【終業式】課題をクリアして冬休みを死守せよ！｜リアクション

【終業式】課題をクリアして冬休みを死守せよ！

　体育館の壁際。八神修は片方の脚を伸ばしてリラックスした姿で座っていた。
　そこに七夜あおいが駆け込んできた。手にはスプレー缶とタオルを持ち、修の横手にしゃがんだ。
「運動部の友達からコールドスプレーを借りてきたよ」
「悪いね。こんな状態になったばかりに」
「そんなことないよ。私が応援して、無茶させたみたいなものだから」
　あおいは疲労の色濃い修の両腕にスプレーを噴霧した。負担が大きかった両足首にも吹き付けた。
「疲労回復にはマッサージが良いって聞いたから」
「そのタオルは？」
　修が聞くとあおいは恥ずかしそうに指を見せた。
「小さい指で押すと痛いよね？　だからタオルの上から押そうと思って」
「ここまでされたらスリーポイントは絶対に決めないとね」
「無理はしない範囲でがんばってね」
「そうするよ」
　あおいは修の後ろに回って細長くしたタオルを肩に沿って置いた。上から親指で押していく。
　修の表情が和らぐ。
「痛くない？」
「平気だよ。眠気がくるけど」
　閉じそうな瞼を開けて修はスリーポイントに挑む男子を見ていた。
　――シュートの時、僅かに肘が動いているせいで狙いが逸れている。ボールの角度はもう少し上げた方がいい。ゴールポストの高さは目測で三メートルくらいか。公式に合わせているようだ。
　男子は体力の限界を迎えたのか。自らリタイアを口にした。
「あおい、行ってくる」
　修は立ち上がった。歩きながら肩を回して言った。
「高野先生、次、いいですか」
「いいぞ」
　高野有紀は笑ってボールを渡し、ここだ、とゴールポストの正面の位置に立った。
「わかりました」
　修は足の位置を確認して正面を向く。高さと距離を頭に入れてボールの角度を割り出す。
　緊張を解すような呼吸のあと、綺麗なフォームで投げた。
　角度と方向は合っていた。少し力が足りず、リングに弾かれた。
「次に活かせばいい」
　二投目は先程の計算に微調整を加えた。ボールはふわりと浮いてバスケットを揺らした。
「やったね！」
　駆け寄るあおいに修は微笑んだ。
「頭の中で導き出した答え通りに投げたら入るよ。まだ続けられるが、米俵が堪えた。喉も乾いたし、帰りにカフェもいいね」
「そうだね。付き合うよ」
　あおいの最後の台詞に修は反応して頬をほんのりと赤らめた。