まった。
「目のフェイントか」
「ま、よくあるパターンですけどねー」
信彦はピースサインを作った。幸太は笑顔で受けて立つ。少し強めにボールを蹴って返した。
二回目、信彦は最初から左隅を見て走り出す。
幸太は軽く両膝を曲げた。蹴る直前になって右に傾き、左へ跳んだ。伸ばした左手の指先にボールが触れた。
「あっぶねー」
ボールの勢いが勝ってネットを揺らす。幸太は地面を叩いて悔しがった。
「次だ！」
熱血の一端を見せて言った。
自然と信彦にも熱が籠る。ふざけた調子はなくなり、深呼吸をした。
三回目、勢いよく走り出す。目は正面を見たまま蹴った。
ボールは幸太の頭の上を狙う。左右を警戒していて反応が遅れた。が、跳び上がって右の拳を突き上げる。
直撃したボールはクロスバーに当たって手前に落ちて転がった。
幸太は拳を固めて、よし、と気合の籠った声を出した。
「あと少しだったんだけどなー」
信彦はボールのところまでいくとドリブルで所定の位置に戻ってきた。
「少しは先生らしいところを見せないとな」
幸太は次のシュートに備えて姿勢を低くした。
四回目は力んだせいで枠を外れ、最後の五回目は左上隅に突き刺さった。
「三ゴールかー」
不満そうな顔で信彦はキーパーとして構える。
目にした幸太は置いたボールに向かって緩やかに走り出す。
その動きをキーパーの視点で捉える。
――助走の角度を考えると、右狙いか。身体や軸足の向きを見ても右だな。あとは蹴る直前まで動かなければどうにかなる。
方針が決まったところで幸太が蹴った。
予想した通り、ボールは信彦の右へ向かって飛んだ。
「え、マジで？」
跳ぶ前にボールはネットに到達した。
「どうかしたか？」
「ボールの威力が、いや、なんでもないでーす」
見ていた三人の女子は顔を寄せ合った。囁き合うようにして、だよねー、と言って体育館の方へと歩き出した。
信彦の士気が落ちてもＰＫ合戦は続く。
予測した方向に跳んだが間に合わない。女の尻を追い掛けたツケが回ってきた。泣き言をいう間もなく強烈なシュートは続き、最後はカーブが掛かってゴールポストに弾かれた。
「悪いな。四ゴールで俺の勝ちだ」
幸太は子供のように嬉しそうに笑う。信彦は空を見上げて、マジかー、と間延びした声を出した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年07月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年07月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年07月29日 11時00分
